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20.それらは再び邂逅する《光と影》

「よお、漣圭司(さざなみ けいじ)()()()以来だな?」


 誰かに掴まれ、引きずられて――辿り着いたのは、上も下も真っ暗な異空間だった。


 そこには納乃(のの)とシエラの姿もあったが、何より。こちらに向かってそう声をかけてくる、金髪のショートヘアに、彼と同じ魔法大学の制服を着たその女性の姿に、彼は驚きを隠せなかった。


「お前、まさか……九鬼有栖(きゅうき ありす)、なのか!? 何でこんな所に……って、つまりここは――」


「質問が多いなオマエ。ここは影の中だから、しばらくは安全だ。一つずつ丁寧に答えてやる時間があるかどうかは知らんが、だからといって焦る必要もねえだろ」


 と、この状況がさも当然かのように彼女は言う。……が、ほんのひと月前。


 まさに死ぬか生きるかの戦いを繰り広げた相手が目の前に。しかもこんな場所で。次々と疑問が飛び出さないほうが不自然だ。


 しかし、彼女は自分のペースを崩さずに、続けて。


「なんでここにいるかと聞かれれば、アタシも捕まっていたに他ない。……単刀直入に言う。ここから逃げる為に力を貸してくれ。ま、言うまでもなく拒否権はないけどなっ」


「『ないけどなっ』……じゃねえ! まず、どんな経緯でここに閉じ込められたのかも分からない相手をいきなり信じて、協力しようなんて無理がある。話はそこからだ」


 人形喰いとして立ち塞がったあの時には考えられない、そんな軽い調子な有栖の言葉に、彼は冷静にツッコミつつも問いかける。


「はあ、メンドクサイ男はモテないぞ? まあいい、それで気が済むというのならいくらでも語ってやる」


「余計なお世話だ。で、どうしてまた、神影(みかげ)機関になんて捕まったんだ?」


「ま、簡単な話だよ。そもそも、アタシの本名は『()()有栖』だ。『九鬼』ってのは、神影を嫌ったアタシがただ自称しているだけに過ぎねえ」


 簡単な話だ――そういった前置きをぶち壊すかのように、初っ端からとんでもない事を話し始めたので、思わず圭司は。


「ちょっと待て。つまり、お前は神影家の人間……って事だよな。だとしたら余計に訳がわからない。だって、それって、お前は身内に監禁されているって事になっちまうだろ」


「意外と物分かりが良くて助かるぜ。神影家は、魔法という概念が一般的になる以前から代々、今とは違って『神術(しんじゅつ)』という形で受け継がれてきたんだよ。『()の力を()ながら振るう』――なんて名前の由来通りにさ」


 今となっては影どころか、表立って魔法に関わっているような気もする……なんて思ってしまったが、心に留めておこうとしたところで彼女は続けて、


「ま、影で色々とヤバい事をしてるってトコは今も昔も変わっちゃいねえけどな」


「……まさか、この影の中って人の心の中まで読めちゃうとか?」


「……は? 何言ってるんだオマエ。まあいい、本題に戻るぞ」


 素で困惑されてしまい、軽くあしらわれたところで話は続く。


「そんな血筋に生まれたにも関わらず、アタシには魔法の才能がなかった。神影家の恥として、邪魔者扱いされていた。それから紆余曲折(うよきょくせつ)あって、今に至る。……もっと詳しく話さなきゃダメか?」


 そう語る彼女の顔は、どこか暗く、儚げだった。少なくとも、以前彼の前に立ちはだかった際の威圧感なんて、微塵も感じられなかった。


 それは、人形喰いなんかではなく、彼と同年代の少女が持つ、ごく自然な表情だ。


 話を聞いたうえで気になる所もあるが、これ以上余計に深掘りして何になるというのか。彼女を傷つけてしまうだけではないのか。


「いや、もう大丈夫だ。……嫌な事を話させてしまってすまない」


「別に謝るようなことじゃない。ただ、まあ……お世辞にも良い思い出とは言えないからな」


 誰だって、嫌な過去を思い出して、語るのは辛いだろう。申し訳ない事をしてしまったと、そう圭司は後悔しつつ。


「……分かった。俺たちもここから出る方法すら分からないし、是非力を貸して欲しい。二人も、それでいいか?」


「はい、仲間は多ければ多いほどいいですしねっ」


「もちろん。九鬼様は実力も確かでとても心強いです。目的だって一致しているようですし」


 圭司が納乃とシエラの二人に聞くと、どちらも快くOKを返した。


「……ありがとう。悔しいが、アタシ一人の力じゃどう足掻いてもここから逃げる事すら厳しい。突破口に思えるプラティウスも、時と場所が限られるから頼れないからな」


「俺たちだって、MagiCA(マギカ)の魔法師ですら苦戦するくらいだし、最強の人形師なんかと戦えるなんて思えなかったから。……よろしく、有栖」


 彼女の持つ、魔合金を使った武器『輝槍(きそう)・プラティウス』も、規格外の攻撃を放てる一方、星の力を集めて利用するという都合上使い勝手は良くない。


 だが、影を操るその魔法だけでも十分すぎるくらいに心強い戦力であることには変わりない。


 そして、異端な力で言えばシエラが持つ光の力も同等だ。だが、それだけで国最強の人形師と渡り合えるなんて思えなかった。


 そんな光と影。相対する二つの力が交わることで初めて――最強の人形師、神影翼と同じラインに立てるのかもしれない。

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