Member3:最強の人形師、そして
「ふふ、ふふははははっ。全く、酷い目に遭いましたよ。しかし、一歩及ばず相討ちとはいかなかったようで」
腹部を撃たれた挙句、高所から地面へと叩き落とされて。骨が何本折れているかだって分からない。
……しかし、確かに意識だけはあった。下に木の葉が敷き詰められていなかったり、掴んだ枝がもう少し高所のものだったり、些細なことで一転、こちらもやられていただろう。
だが、事実。相手は意識を失っていて、彼女はギリギリ意識を保っている。それが何を意味するかは言うまでもない。
まだ使える左腕で、痛む身体を持ち上げ、起き上がる。
「とにかく、シェロンの仇は取りました。ひとまず、私の目的は果たせましたし、本来の目的とは別に第一発現者の死体でもお土産に持っていけば少しは評価も上がるのでは?」
そして、残る力を振り絞り、一撃。もはや彼女の取り柄である速さはほとんど残っていないが、トドメの一撃には不必要。
確実に仕留められる一撃を、彼女の残り少ない魔力で組み上げていく。
「シェロンだけでなく、私まで。……死をもって償いなさい、哀れな人形師、さざな――」
その言葉は最後まで続かなかった。そして、雷撃が放たれることもなかった。……何故なら。
『第三陣・攻撃形態』
「――んぐッ、があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!?」
異次元から響くような。まるで、世界に後付けされたような異質で平坦な声と共に。
イレーネ・アルフィスの身体が全部で六本、六色それぞれ色の違う、カラフルなレーザーによってバラバラに切断されてしまったからだ。
それを放ったのは、それぞれ六つの黒い球体。表面には金属のような光沢があり、まるで眼球のように、中心には各色の宝石が埋め込まれている。
その黒い球体を操りしは、眠りながら浮かんでいるだけのようにも見える少女。
四肢をだらりと垂らし、目を閉じるそれは、白髪のツインテールにモノクロのゴスロリ服を纏った、少女をかたどったビスクドールのようだった。
……そして。
そのゴスロリビスクドールを従えるのは――。
「『データ』だけなら見逃していたものを。余計な事をするからそうなる」
長身で、青紫色の髪を流し、しっかりと着こなされた黒スーツがキッチリとした印象を与えてくる。そんなスーツの胸部には、ある『機関』のマークが白で刻印されていた。
……神影機関。この国最大規模の、戦闘面に特化した魔法機関である。
無惨にも身体をレーザーで切り刻み、確実に殺すことを命じた張本人。しかし、そんな事が日常茶飯事であるかのように、その顔には些細な表情さえ浮かんでいない。
「さて、待ちかねていた。第一発現者の魔法人形」
彼が向きを変え、表情も変えずにそう言った。その先には――二体の魔法人形の姿があった。
「圭司さんっ! 大丈夫ですか!?」
魔法大学の制服を着用し、透き通るような水色の長い髪を伸ばした魔法人形が、倒れるマスターの元へと駆け寄っていく。
そしてもう一体。白銀のショートヘアに、白と金の装飾が施された鎧を身に着けた、騎士のような風貌をした魔法人形は――。
「あ、あ、……貴方は……」
驚き、戸惑い、様々な感情が入り混じった表情で。『待ちかねていた』……そう言った人形師に向けて、思わず声を漏らしてしまう。
そして、彼は知っていた。こちらを見つめるその魔法人形のことを。
……かつて、自分が棄てたはずの魔法人形が。こうして目の前に再び現れたのは一体、何の因果なのか。




