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8.絶対《メタル・オペレータ》

 気づけば圭司(けいじ)とその魔法人形(ウィズドール)は、どこかも分からない田舎道を全速力で走り続けていた。


 新幹線の車内にて、突如現れて当然のように窮地を救っていく、まるでヒーローのような金髪碧眼の魔法師。そんな彼女はどうやら、誰もが憧れるヒーローという存在とは全く正反対の、闇に生きる魔法師だったらしい。


 そんな彼女はどうやら、多重接続(マルチコネクト)の『第一発現者(ファーストサンプル)』である俺たちを狙っているらしい。


 つまり、こうとも考えられる。俺たちを捕らえるために走る新幹線を切断し――理由までは分からないが、自ら助けに入ったと。だとすると。相当頭のネジが外れた人物であることには違いない。


「逃げてばかりじゃつまらないわねぇ、最近は派手な任務もなかったし、久々に楽しませてくれるものかと思ったけれど」


 こっちは全力で走っているはずなのに、対する彼女は軽いジョギングのような調子で。しかし、それでも軽々と追い付いてくる。


 断じてこちらの足が遅いとか、そういったことではない。確かに、陸上部のエースを担えるような速度で走れる訳ではないにしろ、平均的な男子大学生として見れば平均的な速さで走れるつもりだ。


「はあ、はあ……。納乃(のの)、シエラ。俺を置いて先に行ってくれ。危険な目に遭うのは俺だけで十分だ」


「何を馬鹿なこと言ってるんですかっ! 私たちが主人(マスター)である圭司さんを置いて逃げるなんてできる訳ないじゃないですかっ」


「シエラだって。逃げるくらいなら共に戦います」


 魔法人形(ウィズドール)である納乃やシエラなら、もっと早く走る事だってできたかもしれない。が、そんな二人だって、主人である彼を置いていくことなどできるはずもなかった。


 どのみち、このまま逃げ続けたところで先にダウンするのはこちらだろう。……戦うのか? たった一人で列車を止める人間離れした力を持ち合わせる、圭司のような『学生』じゃない、本物の魔法師と。


 到底、勝ち目があるとは思えない。目に見えるほどの、圧倒的な実力差を覆す()()がない限りは。


「……シエラに負担をかけてしまうようで申し訳ないんだけど、『()()』は出せるか?」


「……使ってもよろしいのですか、圭司様?」


「ああ。出し惜しみをしていられる状況でもないし、今回だけはあの力に頼ってもいいだろうか」


 多重接続者(マルチコネクタ)として、研究対象としての価値を求めているなら、ここで殺されることはないだろう。しかし、捕まった後はどうなるのかなんて分からない。


 自分だけならともかく、納乃やシエラに少しでも苦痛を味わさせるというのなら。……例えそれが何を引き起こすかもわからない、得体の知れない力だとしても――利用する。


 少なくとも、せっかく取り戻した日常をこのまま再び奪われるなんて最悪のバッドエンドだけは避けるべき。


「……分かりました」


 シエラがそう頷くと、いつもの剣を腰につけた鞘から引き抜いた。そして、


「――()()()()――」


 シエラの身体から、金色の光が放たれる。それは人形喰い、九鬼有栖(きゅうき ありす)を打ち倒したものと同質ではあるものの、夜をも照らしたあの力には到底及ばない。


 それでも、その身に纏う光が強大な力であることには変わりない。それこそ、魔法師一人くらいなら簡単に圧倒できるほどの。


 圭司と納乃も、それぞれ魔法銃を取り出して、臨戦態勢に入る。……二人が取り出した魔法銃は、どこかいつもと違う。こちらも全体が、金色に輝いていた。


「ふうん。何かを隠しているとは思っていたけれど、まさかアタシを殺しかねないからって躊躇っていたワケぇ? ナメられているようで、すっごく不愉快なんですケドぉ?」


「別に舐めてるとか、そういった理由じゃない。……ただ、この力は俺たちにもまだよく分からない、不確実性のある物なんだ。だから使わなかった。それだけだ」


 九鬼有栖との一件から。シエラをトリガーとして、このような光の力を扱えるようになった。


 しかし、この力を引き起こすトリガーやエネルギーは何なのか。この力の特性、威力はどれほどなのかという性能面。使うことによるデメリット等の不安要素など。この力を扱う本人たちにさえ分からないことだらけ。


 故に、この力は普段から使わないようにしていた。未知なる力というものに惹かれないこともない。しかし、彼にとっては恐怖のほうが上回った。


 未知なるものには、同時に未知なるリスクも孕んでいる。そのリスクに対して、圭司は極力回避するという選択肢を取った。ただそれだけのこと。


 しかし、今は未知なるリスクよりも、目前に迫ったリスクを押し退けることが先だろう。


「はああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」


 シエラが光り輝く剣を握りしめて、金髪碧眼の魔法師が立つ場所へと走る。そして、一撃――。


「――『メタル・オペレータ』。アタシの盾となれ」


 しかし、光の斬撃は、彼女の言葉と共に作られた巨大な銀色の盾によって、軽々と防がれてしまう。


「この『メタル・オペレータ』は絶対。アタシの命令したことは忠実に成し遂げる。これが盾なら、どんな攻撃であろうと例外なく受け止めてくれる」


 その魔法師は、ふふっ――とひと笑いして、最後に結論だけを述べた。


「つまり。どんなに凝った攻撃を向けられたところで、アタシには傷一つさえ付けるコトはできないってワケ」


 余裕の笑みで、そう言い放った彼女に向けて――左右からそれぞれ、金色の魔力弾が放たれる。


 その発射源は、圭司と納乃の魔法銃。普段の彼らが扱うそれから放たれる銃弾だって、目で追いきれないほどには速い。


 しかし、金色の力を解放した彼らの銃弾は、()()()()。光速にも近しいそれは、追うどころか目視で捉えることでさえ難しい。狙われてから対処するのでは、まず間に合わない。


 ……そんな攻撃が二つも着弾し、眩い爆発が起こる。


 光が止んだ頃には、金髪碧眼の魔法師が倒れているという光景が広がっているはずだった。そんな期待に反して、光が止むと共に飛んできた声は――。


「……まさか、今のがアナタたちの『とっておき』ってワケぇ? だとしたら残念、期待外れだわ」


 そんな彼女を銃弾から守ったのは――銀色の盾から手のように伸びた、二つ、三つ目の小さな盾だった。

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