表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/148

9.永遠世界からの帰還《敗北の牢獄》

圭司(けいじ)っ! やっと起きたか、まったく。……心配したじゃないか」


 目を開けると、そこには金髪のショートヘアを揺らして横になっているこちらを覗き込む女性――九鬼有栖(きゅうき ありす)の顔が見えた。


 もちろん、あの幾千もの世界で出会った彼女とは違う、優しく穏やかな表情で。現実世界へと戻ってきた彼を迎え入れる、柔らかな声が飛んでくる。


 その後ろにはまだ綺麗な青空が広がっていて、太陽の位置が少し昇った程度であることを考えれば、どうやらあの世界に迷い込んでからそこまで時間は経っていないらしい。


 感覚としては、人の寿命すら軽く超えてしまうほどに、途方もなく長い時間だったのに。いざ終わってみれば、その程度だった。


 周りを見渡してみると、滑り台やブランコなど、子供の頃に遊んでいた記憶が懐かしい遊具たちが並んでいた。


 あの世界に引きずり込まれる前とは場所が変わっているので、きっと有栖が安全な公園内まで運んでくれていたのだろう。


『あの世界を乗り越えた』――それを肌で実感するようで、思わず目元に涙が浮かび上がってきそうになるのを堪えながら。


「もしかして、俺が倒れてる間、ずっと見ていてくれたのか……。ありがとう、有栖」


「ど、どうしたんだよそんな泣きそうな顔になって。いや、かなり苦しそうにしてたし、只事じゃねえのは分かってたけど……」


 どばっと溢れそうな涙を抑え込もうとするものの、何度となく死を経験し、終わりの見えない無数の世界を乗り越えた安心感は、どうやら隠しきれなかったらしい。


「……なあ、圭司。お前は一体、何を見せられていたんだ?」


「大した物じゃない。シエラに、お前の考えは間違ってるって。そう教えてやっただけだ」


 幾千の世界を巡った戦いの本質も、結局はただそれだけのことだった。当たり前のことを当たり前に果たすにしては、少しスケールが大きすぎる話だった気もするが……。


 とにかく、シエラが送り込んできた試練に真っ向から立ち向かい、乗り越えたのは事実。それが、シエラが考え直してくれるきっかけになれば良いのだが。


 そして、目覚めてから間もないが、ずっと気になることがあった。


「それより、納乃(のの)一ノ瀬(いちのせ)は?」


「ああ、納乃ならそこへ寝かせてある。一ノ瀬はシエラを止める為に、先に一人で行っちまった」


「そうか。まさか、納乃もまだ……。すまない有栖、ちょっとだけ待っていてくれ。()()()()()


「は? ちょっと待てどこに行くんだお前!? いや納乃の隣で寝て……いや待て待て話に付いていけないんだが?」


 圭司が倒れている間も診てもらっていた有栖をかなり置いてけぼりにしてしまって申し訳ないのだが、今も納乃は無限に続く世界の中で戦っているのかもしれない。


 となれば、彼女に説明している暇さえも惜しかった。今すぐにでも助けにいかなければならない、と。


 納乃が経験している世界に、彼が入れるかどうかは分からないが……。そもそもこれはシエラと繋がるコンタクト越しに送られてきたもの。だったら、コンタクトを通じて圭司が納乃の世界に入ることができてもおかしくはないはずだ。


 再び横になり、目を瞑る。納乃と繋がっているコンタクトの先をイメージするように。ゆっくりと、意識の奥、深い所へと落ちていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ