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28.夜空へと飛び立て《第三段階》

 メーザンド・タワー展望台のさらに上。魔力砲としてのこの施設を制御する機材だらけの部屋から、緊急時用の脱出口を使って屋上へと出る。


 空港の結界がきちんと消失したことを確認したのか、戦闘機と輸送機が一機ずつ、ベースキャンプとしていた公園からこちらに向かってきていた。


「……高いな、やっぱり」


「ですね。風も強いですし」


 高度三百メートルにも届きそうなその場所は風も強く、少し油断すれば簡単に吹き飛ばされてしまうだろう。真下を見てしまえば最後、ここから飛べなくなってしまう自信がある。なので、圭司(けいじ)は絶対に下だけは見ないように注意していた。


 周りを見てみれば、平然としていたりむしろ清々しく風を感じているような面々ばかりで、自分がおかしいのかと錯覚してしまいそうになる。が、この恐怖という感覚は人間として持っていて当然のものである。


 まだ心の準備ができていないにも関わらず、人数分どころか余るくらいのロープを下げてこちらに近づいてくる輸送機の動きは止まらない。


 チャンスは一度きり。飛ばずにこのタワーに残されるのはもっと怖いことだ、と圭司は自分に言い聞かせるように。


 そんな彼の震える両手を、優しく包み込むように握ったのは――納乃(のの)の柔らかな手だった。


「……私も、怖くないかと聞かれれば怖いですけど……圭司さんと一緒なら、飛べますからっ」


「帰りましょう、元の日常へ」


 全身の震えが止まった。二人の主人(マスター)として、情けないな……と思いつつも、今は甘えてしまいたい。そんな弱い気持ちに勝つことができなかった。


「ああ。ありがとう、二人とも。……帰ろうか」


 そして、その瞬間はやってくる。


「さあ、一斉に飛び込むわよっ!」


 二人と一緒なら、もう何も怖くない。


「もう、どうにでもなれええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!」


 周りの猛者たちが次々と飛び込んでいく中で、圭司たち三人も。足並みを揃え、この暗い夜空の中へと飛び立った。



 ***

 

 

 ……身体が落ちる感覚はない。手にはロープを掴む感覚がしっかりとある。


「……生きてる、よな。はあ、もう二度とこんな思いはしたくないな」


 できればもう、こんな死ぬか生きるかの綱渡りなんて一生経験したくはないが、思えばこの作戦が始まってからというもの、ずっとそんな調子だった気もするので今更感は拭えない。


 直後、掴まっていたロープがぐいっと引き上げられる。輸送機の開いた窓を通って、彼の身体は輸送機の中に投げ出される。


「うおっと、何が釣れたかと思えばなんだ、圭司か。一番パッとしないのが釣れちまった」


「……本人を前にしてそれ言うか」


 ロープを引っ張っていたのは、別のチームながらも同じ作戦に参加している九鬼有栖(きゅうき ありす)だった。


 引き上げられた側である圭司よりも平然としている彼女だったが、冷静に考えてみれば人間一人をまるで当然かのように持ち上げるその力は一体どこから湧いているのだろうか。


 一時は敵の魔法師による襲撃で半壊状態となっていたベースキャンプの人たちも、増援として向かった触定頼架(ふれさだ らいか)小夜琴音(さよ ことね)でなんとか持ち直したのか、全員ピンピンしている。過程より結果とはよく言ったものだ。


 だが、まだ目的は達成されていない。空港に残された、魔法大学の二年生と引率講師の救出のため――広い空港の敷地内へと輸送機がガリガリと音を立てて、多少強引に着陸する。

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