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27.覚醒の一撃《終幕への号砲》

「くっくっく、ふはははははははははッッ!! 作業終了、これであの結界を無力化できるであろうッ!」


 別行動していた圭司(けいじ)たちと『妖精王(ティターニア)』もメーザンド・タワーで再び合流し、ベースキャンプの方での一騒動も去り、何とか落ち着いたところで。ついに些蜜繰亜(さみつ くるあ)が高らかにそう言い放つ。


 このタワーが持つ純粋な破壊力では空港内まで被害が及んでしまうため、彼女の研究成果でもある『分解銃(アナトミスダウン)』を組み込んで、破壊力を抑えて赤い結界だけを分解するための改造が完了したことを知らせる。


「向こうも準備はバッチリみたい。『第三段階(フェーズ・スリー)』はいつでも始められるわ」


 テレパシーのように声を出さずベースキャンプと連絡を取れる、魔法に通信機を持つ一ノ瀬香凜(いちのせ かりん)が、今回の作戦が順調に進んでいることを告げる。


 ――賽は投げられた。当初の予定とは作戦内容も大きく変わったが、なんだかんだで作戦終了一歩手前までやってきた。


 誰一人ケガなく――とは行かなかったが、ここまで来たからには誰ひとり欠けることなく全員で日本へ。元の日常へと帰るだけだ。



 ***



「さて、改定後の作戦を説明するわ」


 一ノ瀬香凜が改まって、今回の作戦における最後のフェーズ、『第三段階』の説明を始める。


「まず、『第三段階』の目的は、全員を輸送機に乗せて日本へと帰還すること。今さら言うまでもないわよね?」


 目的自体は変わらない。ただ、そこに至るまでの流れが当初より大きく変わっている。


「開始の合図は、このタワーの砲撃で空港に張られた結界が壊れること。確認次第、ベースキャンプから輸送機と戦闘機が離陸する」


 元々の作戦では、どこにいるかも不明であったこともあり、ベースキャンプまで全員で大移動を行う予定だったが、改定後の作戦は全くの逆だ。


「まず、私たち『X01(エクス・ワン)』は、タワーの屋上で待機する。輸送機がギリギリまで近づいてくれて、人数分ロープを用意してくれているから、そこに飛び乗る手筈になっているわ」


 冷静に聞いていた圭司だったが、思わず。


「飛び乗るって……。言葉通りの意味で合ってる?」


「ん、それ以外に何があるんだ?」


「あっ、(さざなみ)くんってもしかして……高所恐怖症?」


 周りを見渡してみれば、『なに当たり前のことを?』オーラが漂っていたのだが、このアクション映画レベルの離れ業を当たり前と思えるようになってしまえばいよいよ、平穏な日常というものに戻れなくなってしまう気がする。


「不安なら、私に掴まってもらえれば大丈夫ですよっ」


「もし仮に失敗しても、シエラが必ず後を追って助けに向かいますので。心配ご無用です」


 納乃(のの)とシエラまで。シエラはともかく、納乃に関してはずっと一緒だったはずなのに、一体どこで道を違えてしまったというのだろうか、と圭司は疑問に思う。


 こんな高いタワーから航空機に飛び乗るなんて、普通は人生で一度も経験しないししたくもない。が、そんな泣き言は言っていられないらしく。


「そして、空港に一度着陸する。未だに結界のせいか、空港内部とは連絡が取れないみたいだけど、結界が壊れると同時に通信手段は回復するものとみて、すぐに乗り込めるよう準備を求める。全員揃っていることを確認したら、すぐに離陸して日本へ帰還する。その間、相手からの襲撃があれば私たちで対処することになっている。……簡単に説明したけど、大まかな流れはこんな感じね」


 詳しいことは適宜、一ノ瀬が指示したり、各自臨機応変に対応できるだろう。即席で組み上げた作戦である以上、イレギュラーとは常に隣り合わせ。大まかな流れだけ掴んでおくのが丁度良いとも言える。


「特に質問もなさそうね。……さあ、心の準備ができたらぶっ放しちゃって、些蜜さんっ!!」


「ああ、その言葉を待っていた。――われの『覚醒』を施した一撃は強固な結界をも打ち砕く。さあ、『第三段階』の幕を開けようッ!!」


 ――ドンッ! と小槌で叩くように。タワーに充填された『魔力的地脈(アンダーライン)』の莫大な魔力を放出する、そのボタンを押し込んだ。


 中からは見えないが、三本の柱によって支えられている水色のガラス球が、眩い光を放ち始めて――。


 ――ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!


 まるで空間を切り裂くような、耳をつんざく轟音が、爆発的に響き渡る。


 タワーの上部、ガラス球から虹色に光るエネルギーが、空港に向けて放たれる。それは一瞬にして空港を封じる赤い結界の上から包み込んでいき――。



 やがて、虹色のエネルギーが霧散した先には、無類の硬度を誇っていたはずの赤い結界が跡形もなく消失していた。

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