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終わらないデスマーチ  作者: やみの ひかり
3/5

03話 僕の願い

「う……」


 エレベーターの中、頭を押さえて塞ぎこむ杉崎雷太(すぎさきらいた)


「大丈夫!! どうしたの?」


 雷太の背中に手を当てる北条有希(ほうじょうゆき)


「大丈夫だ」


 有希の手を優しく払いのけ、起き上がり、電話越しの六角健太郎(ろっかくけんたろう)と話の続きを始める。


「どいうことなんだ。俺がいるここは過去ということなのか?」

「そうだ。そして、雷太がタイムマシーンを作った」

「俺がタイムマシーンを? あのアタッシュケースがそうなのか?」

「アタッシュケースは今どこにある?」

「今は、真知子の家にある」


 ブチ ツー ツー ツー


「健太郎!? おい!! もしもし!!」


 電話が突然切れる。


(切れた…… 健太郎が切ったのか?)


 チン


「着いたわ。私は反対だったんだけど、国から軍用兵器の開発を頼まれたの。リモートにすることで、危険のないところから、ステルスで敵地に潜入する兵器を開発している」


 RSCの自社ビルのワンフロアを研究所として使っている。人型ロボットの研究。武器を搭載したドローンの研究が行われている。


(俺が狙われている理由は、タイムマシーンを持っているからということはわかった。俺は未来から来て、この時代に何をしに来たんだ? くそ…… 記憶が無いのがもどかしい)


 ウイイイイイ


 エレベーターがこの階へ動き始める。


「うそ? この階には、特別なものしか入って来れないはず。絶対にこの階には止まらない。だって、この階に入れる権限を持っているのは、私を含め数名のものにしか与えられていない。聞いてるの? 早くしないとアイツがここまでやってくるわ」

「いや…… なにか引っかかっていて……」


 チン


 エレベーターのドアが開くと、


「うそ!?」


 人型ロボットが立っている。


「目標を確認。任務を遂行する」

「こっちに来て!!」


(さっきの電話が切れたとき、健太郎との最後の会話は、アタッシュケースの場所を聞いてきた)


 考え事に夢中な雷太の手を、引っ張る有希。


「ドローンに乗せるための武器がこっちにある」


 研究室の奥へと急ぐ、


 ドスドスドス


 それを追っかける大柄の男。


「そうか!! 俺の推測が正しければ、健太郎もアタッシュケースを狙っている!!」

「今は目の前の敵をどうにかしなさいよ!!」


 有希がドローンに乗せるための武器に手をかける。それはギターほどの大きさだ。


「おいっしょ!! まだまだ軽量化が必要ね。くらいなさい!!」


 人型ロボットに向けると、トリガーを押す有希。


 ドオオオオオオオオオオオオン


 人型ロボットに向かって、電気エネルギーが飛んで行く。有希の体は、


「きゃああああ!!」


 武器の反動で吹っ飛ぶ。


 人型ロボットは、とっさに放たれた電気エネルギーを右腕でガードする。衝撃で後ろに吹っ飛んでいく。


 ガシャアアアアアアン


 両者は、研究室にある棚やテーブルなどに、叩きつけられる。


 雷太は吹っ飛んでいった有希の元へ駆けつける。


「大丈夫そうだな。悪いな。ちょっと考え事を。あぁ、もうこれは邪魔だな」


 RSCに潜入するために付けた、変装用のつけ髭と眼鏡を外す雷太。


「大丈夫じゃないわよ!! えっ!?」 


 起き上がった有希が、変装を外した雷太の顔を見てビックリする。


「あなたのその顔、半年前に亡くなった茶々丸にそっくり。茶々丸は、山田さんにもらった犬の名前」

「クゥーちゃんの次は茶々丸か…… 俺の顔はそんなに犬に似てるのか?」

「似てるも何も瓜二つよ。生まれ変わりなんじゃないかと思うくらい」

「その話は後だ。来る。その武器を貸せ」


 有希は、手に持っていた武器を渡す。


 人型ロボットは、覆いかぶさっていた棚を、


 ドン!!


 吹き飛ばし、立ち上がると、


「任務を遂行する」


 ドスドスドス


 走ってくる。ガードした右腕は吹き飛んで無くなり、中からは機械がのぞく。


「さぁ、来い!! 俺が吹き飛ばしてやる!!」


 ドスドスドス


「早く撃って!!」

「まだだ!! 絶対に外さない!! 近距離で思いっきり当ててやる!!」


 ドスドスドス


「きゃああああああ!! 早くうってぇえええええ!!」

「今だ!!」


 雷太が、トリガーを引くと、


 ドオオオオオオオオオオオオン


 電気エネルギーが、大柄の男のお腹に当たり吹っ飛ぶ。雷太も反動で逆方向へ吹っ飛ぶ。


「うわあああああ!!」


 吹っ飛んだ雷太は、柱に激突する。


「う……」


 意識が飛んでいく雷太。






 意識が飛んだ雷太は、衝撃で記憶の中へいた。


 研究室の窓の外を眺める雷太と健太郎。


「砂が、ここまでもう来てしまった。この町も終わりか」


 砂漠に飲み込まれる町。


「雷太。早く過去へのジャンプを成功させよう」

「あぁ。成功させて、俺は世界を再生させた救世主として歴史に名を残す」

「雷太はきっとなれるさ。僕はタイムマシーンを使って、人生を変えたい」

「そんなこと考えていたのか?」

「孤独な人生が僕をそうさせたのかもな。冗談だよ…… タイムマシーンはみんなのためだ。はははは……」


 健太郎の顔を見る雷太。健太郎の顔は笑っていない。


「うん…… 冗談だよ…… 忘れてくれ」






「起きて!! ねぇ。茶々丸!! 大丈夫?」

「うう……」


 目を覚ます雷太。起き上がって辺りを見回すと、倒れ込んだ人型ロボットのお腹に、ポッカリと大きな穴が空いている。


「茶々丸。心臓が止まるかと思った」

「行かないと。俺の考えが間違ってなければ、真知子の家に健太郎が来てる」

「誰だか良く分からないけど、電話してみたら。それでわかるじゃない?」

「そうだな。電話貸してくれ」

「あなたさっき持ってたじゃない? 薄いカードのヤツ」

「あぁ、あれは使い方がわからないんだ。電話をかけてみたが、どこにも繋がらない。多分、特定の相手にしか繋がらないように出来ている」

「そう、じゃあここの電話使って」


 研究室にある固定電話を使って、山越真知子(やまごえまちこ)に電話をかける雷太。


「もしもし。どちら様ですか?」

「もしもし。真知子か? 雷太だ。今誰かと一緒じゃないか?」

「雷太さん。そうなのよ。良く分かったわね。健太郎さんが来てくれたわ」

「健太郎!? やっぱりそうだ。すぐ帰る!! 良いか。アタッシュケースを健太郎に渡すな」

「アタッシュケース? ちょっと待って、健太郎さんが電話代わりたいみたい」


 ブチ ツー ツー ツー


 電話が切れる。


(やっぱりだ。健太郎もアタッシュケースを狙っている)






 真知子の部屋。健太郎は、足元まで長いコートで体を覆っている。


「真知子さんごめん。間違えて電話切っちゃった」

「そう。すぐ帰るって言ってましたよ。無事に作戦成功したみたいね。お茶とコーヒーどっちがいいですか?」

「うーん。飲み物はもう必要ないんだ」


 パサ


 ロングコートを脱ぎ捨てる健太郎。


「ここにジャンプするために人間を捨ててきた」

「きゃあ!!」


 健太郎の体は、機械になっていた。


「雷太がジャンプに使ったタイムマシーンは、生物でもジャンプ出来るんだけどね。雷太が研究資料を燃やして、ジャンプしてここへ持って行ってしまった。燃え残った研究資料をかき集めて、12年かけて作ったものは、生物の体では負荷が大きくてダメなんだ。こうするしか無かった」

「……」


(タイムマシーン? 何言ってるのこの人……)


「ごめんごめん。突然、何を言ってるかわからないよね。雷太と僕は、未来から来たんだ。時空をジャンプしてね。僕のタイムマシーンは欠陥品でね。雷太が作ったタイムマシーンのように、うまくホールを作ることが出来なかった。だから、雷太が作ったホールの痕跡をこじ開けて、機械の体で無理矢理ここにジャンプしたんだ。アタッシュケースはどこにある? あれこそが、雷太が作ったタイムマシーンなんだ」


 雷太から、預かっているアタッシュケースはベッドの下に隠してある。


 チラ


「そこかな?」


 健太郎は、真知子の目の動きを見逃さなかった。急いでベットの下から取り出し、抱き抱える真知子。


(この人怖い……)


「さぁ、大人しく渡してくれ。それで僕は世界を正しい方向へと導く。真知子さんはまだわからないだろう。今から3年後、地球は人間の手によって、大きな方向に舵を取る。デスマーチの始まりだ。それは大きな間違いだった。地球は、僕とそのタイムマシーンを必要としている」

「ごめんなさい。あなたを信用出来ない」


 機械の右手を、真知子のほうへ向ける。


「ふぅ。こちらのほうこそごめんなさい。あなたを殺してでも奪う。こんなこと、本当はしたくないんだ」


 キュイイイイン


 健太郎の右手が、光を放つ。


「タイムマシーンがあれば、何回だってやり直せる。過去にジャンプして修正すれば、あなたが私に殺されない未来を作れる。この体だって、タイムマシーンで元に戻せる。アタッシュケースを渡さないというならば……」


 ドゴオオオオオオオオオン


 健太郎の右手から、電気エネルギーが放出される。家の壁は壊れ、大きな丸い穴がぽっかり開き、外と繋がる。


「はぁはぁはぁはぁ……」

「次は当てる。さぁ、わたせわたせわたせぇ!! 僕が世界を正しい方向へ直すんだ!!」


 健太郎は、真知子に当てなかった。脳の記憶をメモリーに書き移したが、機械の脳になった彼にはまだ良心が残っていた。


「あなたを殺したくない。タイムマシーンを手に入れたら、まず初めにやりたいことがある。母さんに会いに行くんだ」

「健太郎おおお!!」


 ブウウウウウウウウウウン


 壁の穴の向こうで雷太が、ドローンに乗って飛んでいる。RSCの研究所にあったドローンを借りて、ここまで飛んできた。


「雷太久しぶり。あの時ジャンプして行ってしまったぶりだね。君にとっては二日ぶりでも、僕にとっては12年だ。そうか記憶喪失なんだったんだね」

「いや、健太郎の顔を思い出した。12年? たしかに記憶の中より、老けたな」

「ふふふふ…… 人型ロボットRA-500で、タイムマシーンを回収してくる計画だった」


(人型ロボットもコイツが仕向けたことだったのか)


「でもうまくいかなかった。だから僕は、体を改造して来たんだ。僕が作ったタイムマシーンでは、生体をジャンプさせれなかった」


 両手を広げて、機械の体を見せる健太郎。


「な、何考えてんだ。それじゃあ、脳みそはどうした」

「メモリーだよ。記憶をメモリーに移した」


 ブウウウウウウウウン


「よっ」


 ドローンから飛び降りて、家の穴から入る雷太。


「真知子。アタッシュケースを渡せ、おまえには関係ない」

「関係なくないよ。私がこれを持って逃げる」

「何考えてんだ!! 死ぬぞ!!」

「あなたが、過去を書き換えて死なないようにすれば良いじゃない」

「過去を書き換えるのはそんな優しいものじゃない!!」


 健太郎が、二人に向かって両手を向ける。


 キイイイイイイイン


「雷太。君は記憶が戻ってきているのか? まぁ、良い。二人まとめて消えてもらう」


 ドゴオオオオオオオオン


 健太郎の両腕から、まばゆい光が二人を襲う。


「……」


(……あれ? なんともない。真知子?)


 真知子が雷太の目の前で、横たわっている。


「なんで俺なんかのために…… なんなんだよ!! こんなことってこんなことって」


 真知子は、雷太をかばって1人で電気エネルギーを浴びたのだった。真知子を抱き上げる雷太。


「雷太さん…… 私ね。あなたのために頑張ったんだよ…… ごめんなさい……」

「なぜあやまる。 なんで俺なんかのために」


 最後の力を振り絞って、雷太の頬に手を伸ばす真知子。


「だって…… あなたのその顔クゥーちゃんに似てるんだもん…… あんな奴に負けないで……」


 ガク


 真知子の全身の力が抜けると、息が止まる。真知子を強く抱きしめる雷太。


「雷太。何やってるんだ。早く、タイムマシーンを渡してくれ。そんな1人死んだくらいで、これから何十億人と人が死ぬんだ」

「おまえを許さない!! おまえを絶対に許さない!!」


 バコオオオオオオオン


 雷太の顔面に思いっきり蹴りを入れる健太郎。


「うぐ……」


 倒れ込む雷太。健太郎は、真知子の腕からアタッシュケースを抜き取る。


「やっとだ。やっと僕のものになった!!」


 アタッシュケースの暗証番号を打ち込むと、


 パカ


 ケースが開く。中はノートパソコンになっている。


 ピピーピ


 開くとすぐに起動する。


 カタカタカタ トン


 数字を打ち込み。エンターキーを押すと、


 ブウウウウウウン


 空間が歪み七色の穴が開く。


「さよなら」


 虹色の穴の中に入っていく健太郎。

03話いかがだったでしょうか?


ブックマークと、この下にある☆☆☆☆☆で評価してもらえると、僕の執筆作業の意欲になります。読者の反応を知ることが出来て、とてもとてもうれしいです。


さらにその下には、感想を書けるようになっています。気が向いたらで良いので、感想お待ちしております。


04話は、全ての謎が明らかに!!

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