共通点
のんびり書きます。
レイラ・ローレンス。栄えるサラナ1の若き踊り子としてその名を馳せた。
「あっれ、顔しかめてるけどそんなにレイラちゃんと会わせたくないの?」
長髪の男性、サナはこちらの空気など気にもせず尋ねてくる。
「他人に彼女の情報をぺらぺら話すわけないだろ」
「え〜けち」
サナはなんだよー、と唇を尖らせる。
「レイラの踊りが観光の目的なら帰ってくれ」
「別に観光じゃないってのー」
不満をぶつけるように蹴られた小石は、ぽちゃんと音を立て噴水の中に消えていった。
「本当に目的があってここまで来たんだ。レイラ・ローレンスに少しでいい、会わせてくれないか?」
それまでほとんど黙っていたカナが深々と頭を下げた。低姿勢のカナに、じわじわと話も聞かず追い払うことに決まりの悪さを覚える。
「…どうしてそこまでレイラにこだわるんだよ」
「それも彼女にお話するわ」
それ以上は理由を話そうとしない彼等との会話はこのままでは埒が明かない。
「…奥で話してくる」
「ラピス!?」
正気か?とマキはラピスの腕を掴み辞めるよう訴える。ラピスはそんなマキにふるふると首を横に振った。
「レイラの事だ。僕が聞いておきたくなったんだ。」
皆、そうしてもいい?と訊ねるラピスに街の人々は納得いかなそうな顔をしながらも、3人の客人をラピスの前まで促した。
「なんだよ、頭下げれば話聞いてくれるの?」
「やっと話を聞いてくれるのね。聖地なだけあって検問も厳しいわ」
皮肉のようにそういう二人の横でとカナがまた申し訳ないと言うように頭を下げた。
12区の男性は諦めたようにさっさといきな、と手を振った。
それを見てラピスは歩き始める。後ろから3人が着いてくる気配がした。
「聖地は終わったんだよ、お嬢さん方!」
突然マキがこちらに叫ぶ声がし振り返る。
「聖地に必要だったものはほとんど奪われた!ここに残ったのは失った人々と荒れた街と唯一守り抜いたものだけだ!」
それだけ言ってマキは人混みに消えていった。
「マキ…」
「貴方達がどんな目にあったかなんて有名よ」
ぽつり、とニアは言った。
「え?」
ニアと、初めてしっかり目が合う。
綺麗な、桜色の髪に映える、黄緑色の瞳。
「私と貴方達には共通点がある。」
「殺したい程憎んでいる相手は同じよ」
憎しみで、生きてきたつもりは無い。必死に生きてきた。失くしたあと、無くしたあと、亡くしたあと……僕は憎しみを忘れた。そうしないと自分が自分で無くなるようだったから。
憎いと思ったことなどない?否。勿論思った。僕から世界を奪った奴らを、だからあの時ああした。後悔なんてしてない。
「おとぎ話の話をしましょう」
おとぎ話?
「王様が二人の少女の命を簡単に奪って正義になった、あのおとぎ話の話を」
ニアの目を見ていられなくなってラピスは自宅方面へと足を進めた。
…レイラ、僕は皆のために踊る純粋な踊り子にはなれない。