変化
僕が踊って街が明るくなるのなら
みんなを少しでも笑顔に出来ると言うのなら
僕はいつまでも踊っていよう
遠くから名前を呼ぶ声が聞こえる。
ラピスは持っていた紙袋を抱え直しながら、声の元を探す。もう一度名を呼びながら、30代くらいの男性が人混みからひょっこりと顔を出した。
「ラピス!」
「あれ、12区の」
「どうも気が乗らないんだ。景気づけに踊ってくれないか?」
「そりゃ勿論」
そんな提案を僕が断る訳ないだろ、とラピスは紙袋を隣にいたマキに押し付け、くるくると広場に飛び出した。
辺りはいっそう賑やかになり、口笛も聞こえてくる。子供達は今日も元気だ。
見上げる空は今日もいい天気。昨日よりは少し雲が多いけれど。
ちゃん!とラピスがポーズを決めるとみんなが駆け寄ってきた。
「街1番の踊り子はお前だよ!」
わしゃわしゃと髪を乱される。そんなの、
「よせやぃ、照れるじゃないか」
そうしてくれてるのは貴方達の方なのに。
「謙遜するな!俺らはお前に毎日元気貰ってんだから」
どうしようもなく、その言葉が嬉しかった。
「とても素敵な踊りね」
パチパチパチ、と拍手をしながらこちらに近づいてきたのは見慣れない3人組だった。
話しかけてきたのは、ウェーブのかかった桜色の長髪の女性。くるぶしまでのスカート姿に襟付きのコートを羽織り、5センチほどかかとの上がった黒いブーツを履いている。その後ろから連れ立ったスーツ姿の二人の男は、1人が短髪の黒髪のキリッとした顔つき。もう1人は長髪の黒髪をサイドで赤いリボンでまとめこちらをにこにこ眺めていた。3人とも言い換えると「趣のある」サラナの街並みには似合わない、身なりの良さが伺える。
環境が変わってから外部の人間を招き入れることがほとんど無いサラナの人々は、突然現れた3人に当然警戒する。
先程までいつも通り賑やかだった雰囲気は一気に張り詰めたような空気になり、子供達は大人に守られるように建物の中に消えていった。
「…どちら様ですか」
話しかけられたラピスは慎重に尋ねた。
ふむ、と女性は何かを考えるように口元に手をやり呟いた。
「噂は本当だったようね」
後ろの2人もそうだね、ニア。と頷いた