家族のように
ラピスが暮らす「サラナ」は過去に聖地として栄えた街だった。何年も昔、それこそおとぎ話が語り継がれてきた年数分。
そんな聖地は利益を目当てとした者に利用され、あっという間に崩落した。それまで襲撃など武力とは無縁だった踊り子の溢れる街は、対抗しきれる力を持ち合わせていなかった。
街の人々は元の聖地を懐かしむ。
「踊り子はお客さんを喜ばせる役割を持つけど、僕は街の人々のために踊ることにしたんだ。」
夕暮れ時、もっと遊んでとせがむ子供達を宥めながら、ラピスは弱々しい水を吐き出す噴水に腰掛けた。ラピスの話に丸い瞳の少女は首を傾げる。
「街の皆はお客さんじゃないの?皆ラピスの踊りを見て喜んでるよ」
純粋な言葉に思わずふふ、と笑みが零れる。
「街の皆はお客さん、というより」
「家族みたいだもんね!」
ラピスの言葉を遮るようにやんちゃな少年が飛びつきながら言った。わっ!とラピスが驚く傍で子供達は「そっかー!家族!!」と納得し、きゃっきゃと手を繋いで駆け出した。
もうそろそろ日が落ちる。
子供達はそれぞれの家に帰っていくだろう。
「家族のようだと純粋に思えたままならどんなに良かったか」
もう、僕は
守られてしか生きて来れていない僕は
彼等を恩人と呼び、感謝と申し訳ないという気持ちでしか踊れなくなってしまった。
「罪滅ぼしのように踊る僕の踊りは、きっと惨めな姿を笑顔で誤魔化した様なものなのだろうね」
今日も、無事に1日が終わる。今日は、来なかった。ずっと笑顔でいられた。
明日も、いい日でありますように。
なにも、ありませんように。