始まりの鐘
驚いて声が出そうになったのを飲み込み、後ろを振り返る。
「サリアおばあさん!」
「なんだ、5区のばあさんかびびった…」
はぁーと息を吐くマキにカッカッカッといつも通りのくしゃくしゃの顔で笑いながら、サリアおばあさんは屈んでいたラピスの隣にゆっくりと座り込んだ。
「良かった、無事だったんだねサリアおばあさん」
「ああ、たまたま用を足しに行っていてね」
そういうサリアおばあさんは、この中心地にあるステージのすぐ近くでジャム屋を広げていた。周りの様子を見る限り、数箇所で同時に爆発は起きていたようだがステージ周りが1番酷かったように見える。安心した、とラピスは砂ぼこりを被ったサリアおばあさんの手を握った。ああ、いつも小綺麗でジャムの甘い香りをさせているのに。
「何があったんだ、ばあさん。急にあんな爆発が起きるなんて」
マキも屈みこみ、話を聞こうとする。しかし、サリアおばあさんは首を横に振り、分からないとだけ答えた。
「店に戻ろうとしたら急に焦げ臭い匂いが立ちこめて、何かがおかしいと皆で話していたらあの爆発さ。若い者に庇って貰えたから良かったものの、運が悪かったら今頃どうなっていたかねぇ」
無事でよかった。そう言うとあんたら2人もね、と目を見て笑ってくれた。
「年寄りや女子供、それから怪我をしたものは各々隠れているよ。観光客も街のみんなも混乱している中あの仰々しい3人組が礼儀正しくでかい旗を振り回しながら行進してきたからね。」
3人組。サリアおばあさんが視線であいつらだ、と教えてくれる。未だに無言で立ち尽くす彼等は何度観ても異様だ。
「サリアおばあさん、レイラを知らない?爆発の後飛び出していっちゃったんだ」
「なんだって?」
サリアおばあさんが目を丸くするのと同時に、聞きなれた街の大きな鐘が鳴り響いた。
それは本来、サラナの祭りの開会の音だった。




