動揺と涙と狡猾で薄情
路地をくだるにつれ、煙が増し熱がこもる。
「くそ、酷いな」
マキが顔をしかめて呟く。
途中、慌てるように路地の方へ逃げてきた知り合いたちとすれ違う。良かった、無事だった。何が起きたかは分からない、とりあえず安全な方へ逃げた方がいい。皆口々に言いながら走っていった。
「怪我してる人もいるな…」
「…行こうマキ、レイラを早く見つけなきゃ」
屋台通りに出ると、さっきまで綺麗に陳列していた商品が道に散らばり無惨な状態になっていた。鳴り響いていた音楽も活気も全くない。荒れ果てた街を虚しく眺めながら品物や飾りを踏まないように歩みを進める。
店の奥で座り込む人、怖くて母親の腕の中ですすり泣く子供達。サラナの街は道が細く、歩行しか許されていない。その為観光客達は自らの足で真っ先に街の出口へ向かっていた。我先にと周りをおしのけたり、怒声を上げたり、権力を口にしたり。祭りが始まる前に来るのは、踊り子達を吟味しに来た金持ちばかりだ。彼らは踊り子と所謂スポンサー契約をする。最近は踊り子の技量や人気が政治にまで影響するらしい。自らの力を手に入れるために力となる踊り子を手に入れに来たのだ。そんな人達が我先にと逃げ狂う姿は狡猾で薄情だなと寂しくその多くの背中を見つめる。
旅人や商人もいるが、大体街を出た所にある宿に泊まっている。祭りは始まっておらず、まだ街にも入っていないもの達がほとんどだろう。今回1番被害を受けたのはサラナの人達だ。
中心地に近づくにつれ、建物が所々崩れ落ちたり焦げあとがあったりと被害が大きくなっていく。
瓶が割れてできた水溜まりを踏むとぴちゃんと音を立て波紋ができた。
物がぱらぱらと崩れ落ちる音の向こうで人々の不穏なざわめき声が聞こえてくる。
「?なにしてるんだ…?」
若い男たちが前に出て、何かと向き合っているのが見えた。皆それぞれ何かに警戒し武器になりそうなものを手に持って構えている。
「ラピス、こっちだ」
マキに腕を引っ張られ、裏道から遠回りして騒ぎの中心地へ近づく。
建物の影から覗くと、そこには3名の鎧を着た男達がにっこりと笑顔を浮かべ人々の注目を集めていた。何か、女性の顔が描かれた装飾の激しい大きな旗を掲げている。
「誰だ?あいつら」
「見たことない顔だよ。なんか、嫌な感じだ」
マキとこそこそと話していると、突然後ろからトントン、と優しく肩を叩かれた。




