あかいろのステージ
祭り当日、踊り子達は開会の音楽とともにステージに立ち、聖地の象徴である少女を称える。
ステージをぼうっと眺めていると、まだ出番まで時間があるから、とレイラに手を引かれ出店巡りに連れ出された。
いつもの噴水まで行くと、1つ年上の友人マキが待っていた。
「マキ!おまたせ!」
「遅せぇよお前ら。祭りの雰囲気に呑まれていちゃいちゃでもしてたのか?」
「してないよばか」
淡い赤色の髪を細いカチューシャでかきあげた彼は八重歯をみせながらからかってくる。市場の通りに住む八百屋の息子だ。
「店の手伝いはいいの?」
「ああ、どうせ皆初日はお前らの方見に行くからな。忙しいのは明日からだ。」
「じゃあ今日のうちに楽しまなきゃね!」
「でも踊り子は今日一番忙しいでしょ。レイラなんて特に。マキ、ほぼ1人で回ることになっちゃうけど?」
「俺にだって他にも友達くらい居るわ失礼だな!」
からかい返すとマキから容赦のない蹴りが飛んできた。慌てて小走りで逃げる後ろでレイラが仲良しだねぇと呑気に笑った。
いつもと違うと言えど、祭り会場で店を出しているのは知り合いばかり。主役のレイラの腕には歩く度にサービスだ、頑張れよと差し入れが積み重なっていく。
「ちょっと休憩〜」
そう言ってメインの通りから少し離れた階段路地の木陰に腰を下ろした。
「沢山貰っちゃった。頑張らなきゃ」
ニッと笑って彼女が見る先には、賑わうサラナの街が路地の隙間から覗いていた。
高低差のあるサラナの街は上に行くほど住居がひしめき合い路地が多くなる。木の根のように色々な方向に何本も広がる路地は皆が1番低い中央のメイン通りに出ている今、静かに植物が風に揺れる音だけを鳴らしていた。
「ふふ、やっぱりこの街は1つの舞台みたい」
「舞台?」
「そう、今は私達がこの観客席からステージの上のお祭りっていう舞台を見てる」
「不思議な例えするのな、今年の主役は」
マキは興味無さそうに返して出店で買った焼き串にかぶりついた。
舞台、この街が?
ラピスは街をじっと見つめた。
微かに聞こえる祭りの賑わう声。
「ラピス」
レイラが立ち上がり、ラピスの視界の中にわりこんできて名前を呼んだ。
「あそこの皆は今ステージに立ってるよ」
さっきまで私達も立ってたね。
彼女の瞳は今日も相変わらず光を集めて輝いている。
彼女の後ろが真っ赤に光った。
あ、赤のライトも似合うな。
目が焼けるような赤色。煙が巻き上がりすぐにそれは色褪せる。
遅れて地面を這うような低い爆発音が聞こえるのと同時に迫ってきた風に押され、3人とも体勢を崩した。
「な、なに!?」
「爆発か?なんでっ」
「開会の音頭にしては盛大すぎるだろっ…」
ンなわけあるか、とこんな時まで軽口を言うマキの頭をペシッと軽く叩く。
土煙が3人を包み、息がしづらくて腕で顔を覆った。
「行かなきゃ」
レイラが咳き込みながら立ち上がり、爆発のあった方向に走り出そうとする。
「待てレイラ!!危なすぎる」
マキが慌てて声を掛け、止めるが彼女は聞かなかった。
「皆の様子を見に行かなきゃ」
それだけ言い放ち、彼女は今度こそ階段を駆け下りていった。霧のように舞った土煙ですぐにその背中はかき消されてしまう。
「ラピス、行くぞ。アイツを1人で行かせる訳には行かないだろ」
呆然としていた僕はマキに腕を引かれてようやくはっとする。
「わ、わかった。レイラを追いかけよう」
立ち上がって2人で走り出す。
どうして、なんで爆発なんか。
誰も、何も起こっていませんように。
きっと誰かが大掛かりに準備したサプライズだ。皆さっきまでと変わらず笑っているはず。
視界の悪い中で希望の光を探した。




