6桶目
準備が出来たので、もんから外に出て、森の中を探査する。
見たことの無い木ばかりだが、ぱっと見た感じは見覚えのあるようなないような。
日本の雑木林に近い感じだな。
広葉樹林。
森の奥のほうは暗くてよく見えない。
足元には落ち葉が積もっていて、草はまばらに生えている。
木々の間隔もそこそこあいているので割と歩きやすい。
しばらく歩くと小川に出た。
透き通っていて非常にきれいな水だ。
「グルルルル」
「え」
獣のような鳴き声がしたほうを見ると獣がこちらを威嚇していた。
超でっかい狼だ。やべぇ俺の異世界ライフもう終わりか?
大きさ5mくらいあるんじゃないか。
無理だろ無理無理、死んでしまうって。
「グルルルルル」
狼はこちらをにらみつけたままじわりじわりと距離を詰めてくる。
ええい!ままよ!
武器も作ったんだ、怖いけど戦ってみるか。
両手剣を構えて、覚悟を決め狼を見据える。
「グルゥッ!?」
とたん狼がビクッと体を震わせ後ずさりした。
なんだ?
ちょっとこのまま近寄ってみよう。
構えは崩さないまま、とびかかってこられたらいつでも切り付けて逃げれるように、慎重に慎重に。
「ッ!?」
狼から明らかに焦りが見える。
さっきは気のせいかと思ったが、こちらが近づくと距離を保つように後ずさりしていく。
初めての人間とかでビビってるのか?
ちょっと踏み込んでみようか。
「キャインッ」
俺は目の前の光景に困惑していた。
5mはあろうオオカミが情けない声を出して頭を抱えて伏せをしているのだ。
ちょっとこれはビビりすぎでは?
でもこのまま引き下がって襲われても困るしなあ、にげてくれないかなあ。
っと、おれは剣を振りかぶってみる。
『ま、まってくれ』
「!?」
野太い声が狼から聞こえてきた。
「お前しゃべれるのか」
『しゃべれる、いやしゃべれます、わが主よ』
「お前の主になった覚えなんかないけど」
『っ!! 申し訳ない、だが私を切るのは待っていただけないか』
「まぁ俺としても話せる相手を切るのも後味悪いし」
しかもまともに遣り合ったら確実に狼のほうが強いだろうし。
これは黙っておくけど。
「じゃあ敵対する意思は無い、と?」
『ももももちろんです。敵対だなんて滅相もない』
なんだか野太い声の狼がめちゃくちゃ恐縮しているんだが……。
逆に怖いわ。
「そうか、威嚇してきたからてっきり縄張りにでも入ってしまったのかと思ったけど、敵対
しないなら俺も戦いはまっぴらごめんだし、失礼するよ」
『こちらこそ大変な失礼を』
俺はそそくさと退散することにした。
にしてもなんであんなにビビり倒していたのだろうか。
そして話せる獣がいるということに俺は非常に興奮していた。
これぞファンタジー、ちょうワクワクする。
「……」
『……』
え? なんかついてきてるんですけど?
さっきの狼、ついてきてるんですけど。後ろからプレッシャーを感じるんですが。
俺が止まると距離保ったまま後ろでお座りするし、なんなの。
「なんでついてくるんだ」
『いや、その』
「後ろから襲うつもりか」
『いえいえいえいえいえ、そんなまさか。一つお願いがありまして』
「お願い?」
『はい、我の主になっていただきたくて、いや迷惑ならいいんです、今すぐ去ります』
まさかの展開。
一人でさみしかったし、それもありか。
「まぁなんだ、その別にいいぞ」
『本当ですか!!ありがとうございます!』
「ちなみに理由を聞いても?」
『はい、もちろんです。我々一族にはおきてがありまして、縄張り内に無断で入った者は何人たりとも逃がさない、という掟が』
やっぱり縄張りだったのか。
『そして自分より強かった場合、種の存続のためにもそのものの配下になるという掟も』
なるほど、でも俺強くないと思うんだけどな。
直接聞くか。
「そう言ってくれてるのに申し訳ないけど、俺強くないよ?」




