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大賢者の番頭  作者: 柚希 翠
38/38

37桶目

魔王、もといアリアが帰って数日後国からの正式な書簡が届いた。


その内容によると、この森の王は大賢者であること。

ハイエルフと協力関係にあり、ハイエルフと銀狼フェンリルと共に大賢者の配下についていること。


また、国に対する不穏分子ではなく魔王に直接協力体制があり、友好的であることを踏まえ魔王直轄地であり、代表の地位は魔王とほぼ同等のものとする。

とのことが書いてあった。


持ってきてくれた文官は護衛に着いた狼たちにまず驚き、ハイエルフに警戒し、俺を胡散臭い目で見たあと書簡の内容を読み上げ顔面蒼白になって、無礼を平謝りし決して頭を上げないまま膝を震わせながら帰って行った。


温泉に関しては外部のものには使わせないように言われたのだが、個人的には使って欲しいのでほぼほぼ普通のお湯にした。

微妙に効能を残したのは出来心だ。

と言っても、数日間湯治をすれば傷が跡形もなく治る、という遅効性のものなので1日入った所で見抜けまい。


おそらくアリアは見抜くだろうが、これなら許してくれるだろう。


温泉自体は、エルフや俺やアリアが入る別館を作ろうと思うので、またエルフたちに手伝ってもらおう。


イメージは男女混浴の秘湯だ。

べ、別に混浴に入りたいとか憧れがあったってわけじゃないからな。


この提案をエルフ達にした時、何故かエルが目を輝かせていたのが気になるが、それはまぁいい。


とりあえず必要な建材を作っていく。

やっぱりこの作業は楽しい。

何も無いところから木材や、釘や金具等々が産み出されるのをエルフたちは目を輝かせて見ていた。


出来上がった建材はもちろん組み立てる必要がある。

俺の力を使えば1人で出来なくもないが、エルフたちも手伝うと言ってくれている事だし、手伝ってもらうことにした。


そして1ヶ月後。


別館が出来上がっていた。

見た目は和風テイスト、建築様式などは知らないので適当だ。


構造は至ってシンプル、システムは家族風呂を想像して作った。

建物の入口は1つで、使用中か否かの札をかけるところを作ってある。

脱衣所は男女別、脱衣所から直接露天風呂に行けるようになっている。


恥ずかしがる人も居るだろうから、浴槽内に仕切りをつけ、男女別で入れるようにもなっている。


その男女別のエリアを抜けると、東屋がありその下にも浴槽が続いているので、天候を気にせず入れるという訳だ。


ちなみに、露天エリアは高い石垣で囲ってあり、外からの侵入は難しいようになっている。


この石垣は、俺の力を使ってアセンブリ化しているのでほぼほぼ要塞のようなものだ。


お湯の効能は、遠慮なしのバリバリ回復薬湯だ。

腕を切り落とされても、くっつけた状態でお湯をかけると正常な状態にまで完治する。

つける方向が違ったとしても、一瞬光のモヤに包まれたあとは綺麗な腕になっている。


なぜ知っているかって?


先ずは小さな切り傷から効能を試していたのだが、そのうちエスカレートしてわざと致命傷を負ってお湯に使ったりするMADなエルフたちが現れた結果だ。


最終的に四肢欠損はくっつくのか、という命題に対し試したは良いが、痛くて慌てて適当につけてお湯をかけたら、向きも何もかも治っていた、というわけだ。


流石に俺が最初してたんだが、深めの切り傷で満足して辞めたあとエルフたちが勝手にやっていたらしい。

深めの切り傷の時点で、痛くて俺はギブアップしただけなんだがな。


こんな痛い実験をエルフたちに頼むわけには行かなかったので、黙ってやっていたんだがエルにまんまと見られていたようで、俺が実験を終えたあと勝手に実験をしていたらしい。


とりあえず、痛々しい実験結果を聞いた俺は一通り怒ったあとで礼を言った。


「これで効能も確認できた。この建物へは俺が認めた奴しか入れないようにセキュリティをかけている。今からみんなに配るこのペンダントを身につけていてくれ。これをつけている人はいつでも利用出来る」


「あの! このペンダントを例えば敵に奪われた場合はどうなるんでしょうか」


エルフから質問が飛んできた。


「もちろんそこは考慮済みだ。いまからみんなの血を登録してもらう。その身につけている者とペンダントの登録者が合わない場合ペンダントは機能しなくなっている」


「おお、さすが大賢者様だ」

「素敵!」「またあのお湯に入れるのね!」


エルフたちは、効能や使い方を聞いたあと喜びを口にしていた。


ああ、この感覚すごく好きだ。

何かをして、対価としてありがとうと言われる、こんな当たり前が本当に恋しかったんだ。

転生してからしみじみと思った。


死ぬ前、出来て当たり前、遅れるとクレーム、こちらの事情は考慮しない、無理な値切り等々無茶ぶりな業界にいたせいで、めっきりありがとうを聞かなくなっていたので、自然と涙が溢れてきた。


ありがとう、みんな。

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