34桶目
「露天風呂を作ろうと思う」
俺は、ユキやエルフ達を集めて露天風呂計画を発表していた。
「主さまっ」
露天風呂がどれだけ素晴らしいものか語ろうとした時、ユキに焦りの見える声で呼ばれた。
ユキは、明後日の方をじっと睨んでいる。
「ユキ、どうした?」
「奴が、来ます」
「奴?」
俺が不思議に思っていると、ユキの睨んでいる方から何かこちらに向けて飛んできているのが目視できた。
赤く光る点……?
いや、あれは。
ドドーーーンッ
奴はそのまま地面に突っ込んできた。
「うわっ!」「きゃーっ」
「なんだなんだ!!」
エルフ達は大騒ぎ、ユキは土煙の中をじっと睨みつけている。
「ふう、ようやく来れたのじゃ」
土煙が収まると、そこには先程の巨体の姿はもうなく、年端もない赤髪の少女が立っていた。
「アリア」
「来たぞ、喜ぶのじゃ」
「魔王なら魔王らしくこう厳かにだな」
「うるさい」
「「「魔王様!?!?!?」」」
「そうじゃが、おん? こやつらはなんじゃ」
「ちょっと訳があって、隣人になってもらったハイエルフさんです」
「なに!? ハイエルフじゃと!」
「そうだけど。ええっと、その族長の、エルちょっとこっち来れる?」
「は、はひぃっ! ただいま!」
とりあえず、一通り紹介しようと族長のエルを呼んだのはいいが、ガッチガチに緊張してて冷や汗ダラッダラだ。
ふとアリアはこちらを見て怪訝な顔をした。
ん?
どうした?
「こやつが人間だと知っておるのか」
「ははははははははひい、きちんと存じ上げております」
エル、ガッチガチバージョン2。
略してEG2。
なんの話しだ。
「では何故お主らがここに」
「お言葉ですが、抵抗もせずに逃げ出してきてしまったので私達には何も言う資格は御座いません」
そう言ったはいいが、全く何も話さないわけなもいかないので、ざっくりと人間に襲われて逃げ出して助けた旨を伝えた。
「魔王として国民を護るのは義務じゃ。謝らせてくれ。それにしても死者が居なかったのは奇跡じゃな」
アリアは、人間に攻め込まれて逃げ込んできたことを聞くと、攻め込まれたのは魔王である自分の責任だといった。
どうやらこの銀狼の森の果ては人間の国との国境があるらしい。
ただ、国境付近の小競り合いや、国の絡まない盗賊等に大きな反応をしない様にしているのだと。
所謂、事なかれ主義がこの国の文官の主流だそうだ。
ちなみに軍閥はゴリゴリの好戦主義、その軍閥を実力で押さえつけているのがアリア、と前言っていたような気がする。
「それは、私も実は死にかけていたのですが、この大賢者コウ様が助けてくださったのです」
「コウ……様?」
ジロリと一瞬アリアがこちらを睨んだ気がした。
何故だ。
「はい、私達が銀狼の森の王に助けを求めて、森の奥を目指していた時にここにたどり着き、今の銀狼の森の王がコウ様だと知りました。そして私達に慈悲を下さり今に至ります」
「ほう、誇り高いハイエルフが人間に助けを求めたのかや」
「まあ、それに関してはいろいろあったんですが、魔王様は知る必要のないことなので」
「それは我が決めることじゃ」
「確かにそうでした。大変失礼致しました」
「よいよい。して、誇り高きハイエルフがお主らの里を襲った同じ人間にどうして助けを求めたのじゃ」
エルは仕方なく、おずおずと言った様子でぽつりぽつりと語り始めた。
「ここに辿り着いた時、族長は私の父でした。父は助けを乞うことに反対しておりました」
「そうじゃろうな」
「ですが、私達も瀕死の傷を負っていた者も少なくなく、それを見兼ねたコウ様が父を窘めて下さり、私達の傷も治してくださいました」
「そう言えば、お主ら全員傷1つないでは無いか。瀕死の傷を負ったものもおったのじゃろ」
「はい。ですが、コウ様は温泉水で私達の傷を癒してくださいました。ですので、同じ人間であろうと命の恩人であるコウ様の事は、私達敬愛しております」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。温泉とやらは妾も知っておる。じゃが、傷は治らんかったぞ? それに、瀕死の傷がもう見る影もない、などという話聞いたことがないのじゃが」




