31桶目 閑話 エルの回想 思い違い
「!!!」
嘘つきさんの言葉に刺激されたのでしょうか。
大人の男達が武器を持って前に出ました。
その時です。
嘘つきさんの後ろから、銀髪のとても綺麗な女の人が、とてもしんどそうに武器を渡しました。
剣、でしょうか。
あまりに攻撃的な魔力が溢れ出し、直視出来ません。
嘘つきさんは、受け取るとかなりビビりながら前に出ました。
「貴様を森の王に代わってこれから処刑する」
流石に、ただの人間1人とエルフじゃ勝ち目もないでしょう。
ただの人間だった場合ですが。
「とりあえず剣だけ抜いてもいいか」
どうやらあまり戦い慣れていないようです。
どうなってしまうのでしょうか。
「はっ、今から自分が殺されようとしている時にわざわざ確認とは呑気なもんだな。いいだろう、愚かな人間よ。さぁ、剣をぬけ」
「ならお言葉に甘えて」
シャキーン、と剣を抜きました。
な、なんですか、あの剣は。
神々しく、なおかつ溢れ出す威圧感。
溢れ出ていた魔力は、剣の周りに凝縮されて見えます。
その魔力は、嘘つきさんの身体をも覆いました。
「「「なっ!?!?」」」
「貴様、なんだその剣はっ」
「作りました」
やっぱり嘘つきさん、のようです。
あんな剣、人間に作れるはずもありません。
でもどうしてでしょうか、剣の魔力と嘘つきさんから初め見えた魔力と、この建物から放たれる魔力が、雰囲気さえ違いますが同じものに見えるのです。
「嘘つけ! 貴様のような薄汚い種族風情がそんなものを生み出せるわけがないだろ! 得意の幻術とかのハッタリだな! 死ねぇぇぇ」
色々と考えているうちに事は進みます。
でも、そこからは圧倒的でした。
お父さんはまあ、自滅とでも言うんでしょうか。
自分で斬りかかって、剣を切られてあの魔力を直に受けて気絶してしまいました。
他の大人達は、あの嘘つきさんから敵意を向けられるや否や、同じように気絶していました。
剣を抜いた時点で、腰が抜けている人も沢山います。
私?
私は元々座り込んでるので、腰が抜けようとちょっとチビってようと大丈夫です。
チビってませんけどね。チビってませんよ。
大丈夫、ちょっと危なかっただけです。
ちょっとだけなら、大丈夫でしょ?ノーカンです。
そうして私達は呆気なく捕まって……居ないんです。
汚れていたから、という理由で敵意を向けたにもかかわらず、私達を湯浴み場に連れていきました。
このお湯、とても不思議なんです。
湯浴みする度に、さっきまで身体中が痛かったのが嘘のように消えていくんです。
喉も渇いていたので、お湯が吹き出している所から直接飲んでしまいました。
すると、身体の中があの嘘つきさんの優しい色の魔力で満たされたかのような感覚になり、そして足の感覚も戻ってきました。
恐る恐る、未だ足を覆っていた布をとりました。
足は綺麗に治っていました。
まぁ怪我した時のこと見てないので分かりませんけど。
他にも怪我をしていた人も、怪我が治ってびっくりしています。
もう私達は死んだんだ。
これは夢だ。
などと言い始める人さえ居ます。
私も、これは夢だと思うくらいです。
でも、あの嘘つきさん、私は嘘つきさんじゃない気がしてきました。
というか、何故建物中からあの人間さんの魔力が溢れてきているんでしょうか。
まるで、あの人間さんの魔力で出来たモノのようじゃないですか。
魔力でものを作るなんて事、神様でもない限りありえませんけど。
その後頂いたご飯はとても美味しかったです。
大広間に通してくれて、ここで泊まっていい、と言われました。
何故あんなに敵意を向けたにもかかわらず、私たちに優しくしてくれるのでしょうか。
死にかけていた私達を助けてくれました。
まるで賢者様じゃないでしょうか。
湯浴みしたお湯もまるで御伽噺のポーションのようでしたし。
もし、もしですがこの建物も作っていたのなら、あの人間さんは人間さんじゃないと思います。
あの優しい魔力と、もしかすると神様のような力を持っている温厚そうな人、怒らない穏やかな性格、私結婚するならあんな人がいいです。
エルフと人間だって関係ないです。
私の方が長生きだと思いますけど、それでも最後まで添い遂げたいです。
あれ?
なんで私、あの人のことばかり考えているんでしょうか。
里を追い出された私達には、そんな余裕はどこにも無いのに。
諦めなければなりませんね、族長の娘としても。
お礼として身体を、と言ってみましょうか。
それで身体を要求されれば父も怒るでしょうし、短絡的に身体を要求する人という事なら、私も諦め着きます。
断られれば、それはその時考えますが、お母さんも言っていたように人間はエルフに欲情するようですし。




