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大賢者の番頭  作者: 柚希 翠
30/38

30桶目 閑話 エルの回想 邂逅

 私の名前はエルリア・フォレスティア、皆にはエルって呼ばれてます。


 今、私達は悪い人間に襲われて里から逃げ出してきました。


逃げる時に毒矢を脚に受けてしまいました。

今は、強力な痛み止めを飲んでいるので痛みは分かりませんが、お母さんに背負ってもらっています。


 抵抗しようと私の父、族長は言ったのですが、女子供が居るのに、捕まったらどうするんだ!と、私の母初めとする女性陣に詰め寄られ、その間に矢が襲いかかり、這う這うの体で逃げ出してきました。


 私の母曰く、エルフは人間にとっていい玩具にされる。特に若いエルフが人間に捕まった場合、奴隷落ちは確実。

 大抵は薬で無気力にされてから、娼館に入れられるのだそうです。

 それを聞いてゾッとしました。


 人間が私達の里を襲う前に、毒性のある空気を流していたらしく、大人達は毒にやられ皆かなりしんどそうでした。


 逃げ出している最中、敵の人間が潜んでいて、危うく捕まりかけましたが何とか全員逃げたせました。


 そうして、森の奥の方へ進んでいます。

 この先は、いえ、既にこの森は銀狼フェンリル様の森だそうです。

 私達も森に暮らす者、狼とは森に暮らす者同士たまに会うのですが、私達エルフとは不可侵の協定でもあるんでしょうか?

 襲われたという話は聞いた事がありません。


 食べても美味しくないですし、襲われないならそれに越したことはないのですが、何故なのかは気になります。ああ、狼さんが話せたら、あのもふもふを触らせてもらうのに。



 あれから何日がすぎたのでしょう。

 そろそろ限界です。

 ちなみに私達エルフなので、食べ物とか森で取るのは余裕です。とはいえ、調理出来ないのでやはり食べれるものは少ないのですが。

私もかなりもっているそうです。


矢が刺さっていた脚は布に覆われて見えませんが、あまりいいことにはなっていないでしょう。


薬のおかげで、楽観的なのです。

死にかけですが。


 しばらくすると、先頭を歩いている大人達がざわざわしだしました。


「おい! 何が見えたぞ!」

「建物か?」

「人間が森に居るのか?」

「見たことない建物だ」


 どうやら、森王を探していたらしいのですが、建物を発見したようです。

 しかも、見たことの無い建物です。


 大きな門があります。

 周りの塀でしょうか。

 材質は石ではないようです。


 大人達は人間の建物か、いやでも見たことがない、と軽く恐慌状態です。

 そろそろ本当に毒がまわってきたのでしょうか、薬が切れてきたのでしょうか。

足の感覚はなく、気持ちが悪く、頭が痛く気を失いそうです。


「ガウガウガウ」

「ウゥーー」

「グルルルルルル」


 そこへ、中から狼達が飛び出してきて、私達が中に入らないように立ち塞がりました。

 まさか、狼さん達に牙を剥かれるとは。

 ちょっとショックです。


「こんな夜遅くにどうされましたか」


 誰か来ました。

 少なくとも話して居るので、魔族でしょう。


「話か分かるのか」


 私の父が問いかけます。

 しばらく問答が続きました。


「はっ、人間だと? 何故そんな薄汚い種族がここにいる」


「なに?」

「フェンリル様はどうした」

「人間怖い」

「どうかお助けを……」


 またもや恐慌状態。

 私はとっくに限界過ぎていて、頭が全く回っていません。


 でも、目の前の人間からは、里を襲った人間とは明らかに違う魔力が流れ出ています。

 それも莫大な量が。

 私は先祖返りらしく、魔力を感じることが出来るんですが、ここまでハッキリと感じたことは今までありませんでした。


 魔力の色はとても優しい色でした。

 きっとこの人は悪い人じゃない。

 私はそう思います。


「俺何かしました?」


 その人が困惑しながら父に問いかけました。

 さっきから父はかなりの事を言っています。


 気が立っているのか、やっぱり人間に襲われた事をかなり恨んでいるみたいです。

 私も、人間は怖いですがこの人の事はどうもそう思えません。


ここでお母さんが気がついて、最後の薬を飲ませてくれました。



「なっ!! この森の王はお前みたいな物が住んでいるのは知っているのか? いや、お前みたいな薄汚い種族が許可を得れる訳がないだろう。森の王は何処にいる、貴様を突き出して喰い殺して貰おうじゃないか」


 お父さん、そんな事言ってもフェンリル様と話したことないじゃない。

 それに、あの人も困ってるよ。



「いや、その森の王は俺なのだが」


「はっ!! 貴様いい加減にしろ、森の王の名を騙るとは畏れ多い、この俺が森の王に変わって貴様を処刑してやるわ!」


 どうやらいい人そうですけど、嘘つきのようでした。

 さすがに、フェンリル様が人間の元に降るとは思えません。

 いい人そう、と言うだけだっだみたいです。







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