30桶目 閑話 エルの回想 邂逅
私の名前はエルリア・フォレスティア、皆にはエルって呼ばれてます。
今、私達は悪い人間に襲われて里から逃げ出してきました。
逃げる時に毒矢を脚に受けてしまいました。
今は、強力な痛み止めを飲んでいるので痛みは分かりませんが、お母さんに背負ってもらっています。
抵抗しようと私の父、族長は言ったのですが、女子供が居るのに、捕まったらどうするんだ!と、私の母初めとする女性陣に詰め寄られ、その間に矢が襲いかかり、這う這うの体で逃げ出してきました。
私の母曰く、エルフは人間にとっていい玩具にされる。特に若いエルフが人間に捕まった場合、奴隷落ちは確実。
大抵は薬で無気力にされてから、娼館に入れられるのだそうです。
それを聞いてゾッとしました。
人間が私達の里を襲う前に、毒性のある空気を流していたらしく、大人達は毒にやられ皆かなりしんどそうでした。
逃げ出している最中、敵の人間が潜んでいて、危うく捕まりかけましたが何とか全員逃げたせました。
そうして、森の奥の方へ進んでいます。
この先は、いえ、既にこの森は銀狼フェンリル様の森だそうです。
私達も森に暮らす者、狼とは森に暮らす者同士たまに会うのですが、私達エルフとは不可侵の協定でもあるんでしょうか?
襲われたという話は聞いた事がありません。
食べても美味しくないですし、襲われないならそれに越したことはないのですが、何故なのかは気になります。ああ、狼さんが話せたら、あのもふもふを触らせてもらうのに。
あれから何日がすぎたのでしょう。
そろそろ限界です。
ちなみに私達エルフなので、食べ物とか森で取るのは余裕です。とはいえ、調理出来ないのでやはり食べれるものは少ないのですが。
私もかなりもっているそうです。
矢が刺さっていた脚は布に覆われて見えませんが、あまりいいことにはなっていないでしょう。
薬のおかげで、楽観的なのです。
死にかけですが。
しばらくすると、先頭を歩いている大人達がざわざわしだしました。
「おい! 何が見えたぞ!」
「建物か?」
「人間が森に居るのか?」
「見たことない建物だ」
どうやら、森王を探していたらしいのですが、建物を発見したようです。
しかも、見たことの無い建物です。
大きな門があります。
周りの塀でしょうか。
材質は石ではないようです。
大人達は人間の建物か、いやでも見たことがない、と軽く恐慌状態です。
そろそろ本当に毒がまわってきたのでしょうか、薬が切れてきたのでしょうか。
足の感覚はなく、気持ちが悪く、頭が痛く気を失いそうです。
「ガウガウガウ」
「ウゥーー」
「グルルルルルル」
そこへ、中から狼達が飛び出してきて、私達が中に入らないように立ち塞がりました。
まさか、狼さん達に牙を剥かれるとは。
ちょっとショックです。
「こんな夜遅くにどうされましたか」
誰か来ました。
少なくとも話して居るので、魔族でしょう。
「話か分かるのか」
私の父が問いかけます。
しばらく問答が続きました。
「はっ、人間だと? 何故そんな薄汚い種族がここにいる」
「なに?」
「フェンリル様はどうした」
「人間怖い」
「どうかお助けを……」
またもや恐慌状態。
私はとっくに限界過ぎていて、頭が全く回っていません。
でも、目の前の人間からは、里を襲った人間とは明らかに違う魔力が流れ出ています。
それも莫大な量が。
私は先祖返りらしく、魔力を感じることが出来るんですが、ここまでハッキリと感じたことは今までありませんでした。
魔力の色はとても優しい色でした。
きっとこの人は悪い人じゃない。
私はそう思います。
「俺何かしました?」
その人が困惑しながら父に問いかけました。
さっきから父はかなりの事を言っています。
気が立っているのか、やっぱり人間に襲われた事をかなり恨んでいるみたいです。
私も、人間は怖いですがこの人の事はどうもそう思えません。
ここでお母さんが気がついて、最後の薬を飲ませてくれました。
「なっ!! この森の王はお前みたいな物が住んでいるのは知っているのか? いや、お前みたいな薄汚い種族が許可を得れる訳がないだろう。森の王は何処にいる、貴様を突き出して喰い殺して貰おうじゃないか」
お父さん、そんな事言ってもフェンリル様と話したことないじゃない。
それに、あの人も困ってるよ。
「いや、その森の王は俺なのだが」
「はっ!! 貴様いい加減にしろ、森の王の名を騙るとは畏れ多い、この俺が森の王に変わって貴様を処刑してやるわ!」
どうやらいい人そうですけど、嘘つきのようでした。
さすがに、フェンリル様が人間の元に降るとは思えません。
いい人そう、と言うだけだっだみたいです。




