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大賢者の番頭  作者: 柚希 翠
27/38

27桶目

 銭湯の対応はそこまででもないのだが、そもそもどんな客が来るかわからない現状、接客態度は非常に重要だと思う。


 それは、直接の対応だけじゃなく、泊まる部屋の清掃やベッドメイキングもそうだ。


 来客対応の言葉使い、笑顔、笑声(えごえ)、挨拶から言葉尻まで、とりあえず前世の何とかーランドの接客を調べた時に書いてあったことを覚えている限り教えた。

 だいぶオリジナル入ったが、まぁいいだろう。


 その間もエルはずっと楽しそうだった。

 案内で歩く時も、距離がやたら近い。

 最初からそんな肩と肩が触れ合う距離だっけ?


 次は寝室のメイキングだ。


「じゃあ、 シーツの張り方から教えるから、って大丈夫?」


 反応がないので、エルほうを振り返るとぼーっとし顔でこちらを見ていた。

 少し頬が赤い。

 ちょっと詰め込みすぎたか、ここでちょっと休憩するか。


 気がつけばもう日は真上を回っていた。

 昼時、そろそろお腹も空いてきたきがする。


「エル、ちょっとこっち」


「えっ、はっはい!」


 エルはビックとして、おずおずとこちらに来た。


「とりあえずここ座って」


 ベッドの端をポンポン。エルを座らせる。


「うわあ、柔らかい」


「横になって」


「えっ、そんな私まだ心の準備が……いや、でもここで……」


 エルは下を向いて何やらブツブツ言っている。

 耳まで赤くなってきた。

 本格的に疲れが出てるのか、熱がありそうだ。


「ちょっとごめん」


「ひゃうっ」


 エルのおでこに手を当てた。

 うーん、ちょっと熱い気がする。

 首筋はどうだろう。


「ひゃっ……ンッ……」


 やっぱり熱いな。


「イツシマさま……」


「幸介、とかなんでもいいよ」


「それじゃあ、コウさま……あの」


 エルはトロンとした、上気顔でこちらを見上げてきた。

 上目遣い、破壊力半端ねぇな。

 にしても顔真っ赤じゃないか、施設の案内はここまでだな。

 夕方までここで寝ててもらおう。


「エル、ちょっと寝ようか」


「は、はい」


 ファサーと布団をめくって、エルに布団に入ってもらう。

 ファサーっと布団をかけて、コップを作り、水を生成して枕元に置いておく。


「じゃ、今日はここまで! エル、疲れただろうからちょっと寝てていいよ。族長になってからずっと色々取り纏めてたみたいだし、体調も悪そうだから。後で狼を1匹付けるから、何かあったらいつでも呼んでね」


「えっ、あっ! いえ、私そのっコウさまが……っ!! ※△〇s!※□×〜!!!」


 エルはそう何か叫んで顔を真っ赤にしたかと思うとうつ伏せになって、枕に顔を埋めてバタバタしだしてしまった。

 どういう状況だ、これ。


「ま、まあとりあえず今日はここまでな。接客用語とか覚えるの大変だっただろ。お疲れ様」


「あ、ありがとうございます」


 エルは、布団の中から目だけ出してそう言った。

 うん、かわいい。


「今日1日エル専用の部屋だ、好きに使ってくれていいから」


 そう言って、エル1人残して通りかかった狼に、エルが起きるまで傍に居るように伝えた。


 さて、と。

 あとは魔石の調整だな。


 と言っても、どれだけの大きさに縮めたら効果がどのくらいか分からない。

 大きさを小さくして、ちょっと指を切って風呂に行く、と言うのを繰り返すしかないのか。


 めんどくさいな。


「どこかに手伝ってくれる人居ないかなぁ」


「主、呼びましたか? 呼びましたよね。呼ばれたので来ました」


「うわっ」


 いつの間にかユキが横にたっていた。


「エルさまとのくんずほぐれつ、楽しかったですか?」


「くんずほぐれつって……。そういう事は一切していないし、手を出すつもりもない。隣人の族長に手を出すメリット、ないじゃないか。元族長にも恨まれたくないし」


「主さま、もしかして貴方阿呆なのですか。いや、木偶? 」


「急になんだよ」


「いいえ、自覚がないなら別にいいです。主さまには私が居ますし、きゃっ」


「きゃっ?」


 最近、ユキのキャラが分からなくなってきた。

 この森の王じゃなかったのか。

 なんだかどんどんユキのイメージが自分の中で崩れていっている。

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