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大賢者の番頭  作者: 柚希 翠
26/38

26桶目

 聞くところによると魔石は主に加工済のものを言うらしく、粗魔鉱石から精錬、研磨、目的の属性に調整したものが素材として流通しているらしい。


 それも、ほんの数ミリの大きさでも庶民が優に数ヶ月は暮らせる位の金額がするらしい。


 それこそ5mmを超えるようなものは富裕層が使う魔道具や、軍用の製品などに使われるのみで、庶民は普通に生活していく上では、一生触らないし目にすることもないらしい。


 そんなものを300mm、しかも回復系の付与付き。


 ちなみに、回復系の付与は都市伝説レベルの信憑性らしいので、実は族長が騙すな、と憤ったのも無理のない話だったりする。


 回復系の話で、以前エルフの里の外から来た怪しい魔族が小さな小さなクズ魔石を布袋に入れたものを壺にいれ、水を貯めておくと腐らず回復力が普段の10倍になる、という商品を持ってきたことがあったそうな。


 エルフは、そういった類の事が元々嫌いだったため、怪しい魔族をボコボコにして、その水の効果を試したそうだ。


 もちろん効果は嘘だった。と、いった事もあったらしい。


 ちょっとこれは魔王様、もといアリアには見せられないな。

 貴金属を見せただけでも大騒ぎされたことがあったが、話を聞く限りその比じゃなさそうだ。


「これ、小さくした方がいいかな」


「はい。効果が無くなるのは少し惜しい気はしますが、もし私たち以外の者に漏れた場合大騒ぎになると思います。あ、もちろん私達は漏らすつもりはありませんから、安心してください」


「ああ、それは分かってる」


 今日の態度見てると、あの様子じゃ何お願いしても聞いてくれそうだ。


「あと、効果は全くゼロにするつもりはないよ。擦り傷程度なら、1日2日くらい湯治すれば治る、程度にはしようと思う。みんなその方が疲れ取れるだろうし、少しの怪我なら気にしなくて済むしね」


「本当ですか! ありがとうございます、みんなきっとそれでも喜ぶと思います」


「あとは、ユキと狼達にも確認しとかないとな」


「主、その必要はありませんよ」


「「わっ!」」


 ユキがいつの間にか後ろに立っていて、急に話し出したので心臓が止まるかと思った。


「急に話しかけるなよ……」


「主、急に話しかけるなと言われても、話し始める時はいつだって急なのでは?」


「うん? それもそうか……ん?」


「お言葉ですがユキ様、せめて足音立てるとか近づいている、と言う気配くらいさせたらいいと思うのですが」

 じと、とエルがユキの方を見ながら言った。


「……主さまがつい年頃の娘と2人きりでしたので? ちょっと驚かしてやろうと思って、こっそり近づいたりしてませんけど?」


 言っちゃってます。全部バラシしてます、ユキさん。


「まあまあ。ところで何処まで話聞いていたんだ?」


「魔石の大きさを聞いてイチャイチャしだした位からです」


 ほぼ初めからじゃないか。

 むしろ後ろを付けてきていた可能性の方が大きい気がする。


「温泉の効果を薄めるのでしたら、構わないと思います。あのおもらし魔王にバレるとややこしいですし」


「おもらし魔王って……、まぁそういう事なら後で調整しとくよ」


「私の眷属たちにも伝えておきます」


「よろしくユキ」


 ユキはサッと銀狼に戻ると素早く去っていった。

 暫くして、綺麗な遠吠えが聞こえたので集合を掛けたみたいだ。便利だな、遠吠え。


「次はサービス面、もしお客様が来た場合の対応の流れを教えるから、番台の方に戻ろうか」


「はいっ」


 ユキが居なくなってほっとしたのか、エルは何だか嬉しそうだ。


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