25桶目
族長は、この数日銭湯を見て周ったそうだ。
曰くハイポーションの様なお湯に何度も浸かり、効果を試すために自ら怪我してから入ったり、入口に飾ってある聖剣(笑)に恐慄いたり、エルフ達の村を作る様子をみていたり、その様子から俺がただの人間では無いのがわかった、という事らしい。
そして、娘に対しての態度もみて、大賢者、いや創造神の化身だと悟ったんだそうだ。
大賢者通り越して神様になっちゃった。わぁお。
「このような事をお願いするのは、烏滸がましいのですが、我ら一族を貴方の遣いとして傍に置いてくれないでしょうか」
「遣い、とはらどういうことですか? 俺神様じゃないですし、隣人同士適当に争いなくやって行けたらいいだけなんですけど……」
態度の軟化通り越して逆にガチガチになってしまったこの状況、どうしようか。
「そんな! 私が大賢者様にしてしまった数々の非礼、この身をもって償いたい。私の余生をかけて貴方にお仕えしたいのです。私の妻も一族も同意、我々の総意です」
「うーん、なら従業員という形はどうですか? 遣える、という事ではないですが、ちょうど狼達だけだと銭湯の維持に限界が来ていたんですよね」
「ジューギョウイン、ですか」
「はい。要するに、今狼たちが掃除とか来客対応やってくれているのをお任せしたい、という事です。まぁ全然お客様来ませんので、主に掃除とかあとは出来れば皆のご飯も作ってくれると助かります。ああ、もちろん報酬は払いますし、休みも取ってもらいます。れ私の元で働きませんか?」
「大賢者イツシマ様の元で働けるのは大変光栄です。喜んで承ります」
「イツシマ様に遣える事が出来る!」
「私、イツシマ様の巫女になる!」
「これから一族の末裔までこのご恩を忘れませんぞ」
「やった、これでお近付きになれるかも」
「私、イツシマ様のお嫁さんになる!」
「エル様には負けない」
「ああー神様天女様イツシマ様〜」
ワイワイガヤガヤ、さっきまでの堅苦しい空気はまだ残っているけど、どこか安堵した空気になった。
なんか最後の方変なの聞こえた気がしたけど、気の所為だよな。
そんなこんなで、エルフ一族が従業員として銭湯と隣接する宿で働くようになった。
狼は、と言うと森の巡回の方に回ってもらった。
巡回さえしてくれたら基本自由にしていい、と伝えた所少し残念そうにしていた。
お風呂に入るのは自由、と伝えたら喜んでいたのでお風呂の良さが伝わっているようでなによりだ。
とりあえず、これから働いてもらうにあたって設備も紹介していた方がいいと思うので、何人か案内することにする。
「あれ? 代表は、エルだけ?」
「はい! 大丈夫ですよ? 族長になりましたし、私一人で仕事全て覚えて皆に伝えときます。別にイツシマ様と2人になりたいから族長権限で、とかそういうことは無いですよ? 本当ですよ?」
あっ…(察し)
「わ、わかった。ならとりあえず、銭湯はいつも入っているから知ってるよね。1日1回水を抜いて、洗って欲しいんだ。掃除用具はそこにあるから」
「はい!」
「じゃあ次はこのボイラーね。これでお湯を沸かして、こっちのユニットで効能を付与してる。中身はこうなってて……」
「こ、これって魔石ですか!?」
「うん? そうだけど」
「私、こんな大きい魔石見たことありません! ちょっと溢れる魔力が強くて直視出来ないです」
あれ? そんな大きいものなのか、これ。
「ちなみに、エルが知ってる魔石ってどのくらいの大きさなの?」
エルが辛そうにしていたので、ユニットの蓋を閉じながら聞いた。
「ええっと、このくらいです」
エルは指で輪を作って見せてくれた。
OKの指の形くらいなので直径20~25mmくらいかな?
ピンポン玉よりは小さいな。
「違います違います! このくらいです!」
指で作った輪っかだと思ってたら、違うと言われた。
どうやら人差し指と親指の間に少しだけ空いた隙間のことらしい。
あれ? 5mmないんじゃね……?




