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大賢者の番頭  作者: 柚希 翠
22/38

22桶目

「これは一体どういうことだ」


 目の前のイケメンエルフは憤っていた。

 なぜかって?


 俺が朝ご飯を食堂、と言っても個人用の個室で食べていると狼達に引きずられてきた。

 なにか怒っていたので、とりあえず座ってもらってついでにユキを呼びに行ってもらった。


「わが一族に掛けた薄汚い幻術を解け」


 曰く、どうやら嫌いな人間に助けれら、仲間も人間、要するに俺の味方うするものだから、どんな汚い手口を使ったのか、と朝から暴れまわっていたらしい。

 最近狼の言いたいことが分かってきた、と思う。


「そうは言っても掛けてないものは掛けてないんですが」


「ならなぜ薄汚い人間のみかたなぞする」


 嫌いなのは大いにわかったのだが、全員何が何でも嫌いとか本気で思っているのだろうか。

 いや、その一族の教えが人嫌いになるように仕向けていたなら、価値観として刷り込まれているので嫌いになるのもわかるのだが、ほかの方たちはどうやら俺のことはそこまで嫌いではないらしい。


 だが、目のまえのこの男は何が何でも人間が嫌いらしい、憎しみすら感じる。


「幻術の話はとりあえず平行線なので、客観的に術がかけられている証拠を出してください。話はそこからお願いします」


 とりあえず、掛けてないものは掛けていないので、疑義をかけてきている側に立証してもらうことにした。


「ここからは嫌なら答えなくてもいいのですが、なぜそこまで人間を嫌うのですか。ひとまず俺は何もしていませんし、銭湯のお湯でケガも治ったでしょう」


「まずそこがおかしいのだ。なぜただのお湯で皆のけがが治るのだ。ポーションでもあるまいし」


「まぁそのポーションみたいな効果をお湯に持たせてあるのであながち間違いでもないんですがね」


「馬鹿にするのもいい加減にしろ! ポーションはそもそも存在しないのを知らぬとでも思ったのか!」


 え? ポーションって存在しないの?


「貴様ら人間がッ……、いや、貴様なんぞに話しても仕方ないか。我らが人間を嫌う理由は、我らの現状と関係している」


「と、言うと?」



「ッ!! ……貴様ら人間に我らの里が滅ぼされた。術の件に関してはもう一度確認する。事実一族のけがが治っていることは確かだった。その点は不本意ではあるが助かギュルルルル」


 ヒートアップしていたハイエルフのイケメンから盛大におなかが鳴った。


「とりあえず皆さんで朝食を食べてきてください。もちろん毒など入っていません。気になるならお付きの狼にでも食わせて毒見させてもらってもいいですよ」


「薄汚い人間の作った朝飯などギュルルルル」


「まぁまぁとりあえず」


「ぐっ……背に腹は代えられまい……」


「狼たちに案内させますから、ついていってください」


 狼達に食堂に連れて行ってもらう。


 腹が減って、冷静になったであろうイケメンエルフは、俺の腰の辺りをチラチラ確認しながら去っていった。

 腰あたり見られてたけど、まさか。

 いや、ないか。


 出ていく間際にユキが駆け込んできた。


「主さま、今からあの無礼な者を殺してきてもいいですか。主さまが善意で助けてくれたのに、それを踏みにじるようなあの態度、許すことができません」


 どうやら


「まぁまぁ、あの人も色々あったんじゃない?」


「主さまは優しすぎます」


「まぁ、俺はいいからさ。昨日気を失ってたらしいし、ご飯の後この施設の案内でもしてあげて」


「主さまがそう仰るなら案内してまいります」




「あ、あの、すいません」


 ユキが出て行ってからしばらくすると16か17歳くらいのエルフの少女がこちらを伺っていた。


「何かあったのか?」


「いえ、助けてくださったお礼をしに参りました」


 ああ、そういうことか。


「別にお礼なんていいのに」


「いえ、そういうわけにもいきません。私も昨日は大怪我をして、もう治らないだろうと思っていました。私の母も重傷で、先は長くないだろうと……。ですが、昨日あの聖水に助けられました。本当にありがとうございました」


「聖水って大げさな」


「私たちの中にはケガだけでなく、毒を受けて苦しんでいたものもいました。ポーションだ、というものもいましたがポーションは毒には効きません。なので聖水だと思ったのですが違ったのですか」


「あれはお湯にちょっと効能を持たせたもので、別に薬とか入ってないよ」


「えっ! お湯に効果を持たせるなど聞いたことがないのですが、それは一体どういう仕組みなんでしょうか」


「んー、原理は俺にもよくわからないんだが、何となくできるかなぁと思ったらできた、的な?」


「ちょっと、何言ってるかわかりません」


「ですよねー、俺もわかんないや」


「えぇ……」


 ジト目で見られた。


「とりあえず気にしないでいいから。人間に村を責められたそうだけど、俺のことは何とも思わないのか?」


「え? だって私たちを助けてくださったじゃないですか。なぜ命の恩人にそんな真似ができるんですか!」


 怒られた。


「それに、この施設、見たことのない様式で見たこともない大きさでびっくりしました。あのセントウというのですか? 全身の疲れがほぐれて、上がってからも体がホカホカでとても気持ちがよかったんです。ここのご飯もとてもおいしいし、最初怖かったんですが狼さんたちもとてもやさしくて、モフモフしてましたし、あれは本当に、ウヘヘ……はっ!と、とりあえず私たち本当に感謝しているんです」


「わかったわかった、袖振り合うも他生の縁ともいうし、しばらくゆっくりしていくといいよ。ほかのみんなにも伝えてきてくれると助かる。あ、ついでに族長だっけ? あの人も説得してくれると助かるんだけど……」


「っ!! 族長ここに既に来られたんですか。本当に申し訳ありません。なにを言われたのかはわかりませんがきっと失礼なこと言ったんですよね……、ああぁほんと申し訳ございません。」


「いいよいいよ、族長さんも一族のこと思ってでしょ」


「はい……」


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