21桶目
なにやら外が騒がしい。
狼の唸る音や、走り回る足音。
人の話し声のようなものも聞こえる。
その中には小さな悲鳴や、息を飲む雰囲気も伝わってきた。
只事ではないことが起きているみたいだ。
因みに俺は今起きた。
バリバリの夜中だ。
『主さま、起きましたか』
「お、ユキか。何があった」
『お騒がせして申し訳ございません。来客のようで、警戒に当たっていた者達が騒いでいるようです』
「こんな時間に来客?」
『はい。大変失礼な奴らです。なので追い返そうかと思っている次第です』
「追い返すって、いやいやちょっとまってて。今から行くから」
「グルルルルルル」
急いで門のところに向かうと、数匹の狼と対峙している20人ほどの人影が見えた。
松明を焚いているが、こちらからはシルエットしか分からない。
「おい、やめろ。もういいぞ」
「グルル」
狼たちは一先ず威嚇を辞めた。
警戒はまだしているようだが、先程みたく殺気丸出しはない。
「こんな夜遅くにどうされました?」
「っ!!」
集団から息を飲む雰囲気が伝わってきた。
「話が、分かるのか」
「とりあえず威嚇は辞めさせたんですけど、なにか御用でしょうか」
「そなたがここの主人か?」
「えぇ、まあ」
「種族は、どこの種族だ。この森は銀狼フェンリル様が収めていると聞いたのだが、そなたは代理か」
「うーん、代理ではないです。種族は、人間ってことでいいんですかね」
アリアも種族は龍だとか言ってたから多分そういう事だろう。
「はっ、人間だと? 何故そんな薄汚い種族がここにいる」
集団の先頭で話していた男が急に剣呑な雰囲気を醸し出した。
いや、集団全体からだろうか。
言葉にどこか軽蔑するような、怨みと言うような色々な負の雰囲気が伝わってきた。
俺、なんかしたかな?
「俺何かしました?」
「なっ!! この森の王はお前みたいな物が住んでいるのは知っているのか? いや、お前みたいな薄汚い種族が許可を得れる訳がないだろう。森の王は何処にいる、貴様を突き出して喰い殺して貰おうじゃないか」
なんかめっちゃ物騒なこと言ってるよこの人、やばくね?
「いや、その森の王は俺なのだが」
「はっ!! 貴様いい加減にしろ、森の王の名を騙るとは畏れ多い、この俺が森の王に変わって貴様を処刑してやるわ!」
ザッ、と集団の中から数人が男の横に並び立ち、剣らしきものを構えた。
所で、いつもだったら飛びかかって居そうなユキは、と思ったら後ろから肩を叩かれた。
ほう、人化したユキだ。
額には脂汗、手にはしまってあったはずの聖剣(仮)が持たれている。
「主さま、これを。我らはここで引きます」
苦しそうにユキはそう伝えると狼を引いて下がって行った。
また戦闘か。
でも今回こそマジで殺されるんじゃね?
「貴様を森の王に代わってこれから処刑する」
うーん、これは何かしないと本格的に殺されるな。
「とりあえず剣だけ抜いてもいいか」
「はっ、今から自分が殺されようとしている時にわざわざ確認とは呑気なもんだな。いいだろう、愚かな人間よ。さぁ、剣をぬけ」
「ならお言葉に甘えて」
シャキーン、と。
「「「なっ!?!?」」」
「貴様、なんだその剣はっ」
「作りました」
「嘘つけ! 貴様のような薄汚い種族風情がそんなものを生み出せるわけがないだろ! 得意の幻術とかのハッタリだな! 死ねぇぇぇ」
うわっ!飛びかかってきた!!
「主さま!!」
咄嗟に剣を構え、
「遅いわ! その薄汚い剣事叩ききってくれるわっ!」
パキンッ……カランカラン……
俺の目の前にはただただ驚いた顔の耳の長い、金髪ロングのイケメンが居た。
剣は確かに受け止めた、が相手の剣がそのまま切れて下に転がっている。
えっと、俺の剣で相手の剣が切れた、ってことでいいのかな?
切断面見る感じだと折れたのとは違うみたいだし。
「こ、これは……」
まだ固まってるや。
「よっ」
俺は剣を振りかぶって切りつける振りをした。
「うわぁぁぁっ」
男は顔面蒼白になり、そのまま腰を抜かしてひっくり返ってしまった。
白目を剥いてガクガク震え、気絶しているようだ。
「ぞ、族長っ!!」
族長だったのか。
だんだん目が慣れてきて後ろにいた集団も見えるようになってきたが、みんなかなり酷い怪我をしている。
そして俺の方を見て恐慌状態に陥っていた。
何故に、というかデジャブ。
にしても酷い怪我だ。
傷口に泥もついている。
この世界がどうかは知らないが、早く洗い流して消毒しなければ、感染症を引き起こすかもしれない。
剣を丁度背中がわにある祠に戻すと、ユキを呼び武装解除をさせた。
好戦的だった男達はさほど怪我もしていなかったので、縛らせてもらった。
怪我人は女子供が主なようだ。
男女に分けて浴場に案内する。
湯浴みをさせて、傷口を洗い流してもらう事にした。
「主さま!」
俺が番頭台で待っていると、ユキが慌てて女湯から出てきた。
どうしたのかと思えば、お風呂のお湯で洗ったら傷口みるみるうちに塞がっていったので、驚いて出てきたらしい。
そう言えば、人工温泉にすべく効能を足したんだっけ。
ユキ曰く、まるでハイポーションのようだ、だそうな。
やっぱりファンタジー的な世界。
ポーションとかあるのね。
服は風呂上がり用の浴衣を用意していたので、それを着てもらう。
お風呂から上がったら次は水分補給、その後軽食を食べて宿泊施設の大広間がある部屋で休んでもらう事にする。
一応武装解除はしているとはいえ、何があるか分からないので狼数匹に見張っていてもらう事にした。
報酬はローストビーフという事で手を打ってもらった。




