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大賢者の番頭  作者: 柚希 翠
20/38

20桶目

 あの慌ただしい魔王様もといアリアが帰ってから数日が経った頃、森の入口まで使者がやってきた。


 番頭台に座ってる俺に、早馬ならぬ早狼が伝えてくれた。


 どうやら衣服を持ってきてくれたようだ。

 それと牛乳と、乳牛を3頭連れてきてくれたらしい。

 その分の代金を引いた代金も持ってきてくれたようだが、貴金属があまりにも高価なためほとんど目減りはしていないようだった。


 にしても、豪華な馬車5台でくるとか、森の入口で渡されても困るから使者共に入ってもらおう。


 知らない狼に襲われても仕方ないから、何匹か護衛兼水先案内として付いていてもらうか。


「というわけでよろしく」


「ガウッ」



 それから1日程して、使節団が到着した。

 取引はアリアとだけすると言ったから今回は取引無しかな?

 どうしよう、とりあえずお風呂はいってご飯食べてもらうか。


「ユキ、案内とお世話お願いしてもいいか」


『お任せ下さい』


 ユキは人の姿になると、案内に向かっていった。

 服は以前アリアを送った時、別れ際に貰ったらしい。



「貴方様が新しい森の王であられますか。何卒、これからもよろしくお願い申しあげます」


 使節団の団長が、恭しく挨拶をしてきた。

 顔を見るとかなり疲労の色が見える。


「遠路はるばるご苦労さまです。お疲れのようですが、すこし休まれてはどうですか」


「いえいえ、そんな滅相もない。我々はすぐ出立致しますので、お気遣い……」


「ユキ」


「はい」


「何方ですか?このお綺麗な女性は」


「我だ。フェンリルだ、久しいな」


「っ!!フェンリル様!?」


 前王の登場そして、人の姿みてよろけるくらいと驚いていた。


 前王からの案内とあっては無碍にする事も出来ず、なすがままに案内されて行った。





「いやあ、ここはいい所ですな。旅の疲れも吹き飛びました。オフロ、と言うのですね。フロアガリに飲む牛の乳もとても美味しくて驚きました」


 そうホクホクした顔で団長がお礼を言ってきた。


 良かった良かった。


 そのまま宿泊施設の方に案内した。


 次の朝、すっかり疲れの取れた顔をした使節団の面々が挨拶をしに来た。


 どうやら、定期的に使節団を派遣する為の許可が欲しいらしい。

 と言うより、また来たいから口実が欲しい、といった所か。


 俺としても、是非ともリラックスして欲しいのでまた来て欲しい。

 まぁ適当に理由を付けてきてくれて構わない、とだけ伝えたら、とても感謝された。


 使節団は名残惜しそうにしながら、帰って行った。



 さて、これからどうしようか。

 銭湯施設と宿泊施設を作ったはいいけど、泊まりに来る人が居ない。


 暇だし、銭湯から温泉(人工)に改造してやろうか。

 何かこう、魔石でも生み出してそれを埋め込んだら効能とか出ないかな?


 魔石魔石っと……あった。


 創造魔法の、マテリアル一覧を探したら見つけてしまった。


 ほうほう、魔石にも色々あるんだな。

 俺の中で、魔石と言うと、魔力を蓄える石的なイメージだが、説明欄を見ると『魔石(HP回復効果付与)』とか書いてある。他にも、MP回復や状態異常回復などもある。

 正直この世界の魔法に関して、アリアが説明してくれた以上の知識がないのでよく分からない。


 この、効果が付与された魔石をどんな使い方するのかも分からない。


「とりあえずひとつ作ってみるか。魔石、生成っと」


 なになに?

 大きさを選ぶのか。

 最大サイズは1000mm×1000mmか……。

 ちょいデカすぎるな。

 設置しても動かせる程度の大きさがいいから、300mmの大きさにして、効果は魔力回復、っと。


 さて、これを給湯設備の方に組み込みに行きますか。




 できたできた。

 給湯設備の配管の途中に、小さなタンクを設けてその中に外から差し込めるようにした。

 MP回復だけなのもなー、と思った結果最終的に『MP回復』『HP回復』『状態異常回復』の3つの魔石を搭載した。


 銭湯の中も改造して、ちょっとしたスーパー銭湯施設並の湯船にした。


 一応人工温泉の効果を確かめる為に、施設改造をして魔力を使った後、銭湯に入ってみたのだがきっちり回復していて、とりあえずはMP回復の効果は確認できた。


 ふと気がついたらもう外は暗くなっていた。


 やっぱり設計していると時間が飛ぶようにすぎるな。

 ユキにお願いしてご飯準備してもらうかな。


「主さま、お食事の用意が出来ました」


 風呂上がり、食堂の方に向かおうとするとユキが既に準備をして待っていてくれた。


「俺何も言ってないけど」


「朝から何も食べていないようでしたので、腕によりを掛けてお食事を用意しました。お口に合うかは分かりませんが……」


 そう言われると食べない訳には行かない。

 どこまでの料理ができるのかは分からないが、とりあえず見た目は美味しそうだ。

 どうやら、以前アリアが来た時に出した料理を真似してくれたみたいだ。


 味は、美味しかった。

 俺が作るより美味しいのでは? と思うほどだ。


「ありがとう、美味しかった。ご馳走様」


「いえ、お口にあったようで良かったです」


 ユキは嬉しそうに、人の姿で見えないが狼の姿なら確実にしっぽが暴れているような雰囲気だ。

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