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大賢者の番頭  作者: 柚希 翠
16/38

16桶目

「私はそんなこの世界が大嫌い」


 魔王様、いや、彼女は俺の目を真っ直ぐ見つめそう言った。

 その言葉には、確かにこの国の国民の命を確かに背負った者の重き言霊が乗っていた気がした。


 彼女の言い分はこうだ。


 人間と魔族仲悪い。


 お互いがお互いに対する感情は、もはや対話不可能なレベルで悪化している。


 俺人間最強且つ魔族領の中でもトップクラスの権力者になってしまった

 形式上だけでもその俺が魔王の配下に入れば、膠着した現状に何らかの変化を生み出せるはず。


 無理だとしても、戦線を推し進め奪われた領土は取り戻せるらしい。


 ただ、最後のそれには俺の戦場へ、なんらかの形での介入は必須。


 と言うとこらしい。


 いやはや、なかなかに迷惑な話だ。

 ただ、今の俺の立場はよく理解できた。

 ちなみに、配下に入ったからと言ってとくに何も要求してくるつもりは無いらしい。


 まずは銀狼の森の王が人間、という事を利用して魔族領内の人間へのイメージアップを図るらしい。


 人族と魔族の和平、共存。その大きな夢こそ彼女が魔王たらしめるおおきな原動力となっているらしい。



「なるほどなるほど」


「ならっ!」


「だが断る」


「へ?」


「断ると言ったんだ」


「なんでなのよ!この流れは感動して協力するところじゃないの!?」


「まぁ聞け」


「なによ」


「君の案は甘すぎる。人の怨嗟の根深さを知らないだろ、相手を憎むことがもはやその人のその社会の常識となっているんじゃないか? 魔族も人族も」


「それは……」


「まぁ俺は政治に詳しくないからな、その先は知らん」


「えぇ……」


 だが、簡単に和平は出来ないだろう、と俺は踏んでいる。

 ここまで長年敵対しているとなるともはやその構造は社会システムに組み込まれ、敵対する事で利を得てる層は確実に存在する。


 その既得権益を押し退けて共存への道を示すとすれば、どちらかが他方を圧倒する何かを持ち得ない限りないだろう。


 話し合いで敵対勢力が和平するなぞ、ありえない話なのだ。


 とは言え、俺も内政も外交も分からないし、この森に色々な人に来てもらって銭湯宿の経営もありかなーとか最近思ってたので、やはり魔王側に着いて動く事は無いと思う。


「まあ、俺がここに居ることには変わりないし、治外法権守ってくれるならこの中から出来ることはしよう」


 そう。

 そとにでなければ俺が矢面に立たされることもないだろうし、荒事に巻き込まれる事も無いと思う。


「ヘクチッ」


「大丈夫か?」


「そりゃ履いてないからよって、何言わせるの変態」


「えぇ」


 魔王様、そりゃないぜ。


「とりあえず風呂入りに行くか」


「そうね、お風呂って言うんだっけ?あればいいわね」


「だろ、サウナもいいぞ」


 難しい話は後だ。

 夜中に起こされてしまったことだし、俺もひとっぷろ浴びに行くとするか。


 カポーン


「はぁ〜気持ちいい。おーい、魔王様の方はどうだー?」


「こっちもいい湯加減よ。あと、魔王様とか君とか辞めて。アリアでいいわ」


「そうなのか? ならアリアと呼ぶ事にするよ」


「そ。好きにしなさい」


 俺たちは銭湯の壁越しに話をしていた。

 この銭湯、浴室が上で繋がっており、女湯と男湯で話が出来るようになっている。

 ま、昔ながらのよくあるやつだな。


 心無しかアリアの態度が軟化したいる気がする。

 何かしたっけ?

 話聞いただけで、なんなら提案断ったからな。


 とは言え、貴金属とかは現金化する必要があるから、どうするかなぁ。


「なあ、アリア」


「なによ」


「この国で金銀白金の価値はどうなもんなんだ?」


「そんなことも知らないの?ったく、しょうがないわね」


 俺はアリアから金銀白金について色々教えてもらった。


 どうやらこの国で貴金属はほとんど取れないらしく、その価値はかなり高いようだ。

 魔石はかなり採掘出来るのだが、それを魔道具に加工する際に貴金属が必要なのだそうだ。

 なので、少量取れる鉱山から細々と供給を続けているらしい。


「その貴金属なんだが、そこそこの量買い取って欲しいんだ」


「そこそこって、どのくらいなのよ」


「んー、今入ってる浴槽いっぱい分くらい?」


「なんの冗談よ!そんな量取れるわけないでしょ!」


「まぁまぁ、俺創造魔法で作り出しただけだ」


「創造魔法……?」

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