15桶目
「わらわは人間では無い。ドラゴンじゃ」
「まじか」
「まさか魔王であるわらわの正体を知らぬ奴がこの世にいるとはな」
「でも凄いな、ドラゴンなのに化けたらこんな可愛い女の子だなんて」
「だ、だからさっきからなんなのじゃ! 可愛い可愛いって、人間ならそもそも我ら魔族が憎いはずじゃないのか?恐ろしくないのか?醜くないのか?」
「え? そりゃ怖いけど別にだからなんだって話じゃないのか?」
ファンタジーなんだし。
「そうなのか? 」
何だかコンプレックスでもあるのかな。
「ただ、そうだな。俺の正体、と言ったらなんなんだけど、人間は人間正真正銘人間だ。でもちょっとだけ神様と繋がりがあった、という感じかな」
「なっ!神!?だから聖剣を……なるほど、貴方」
また雰囲気が変わった。
前のが全開魔王モードと言うなら、これはあのツンケンした雰囲気と魔王の雰囲気が半々モード?
「妾の配下になるのじゃ」
「え?」
どういう流れでこうなった。のじゃキャラに戻ってるし。
「突然言われて困惑してるのはわかるわ。とりあえず説明するから聞いてくれるかしら」
「え、ええ」
「まず最初に、口調がコロコロ変わって驚いているかしら? ごめんなさいね、あののじゃーって話し方どうも苦手で、でも公的な場ではあの話し方じゃないと魔王っぽくないでしょ。というわけで今は私的な場、ここからの事は一先ずオフレコで頼むわ」
「わ、分かりました」
「それと、そのビビり倒した敬語は辞めてちょうだい。さっきまでタメ口だったのに。貴方の方が圧倒的に強いのだから、そんな必要ないわ。力こそ全てよ」
「わかった」
「そう、それでいいの。貴方、自分の立場があまりよく分かっていないようだから失礼ながら最初に教えておくわ。貴方は強い。それもあのフェンリルを戦わずして従える程に」
「それはどう言うことだ」
「リルはね、さっきも言ったけどこの森の王なのよ。いえ、王だったの。この我がドラコニア魔法王国の中にあるんだけれども、リルや、先代の森の王が収めてきたこの森だけは治外法権のほぼ独立国扱いなの」
「え、そうなのか」
「ええ。そして、その国の王に貴方はなった」
「なっちゃったのか」
「なにそれ、もっと責任感持ちなさい。そしてもうひとつ」
もうひとつ?
「貴方は、この世界の人族の中で恐らく1番強い」
「それがなんの関係あるんだ。それに俺には戦闘は出来ないぞ」
銭湯は作れて番頭だけど。
「そうなの? それであの威圧感? 貴方どんだけなのよ。閑話休題、魔王国と人族の国はいま戦争中なの。これは知ってた?」
「知らない」
まじか。全然平和な世界じゃなかった。
なんなら、俺人間だし敵地のど真ん中ってこと?
「貴方、本当に何者なの」
「守秘義務、という事でいいか」
「話すつもりがないなら、今の私に話させるだけの力がないのは認めるし、諦めるわ」
なんだ、諦めるのか。
もっと突っ込まれるのかと思った。
「ここまで話したら何となくわかるかしら。力では私より上、治外法権独立自治区の森の王で人類最強、その貴方が私の配下になることの重大さが」
「それは逆にヤバいのでは? 今戦争中なんだろ?」
「戦争中と言っても、元々我が国で産出する魔石の権利を人間側の貴族だかなんだか知らない奴らが自分のものにしようと仕掛けてきたのが始まりなの。でもね戦争と言うのはね、きっかけさえあれば後はどちらかが滅ぶまで、戦い続けるしかないのよ。そして、それが今から500年前の話。それから魔族と人族は戦いの負の連鎖に巻き込まれていったわ。延々と続く下り坂を転がり落ちるように、恨みの連鎖はもう誰にも止められない所まで来たの」
なんだか色々語られたが、要件を得ない。
ますます俺が配下になるメリットが感じられない。
俺は何よりものんびりと異世界ライフを送るつもりだったのに、国だの戦争だの言われても、正直よく分からない。
「それと俺が配下になるってのはなんの関係があるんだ」




