13桶目
思い立ったら吉日。
おもてなしをするために、腕によりをかけて料理を作る。
この森、よくよく見れば結構ハーブとか生えてるんだよな。
ユキたちがとってきてくれた食材を香草焼きにしたり、にんにくに似た植物で臭いを消したスープを作ったり、今までの切って焼いただけのものよりも頑張った。
魔王様がどんな場所に住んでいたのかわからないので、和風の客間はやめて、宮殿風に作った場所で食事の準備をしていく。
泊まる場合も考え、洋室、これも王宮風の内装の場所にする。
俺の使ってるマットレスを豪華にしたやつを敷いておく。
セントラルヒーティングなので、室温は快適なはずだ。
掛け布団もモコモコふわふわの宮廷羽毛布団とやらがあったので、部屋に合わせてそれを作ってセットしてある。ちなみにこの羽毛布団、どうやらレアらしく、作った時魔力不足になりかけた。
魔王様の服は、狼に洗濯してもらって今乾燥中だ。
最近狼が家事を手伝ってくれるようになったので、非常に助かっている。
『主さまよ』
にしてもユキが人間にもなれるだなんて。
しかもあんな美少女だったなんて、これなんてファンタジー?
『主さま!』
でも魔王様もなかなか、ちょっとツンツンしてるけど結構かわいかったよな。
出るとこ出てないぺったんこボディでしかもお漏らしキャラって盛りすぎな気がするけど。
『あるじさまあああああああ!!!』
「うわっ!!急にでかい声出すなよ」
『いえ、何回も呼びました。ボーっとしてるほうが悪いのです』
「すまんすまん、ってあれ?念話の声が?てか元の姿に戻ったのか」
『お風呂でアリアに怒られまして……、いえその話はいいのです。声はなぜでしょう?』
なぜでしょう?と聞かれても、声が人化した時の女の子の声のまま念話が聞こえる。
以前は野太いイケボだったのだが、話し方も女性らしくなっているし、こっちが聞きたいわ。
「ところでその、ま、魔王様はどういう要件で」
「どうもこうも、このユキが近くの村々を襲っていると報告があったから、盟約に従ったまでじゃ」
「え?襲ったの?」
『断じて襲ってません。ただ、森で取れた獲物を持って物々交換しに行っただけです。何故か皆さん私を見た途端逃げ出すもので、慌てて追いかけたんですけど間に合わず……』
「ユキ、お前それって」
「な? 誰がなんと言おうと襲っておるじゃろ?」
『襲ってません!』
まじかよ。勘違いとはいえ状況的には森で取れた獲物の延長線上で村の牛を狙ったと言われても仕方ないじゃないか。
しかも、魔王様は軍を動かすくらい重く見ている。
盟約がどうのと言っていたのだが、それも関係しているのだろうか。
これは非常にまずい。
どうにかして魔王様側、要するに国と事を構えるのを避けなければ。
「魔王様、この度は誠に申し訳ございませんでした。主である私が責任を取りますので、何卒ユキには恩赦をお与えください」
『主さま……』
ユキもさっきとは打って変わってしょげ返っている。
「いや、まあその件は村人の勘違いだったようじゃし? 主とやらはこの森の王であろう? それがここまで頭を下げているんじゃから、このまま追求するのもな」
「ありがたきお言葉感謝致します」
俺は片膝を着いて、頭を垂れた。
『主さま、大変申し訳ございません。私のためにそんなに……』
「頭を上げい。魔王アリア・ドラコニア・アクアライトの名のもとに銀狼の森の王の謝罪を受け入れる。どうじゃ、これで良いか?」
魔王様が名を名乗ったとき、周りの雰囲気がゾッと変わった。背筋の凍るような冷え冷えとしたプレッシャーが魔王様から溢れ出た気がした。
だが、それも一瞬したら収まり先程のツンケンした雰囲気の少女に戻っていた。
周りの狼共は全て伏せの姿勢になっていた。




