11桶目
朝ごはんを食べていると、ユキが走って外に出ていくのが見えた。
とりあえず番頭(仮)として、今日から銭湯の番をする事にした。
と言っても、狼共しか入らないのだけど。
狼共にはオスメスで別れてもらうことにした。
理由?
何となくです。
掃除当番も決めたけど、やっぱり狼なのでできることは少ない。
なので、施設のメンテナンスとか掃除とか、タオルとか諸々の作業は結構あってやる事が尽きない。
その分暇も紛らわせて良いのだが、何よりやはり仕事があると言うことは何となく落ち着くのは社畜の性だろうか。
なんとなく敷地が有り余っていたので、宿泊施設を建てることにした。
銭湯の横に、先頭から直接入れるように廊下でつなげてみた。
雰囲気は日本の高級旅館風だ。
部屋は、和室と洋室完備で各部屋にもトイレとお風呂つけた。
冷暖房は地下水と銭湯のボイラーで沸かした温水を各部屋に引き込むセントラルヒーティング方式にした。
エアコンがそもそも無いという理由。
どうやら家電割と何でもあるけど先にも述べたように、自作できるものはない。
あるなしの基準がいまいちわからないが、ないものはないのでしょうがない。
なかなか上等なものができたと自負している。
ただやっぱりどうして布は皆無なので布団がない。
これは困った。
近々森を抜けて町にでも買い出しに行きたいと思う。
初端に作った金銀プラチナのインゴットもあるので、市場を刺激しない程度に少しずつこの世界の通貨に換金していくことも忘れずに。
ただ、この世界での貴金属の価値はわからないので、やっぱり一度市場に調査に行きたいしだいだ。
そうこうしてるうちに、一週間が過ぎた。
ユキはまだ戻らない。
ただ、元々ユキが一緒に居たいと言っていただけなので、寂しくなるが戻ってこなくても文句は言えまい。
また温泉に入りに来た時は歓迎してやろう。
狼共は毎日入れ代わり立ち代わり来ているようだし、そのうち来るだろうというのが俺の見立てだ。
次の日の朝、ずいぶんと外が騒がしくて目が覚めた。
『主よ』
ユキからの念話が飛んできた。
『不届き者をとらえてきたのでちょっと来てほしい。あの例の剣も持ってきてくれたら助かる。今は門のところにいる』
何やら不穏なことを言っている。
俺は急いで防具とロングソードを帯剣してユキのところに向かった。
「にゃあああ!もう離すのじゃぁ!」
そこにはユキの口にくわえられた、よだれでベトベトの燃えるような赤髪ツインテ灼眼のロリっ子が居た。
服装は黒を基調に金の差し色が入ったドレスを着てるが、それもユキのよだれでベトベトだ。
ファンタジーでは咥えられても奇麗なままだったりするが、現実はそうでもないらしい。
『主、こいつがこの森に軍勢を送ろうとしていたので捕えて参りました』
「こいつとはなんじゃ! そもそもお前がその姿で農村に現れては牛を要求するからわらわに話が来たんじゃ!悪いのはお前なんじゃ!」
『我が主に矛を向けた罪、万死に値す。さあ主、その剣で一思いに』
「いやいやいや、ちょっと待って話が見えないから」
「なにぃ?この平凡面の服のセンスダサダサの平凡男がお前の主だと?」
『何か文句でも?』
「平凡面のダサ男で悪かったな」
さすがにイラっとしたので剣を抜くだけ抜いてみた。
『グッ』
「にゃっ!!おおおお、お前その剣は聖剣?!わらわににゃにゃにを」
ジョロロ……
剣を抜いたとたん空気が変わった。
ユキは臨戦態勢に、口にくわえられたロリっこは顔面蒼白、号泣に加え失神失禁のオンパレード。
せっかくのいいドレスがもう滅茶苦茶だし、最後のほう涙声でなんて言ってたのかわからなかった。
てかこの剣そんなやばいやつなのか?
作ったときはこんな雰囲気醸してなかったのに、いまは俺でもわかるくらいやばい感じだぞ。
なんというか、神々しいを通り越して禍々しいような何とも言えない雰囲気に。
これ、どうすんの。




