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大賢者の番頭  作者: 柚希 翠
10/38

10桶目

「おーい、湯船に入る前にちゃんと体洗えよー」


「「「わふっ!!」」」


『分かった』


 ユキは大きいから入れないと思ったけど、普通サイズまで小さくなれるのには驚いた。


 どうやら普通の狼のでかいヤツと言うよりかは、フェンリルとかそんな感じの長寿命の魔狼的な種族らしい。


 そして、群れのボスかと思ってたらどうやらこの森の王をやっていたのだとか。


 それが謙って俺の下に着くというのだから未だに信じられない思い出いっぱいだ。



 あの聖剣チックなロングソードなのだが、武器庫にしまうやいなやユキにめっちゃ感謝された。


 狩りは我がやるので頼むからあのロングソードは持ち出さないでくれ、とお願いされのでそのまましまってある。


 入口の聖剣チック1号は重くて動かせないし、ユキも何故だか触れないらしいので、バス停みたいな小さな小屋を建てた。


 ますます見世物感が強くなったけど、元々オブジェのつもりだったのでそれはそれでありか。


 服は脱いで洗濯している。


 タオルは多めに用意した。ライブラリにタオルが登録してあって助かった。


『それで主よ、ちょっとお願いがあるんですが』


「うん?」


『我の身体を洗って欲しいのです』


「おう、いいよ」


『ありがとうございます』


 そう言っていそいそと俺の前にきたユキをわしゃわしゃと洗う。


 銀狼のもふもふの毛が濡れて泡立って面白いことになっている。


『あぁこれはこれは』


 ユキは洗ってもらいながらうっとりしている。

 ご満悦のようだ。

 食料とか運んできてもらってるし、労っとくか。


 その様子を狼共がチラチラ見てくる。


「お前達も洗ってやろうか?」


「「!!」」


 こっちを見ていた狼共に衝撃が走る。


「グルルル」


 ユキが何故か威嚇しだした。


 あ、しゅんとして戻って行った。


「ユキ、ダメだったか?」


『主は我だけ』


「そうか、すまない」


『主が気にすることじゃない』


 そういやようやく変な敬語抜けてきたかな。




『おああああああああああ』


 上がったあとのユキは扇風機の前で口を開けて固まっていた。いや、楽しんでいるという方が正しいか。


 舌がベロンと口の横からだらしなく垂れ下がり、強風にした扇風機の風で「ビロロロロ」と色々撒き散らしながらたなびいている。


 やめろって。


『にしても主、お風呂があんなに気持ちいいものだとは知らなかった』


「だろ? 風呂は命の洗濯なんだよ」


『それはよく分からないが、我は毎日はいる事にするぞ』


「そうか、ならこれから毎日銭湯稼働だな」


『おお、それは助かる』


「入る時間もまちまちだろうから、一日中動かしとくよ。入浴時のルールや設備の使い方はさっき説明した通りだから、それさえ守ってくれるならならいつでも入ってくれ」


『心遣い感謝する』


 とは言え、なかなかにやることも無くなって暇なので番頭の席に居ることにしようかな。


 番頭ということは、お風呂にも入り放題というわけで、もうね異世界隠居と言っても過言ではないな。


 死んで転生した時はどうなるかと思ったけど、こりゃなかなかゆるりと過ごせそうだ。

 たまには冒険もいいか、とも思うが今はとりあえずのんびりして過ごそうと思う。



「風呂上がりの牛乳ほしいなぁ」


『風呂上がりに乳を飲むのか?』


「水じゃ味気ないし、銭湯入ったら瓶の牛乳って相場が決まってるんだよ」


『その相場は知らないが、主が望むなら何とかしてみよう。その牛乳は牛の乳という事で間違いないのか?』


「ああ、普通の牛の乳だよ」


『承った』


 そう言うとユキはまた扇風機の前に戻って行った。


 気に入りすぎだろ、そこ。

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