73、新たなる息吹 (1973年某月某日~1974年某月某日)0歳~1歳頃
1973年(昭和48年)某月某日、お母様から新たな息吹が芽生えた。
僕の名前は『太郎』、鏡原太郎6歳、長男だ。弟に『次郎』3歳がいる。
産まれたのは元気な女の子だ。3番目に産まれて女の子なので、『蝶よ花よ』と言う事で『三花』と名付けられた。
しばらくすると男の子が産まれてきた。お母様は赤ん坊2人の顔を見るなりにっこりとして付き添いのお父様、おじい様おばあ様に対し言った。
「男の子は『雄蔵』と名付けます。この子はその様に運命付けられました。」
「一体なぜじゃ?」
お母様が宣言するとおじい様が問いただした。
「お告げが有りました。この2人は双子の様で双子では無い。言わば許嫁の関係で厳密には血の繋がりは無いので将来必ず2人を結婚させる様にと。ちなみに女の子の方は、太郎、次郎と血が繋がっています。
でも男の子(雄蔵)は仲間外れには絶対するな。不幸にさせるなと言われました。」
「そうかい・・・。その様な事が・・・。」
「この子達は運命付けられたんじゃな。」
「はい。御父様。」
翌日以降に僕は2人とお母様に面会した。
どこからどう見ても双子の様で全くの瓜二つの顔立ち、背格好をしていた。
まるで同一人物・・・僕はその様な印象を持った。
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お母様が退院して2人の赤ん坊と自宅に帰ってきた。
思えばこの頃から三花と雄蔵の2人は仲が良く、赤子ながらにもお互いに手を触り合いじゃれ合っているように様に見える。
気のせいだろうか・・・?お互いに意思疎通してる気がする。
お父様やおじい様、おばあ様に話したら何かの見間違いだと優しく諭された。
2人はただ隣同士ですやすやと眠りについている。
時々夜泣きする事もあり夜中に起こされてしまい睡眠不足な日もあった。
僕はもう6歳なので幼稚園の年長クラス。弟の次郎も3歳なのでまだ未就学児だった。
家には色々なお客様が来られ三花と雄蔵の顔を見てはお母様をねぎらったりしている。
難しい話をしているので僕には話の内容が良くわからない。
多分この子達の将来に関する話だと言うのはおぼろげに理解した様な気がする。
何にせよ周りの2人に対する期待が大きいのは僕にでもわかる。
その期待に答えてくれよ・・・。でも押しつぶされないでおくれ・・・。
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≪・・・・ん。・・・さん。・・蔵さん。≫
『何だ?どこからともなく声が聴こえる気がするとても懐かしい声だ。』
≪雄蔵さん。ねえ、雄蔵さん。起きてる?≫
『ああ、この声は三花ちゃんの物だ。』
意識が覚醒して来ると共に周りの様子を見ようとしたがまだ周りが見えない。
でもこれは僕の頭の中の会話、つまり念話なので概念として三花ちゃんの姿が見えている。
≪僕はどうしたの?目が見えないのだけど・・・?≫
≪やあ、驚いてる様だね。本来の僕。≫
そこにいるのはかつての僕がいた。
≪驚かしてすまないね。そう、僕はかつての君、鏡原雄蔵さ。≫
『いや・・・懐かしい・・・。』
≪驚くのは後。こちらの三花ちゃんもまだ目覚めきって間もなくだから少しばかり混乱しているんだ。≫
『一体どういう状況なんだろう?状況が知りたい。』
≪そう慌てないで、雄蔵君。君の記憶はどのタイミングで途切れている?≫
『そう、確か僕は三花ちゃんの身体で行動して魂の三花ちゃんと共に生きていた・・・。
でも大学生のある日とあるTV番組の企画で僕の彼氏を作ろうと言う話が出てきてそれが嫌になってとある行動を起こした・・・。』
≪上出来だね。そう。今は1974年(昭和49年)君達が1歳になったばかりだよ。≫
≪と言う事は最悪の事態は避けられたんだね?≫
≪今後もあれ以上の最悪が起きるかもしれないし、起きないかもしれない。でもまた人生をやり直してる。つまり3度目の人生と言う事さ。≫
≪僕は元の雄蔵の身体?三花ちゃんの身体?≫
≪それは三花ちゃんとしての女の子の身体だよ。それに前世での魂の三花ちゃんが憑いている。≫
≪そう言えばこちらの三花ちゃんと言ったけど、どういう意味?≫
≪そうだね。雄蔵として男の子が産まれた。その魂に元の雄蔵つまり今現在解説している僕が憑いている。≫
≪となると、三花ちゃんの身体を持つ僕と僕の身体を持つ三花ちゃんの2人がいるわけなんだね?≫
≪そう言う事になるね。理解が早くて助かるよ。≫
≪ありがとう。≫
≪ちなみに現在の状況は2人は双子の様で双子にあらず。同じ母親の胎内から産まれたとは言え、雄蔵君は厳密には血が繋がっていない。なので許嫁と言う事にして今生に2人は生を受けた。≫
≪つまり?≫
≪雄蔵君と三花ちゃんは君の知識で言うテレパシーみたいな物で会話が出来る。前世で念話していたと思えばイメージが付くはずさ。≫
≪ありがとうございます。≫
≪なあに。ではテレパシーで三花ちゃん今でいう雄蔵君に話しかけたまえ。ただし声に出したらいけないよ。でも今は赤子だから、おぎゃあ、おぎゃあとしか周りは理解出来ないけどね。≫
≪わかりました。三花ちゃん、聴こえる?≫
≪その声は雄蔵さん。私達なんだかとんでもない事になったわね。≫
≪そうだね。こう言う事態は想定していなかった。今世でも僕は三花ちゃんとして、三花ちゃんは雄蔵として生きていく事になるんだね。≫
≪その様ね。私一度でいいから男の子を経験してみたかったの。≫
≪前向きだね。≫
≪だって、そうでしょ?この状況を楽しまなくちゃ。≫
≪そうだね。三花ちゃんに悪い事した罪悪感で小心していたよ。≫
≪そうよ。私達は前世でのアドバンテージがある。色々とやりたい事も有るからね。≫
≪やりたい事?≫
≪うふふふ。例えば木登り等ね。≫
≪そうだね。前世では危ないと言われてなかなか出来なかったからね。≫
僕と三花ちゃんとで念話が弾む。
≪楽しい所申し訳ないけど、そろそろ大人達が来るよ。くれぐれも自重を大事にしてね。≫
≪うん!わかってるわ。≫
≪わかっているよ。≫
それは僕事鏡原雄蔵イン鏡原三花、鏡原三花イン鏡原雄蔵の新たな物語の幕開けであった。
『今度こそ身長伸びて欲しいな・・・。』
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