179、ミルクの時間 1997年11月頃
「マ~マ~、あま~い、あま~い、の~む~。」
「マ~マ~、の~む~、の~む~。」
1歳半くらいのある日章絵と健太郎に催促された。
「はいはい分かりましたよ。今から準備しますからね。」
僕は2本の哺乳瓶に粉ミルクを入れて、そうとうのぬるま湯を入れてかき混ぜて飲み心地の温度だと確認してから2人に飲ませようとした。
「「いあ~いあ~。」」
しかし拒絶されてしまった。
「「マ~マ~の~。」」
「え?」
「だ~か~あ~、マ~マ~の~の~む~。」
「のみちゃ~い、のみちゃ~い。」
僕は悟った。
哺乳瓶越しではなく、直接僕からのを欲しいのだと。
『でもくすぐったいからな~。』
「はい、わかりましたよ。2人とも少し待っててね。」
ブラウスの前を開けてブラジャーを胸の下に下げて2人を両手で抱きかかえて飲ませた。
『いまだに慣れないんだよな~。元男だった為にこういった経験は無いからな~。』
2人は僕の胸をつかみながら器用にちゅっちゅ、ちゅっちゅ、ちゅ~ちゅ~とリズミカルに飲んでいた。
流石双子と言うべきか、タイミングもぴったりで2人同時のリズムで飲む。
と、思いきや緩急付けて飲む時もあった。
時には強く。時には弱く。
まるで僕の反応を確かめているのかと錯覚してしまう程で、ただ何となくテクニシャンの様に感じた。
『僕はまだ経験が浅いだけだ。これくらいが普通なんだ。』
と、自分に言い聞かせてくすぐったいのを我慢して2人に飲ませた。
しばらくすると2人は満足したのか、
「ぷはぁ~、ぽんぽんいっぱ~い。」
「ぽんぽんいっぱ~い。」
自分のお腹をさすって大変満足そうな章絵と健太郎。
片や僕はくすぐったいのから解放されて、一安心した。
「では、お口きれい、きれいしましょうね。」
僕は抱きかかえていた2人をおろしてソファーの僕の両隣に座らせ、2枚のベビー用手・口ふきで2人同時に口の周りを拭いた。
片付けようとすると、
「マ~マ、ゆじゃんした~。」
「マ~マ、すいあい~」
「え?」
僕は自分の胸を拭こうとしていたのでまだあらわになっていた。
そこに隙を付いて吸い付いてくる2人。
「ひゃんっ!」
まだまだ飲み足りないのか、ミルクを一生懸命飲んでいた。
変な声が思わず出てしまったが、2人はとても満足そうに飲んでいるので僕はいとおしい物を見るような視線を向けていた。
≪雄蔵さん、この子達なんだかとてもテクニシャンなのよね。≫
≪三花ちゃんもそう思うかい?≫
≪ええ、なんとなく私の反応を確かめていると言う錯覚に何度も陥ったわ。≫
≪そうなんだよね。今まさに僕もそう感じたんだよ。≫
≪まあ、2人が満足しているならと思っているけどね。≫
≪そうだね。双子特有の行動だろうからね。≫
≪まさかとは思うけど、雄蔵さんと同じく2人とも転生者なのかしら?≫
≪そうかもしれないと取れるけど、そう言う考えはよしておこうよ。この子達は僕達の可愛い子供なんだからさ。≫
≪ごめんなさい、雄蔵さん。浅はかだったわ。≫
≪いや、いいんだ。単に僕や雄蔵君のDNAを引き継いでいるだけかもしれないじゃないか。≫
≪ええ、そうよね。そう言う考えも出来るわね。≫
≪そう言う事。でもくすぐったいな・・・。≫
≪ふふっ。すぐに慣れるわよ。≫
≪そう言うものなのかな?≫
≪ええ、何事も慣れよ。慣れ。≫
≪ありがとう三花ちゃん。≫
≪どういたしまして。≫
僕と三花ちゃんの念話している内に今度こそ満足したのか章絵と健太郎は僕の胸から離れた。
「マ~マ~、おくち、きれ~きれ~して~。」
「マ~マ~、もういっちゃいちて~。」
2人がそうねだる。
「はいはい、お口キレイキレイしましょうね~。」
僕は2人の口を新たなベビー用手・口ふきで拭き、今度こそ自分の胸の頂点を拭いてからブラジャーを着け直しブラウスを着こんだ。
「マ~マ~、おねむ~。」
「おねむしゅ~る~。」
「はいはい。ちょっと待っててね。」
僕は2人を同時に抱えてベッドに運んだ。
運んだと言っても、ソファーとベッドはすぐ隣であったのだが、2人を落とさない様に細心の注意を払った。
「ま~ま~、おやちゅみ~。」
「おやちゅみなちゃい~。」
「はい、2人ともおやすみなさい。」
2人は仲良くベビーベッドに横たわりすやすやと眠りだした。
僕は2人が熟睡したのを確認するまでそばで仕事で使用する台本を読んだり、寝顔を見たりして静かな時間が流れて行った。