161、ユニットデビュー 1994年8月9日以降 大学3年生
面談室の椅子に、芸能事務所社長、歌、ピアノのレッスンの先生、その他の幹部の方々が5、6人座り、テーブルをはさんで雄蔵君が部屋の真ん中に立っている。
ちなみに僕は部屋のすみっこにいて、雄蔵君の面接もどきがうまく行く様に念じていた。
『どうかうまく行きます様に。』
「では雄蔵君とやら、君の実力を見せてもらおうではないか。」
幹部の一人が言う。
「よろしくお願いします。」
「では、アカペラで歌ってもらおうかな。」
「はい、わかりました。」
ララララ~♪
雄蔵君が歌いだすと、歌声にひかれて幹部の方々は真剣に聴く様になり、曲が終わると拍手喝采であった。
「いや~雄蔵君、さすがに三花ちゃんとペアを組む予定とあって歌唱力が高いね。そして声量もある。
続いて演技の方もよろしく頼みます。」
「はい。」
雄蔵君が即興の演技をした。
まるで情景が浮かぶ様で見る人を魅了した。
「いやあ~素晴らしいよ。情景が浮かんできて、君の世界へと引き込まれそうだったよ。」
「判断の程はどうでしたでしょうか?」
「合格、合格だよ。満点だ。なあ、皆。」
「ありがとうございます。」
雄蔵君の歌唱力と演技力にすっかり魅了された幹部の方々が口々に褒めた。
「と、言うわけだ。どうだね、諸君。三花ちゃんとペアを組んで売り出しても問題無いだろう?」
社長の一声で室内は静まり、賛同の声が上がった。
「問題有りません。むしろこの2人のユニットを売り込むべきだと思います。」
「諸君らもそう思うだろう?」
「むしろ今まで無名だったのが信じられません。」
「やはり、諸君らもそう思うかね?」
「はい、とても思います。」
「ではなぜ今まで無名だったかと言うと、本人の口から聞くのが一番だな。雄蔵君、頼んだ。」
「はい。自分はあまり目立ちたく無いと言う気持ちでいました。でも妻の三花の姿を見るうちに一緒に協力して輝きたいと思ったからであります。」
「雄蔵君、ありがとう。」
社長が雄蔵君に話をする様にうながして僕の事をよく見てくれていたんだなと分かり思わず雄蔵君に対してお礼が出た。
「そういうわけで、三花ちゃんとペアを組んでも遜色の無い実力の持ち主である雄蔵君を今後ユニットとして売り出そうと思っている。で、先ほどの話に戻るが○○先生作詞、作曲をよろしく頼んだ。」
「はい、了解しております。」
「では各自自分の持ち場に戻りたまえ。三花ちゃんと雄蔵君は今後は一緒に仕事してもらおうと思う。
最初は三花ちゃんの付き人やおまけか何かと勘違いされるかもしれないが、今からでも露出しておく様にしたほうが良いな。」
「ユニットデビュー曲完成まで少し時間がかかるが、皆、総力を挙げてこのプロジェクトを完成させるぞ。」
「「「「「はい。」」」」」
そうして、前出した通りしばらくしてからユニットデビュー曲入りシングルCDが発売された。
ミュージックビデオも作成されて、LD化されて世間の認知度が上がっていった。