156、今後の事 1994年8月9日 大学3年生
次の日、お父様が僕と雄蔵さんに言った。
「やあ、おはよう。晴れてふたりは入籍したんだね。産まれた時に双子かと喜んだんだけど、妻の話によれば、いいなずけとして雄蔵は血が繋がっていない為に三花と結婚出来ると言う啓示が有ったと言う。
便宜上実の息子として何不自由の無い生活をさせて差別無く育てていたんだが、三花、お前は入籍した事だしさみしいが独立して生活したいかね?」
「お父様、同居したいと思います。私も成人しましたし昨夜入籍しました。ですが、お父様とお母様のこの先面倒を見ないといけません。離れて暮らすよりも近くにいたいと思います。
幸い私も雄蔵さんもこの家で産まれ育ちました。この先もお世話になりたいと思います。」
「お父さん、僕も三花の言う通りだと思います。どうしても別居しろと言うなら仕方ありませんが、お父さんとお母さんのこの先面倒を見る為にも、経済的にも同居を希望します。」
僕と雄蔵さんがお父様に対して言う。それに対してお父様は、
「お前たちの気持ちは分かった。親心としては独立してもらいたいが、核家族よりは共同生活の方が年を取るにつれ何かと楽だろうからな。分かった。僕としても三花には離れられたくない気持ちでいっぱいだ。もちろん雄蔵もだよ。」
「と、言う事は?」
「うむ、この先も同居生活を続けようではないか。でもお前達が独立したいと言い出したら反対はしないからね。」
「ありがとうございます、お父様。」
「ありがとう、お父さん。」
「ところで、初夜の感想はどうだったかい?」
お父様が聞いてくる。
「いえ、別に何事も無かったわ。」
「何もありませんでした。」
僕と雄蔵さんが答える。
「え?二人は入籍したんだろう?」
「はい、昨夜入籍しました。が、お父様が何を期待しているのかは察しますが、まだ致しておりません。」
「そ、そうかい。いや、お前達の産んだ孫の顔が早く見たいとかそういうのじゃないからな。」
「はい、分かってますわお父様。ご期待にそえる様に頑張りたいと思いますわ。ね、雄蔵さん。」
「ああ、そうだね。お父さん、しばらくの辛抱です。早くご期待にそえたいと思います。」
『初夜の感想はどうだったか?』
僕はお父様の言う事は分かっているつもりだ。でも本当に昨夜は忙しくてたまらなかった。
改めて今夜に初夜となるのかな?雄蔵さんはどう思っている事だろうか。
僕は自室に戻り念話してみた。
≪雄蔵さん、これからは僕と混同するので雄蔵君と言う事にするよ。≫
≪雄蔵君、これからもよろしくね。≫
≪≪雄蔵さん、三花ちゃん、分かったよ。≫≫
≪で、さっきのお父様の言葉の感想はどうだった?≫
≪≪俺はお父さんの気持ちは分からなくもない。入籍した事だし、早く孫の顔を見たいだろうし。≫≫
≪それは私も思ったわ。この第2の人生と第3の人生の融合世界ではちょっと違うでしょうからね。≫
≪どの様に世界が変わったか、同じか検証してみる余地があるよね。≫
≪≪そうだな。まずは第3の人生単独の世界線との違いを知る事だな。≫≫
≪僕もそう思う。世間は僕達の許嫁の事は知っているのかどうか。それにより今後の行動指針が変わってくるからね。≫
≪そうね、許嫁だと世間に認知されていれば入籍した事も公に出来るでしょうからね。≫
≪まずは様子見だな。過去の週刊誌や新聞を調べれば良いと思うけど、国立図書館までは遠いからな・・・。≫
≪もうしばらく待てば、インターネットの普及が盛んになり調べやすくなるんだろうけどな・・・。≫
≪まあ、今は地道にいくしかないわね。≫
そうこう念話して、今日1994年8月9日の1日が始まった。
雄蔵君も僕と同じ大学に進学しており、共に行動している為に僕との見た目に冗談で『犯罪だ!』とか言われている。
確かに身長差50㎝の2人が並んでいるとそう呼べるかもしれない。