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147、成人式 1994年1月15日 大学2年生

 1994年1月15日成人の日。2000年以降1月第2月曜日が成人の日と改まった。

まだ1月15日が成人の日として固定されていた時代、僕は前々から採寸、注文していた振袖を着用して地元の小学校へと向かった。

 着付けは行きつけの美容院でしてもらった。この日の為に前もって予約しておいたが色々と着付けていく時間がかかり、余裕を見て予約時間を決めておいて良かったと思っている。

小物やアクセサリーも前もって準備をしていた。

身体のおうとつを無くして不自然さを無くす為に行った行為は仕事柄着物を着る機会が多いので慣れてきたがやはりきつい。


 手順としては、

 1:着付けの前に肌着の上から背筋を伸ばす様にする事も兼ねて、背中からウエストにタオルを当ててくびれを減らしていく。それによりお腹が押されない事によって、『補正されている』と言う圧迫感が感じなくなるのとお腹側から押されて猫背になる為それを防ぐ為でもある。

 そしてタオルがずれないように薄手の帯紐で固定する。その際タオルを2つ折りにして紐に引っ掛けるとずれにくくなる。


 2:端を三角に折り曲げたタオルを身体の前に当てる。まずは三角に折ったタオルの端を右肩に当てて、腰から下に出た部分を折り返し、三角に折ったタオルの反対側の端を逆の左肩にかけると着物の前合わせと同じ様に交差する。

 見た目としては赤ちゃんの前掛けの様な感じになるがそのまま着付けると、バストが押されて胸がつぶれていく。

そうする事により、タオルによってバストとウエストのおうとつが無くなりスッキリとした見た目になる。

 なお、胸が大きい人用の和服用補正下着があれば、下着がバストを矯正するのでタオルを当てた状態になる。

 

 僕の場合は特注の和服用補正下着が有るので、タオルを使用する事は無いが最初はとてもきつく感じた。

美容院で振袖の着付けが終わったら、草履ぞうりを履いてバックを持って準備万端。



 成人式会場の小学校に到着したら、受付へと向かう。

続々と受付に来る同級生達。

彼ら、彼女らは僕の姿を見ると笑顔を振りまいて手を振ってくる。


 「おはよう!三花ちゃん。それともみかんちゃんの方がいい?」

 「プライベートなので三花ちゃんでお願いします。」

 同級生の女性から声をかけられたので返答した。

そうしたら続々と僕に話かけてきた。


 「三花ちゃん、お久しぶり。でも私からしたら毎日テレビやスクリーン、雑誌超しで見てるんだけどね。」

 「鏡原さん、お久しぶり。いや~三花ちゃんと同級生で同僚から羨ましがられたよ。」

 「ああ~、私もよ。」

 「俺も。俺も。」


 僕が到着した時から待ち構えていたであろうTVクルー、新聞記者が僕達のやりとりを撮影していた。


 そうこうして受付の順番待ちが終わり僕の番が来た。

 「おはようございます、鏡原三花です。」


 一瞬、パッっと顔を明るくした受付の人はすぐ真顔に戻るともくもくと対応してくれた。

受付も終わり、会場の体育館の椅子に腰かけた。

すると僕の存在に気付いた元同級生達が寄ってきた。


 「やあ、お久しぶり。」

 「鏡原さん、おひさ。」

 「三花ちゃん、元気?」

等々。 


 「おはようございます。皆様、お久しぶりでございます。」

 ぺこりとお辞儀をする。


 「いや~やはり生で見るといいね~。」

 「三花ちゃんの振袖姿も可愛いね。」

 「うん、可愛い~。」


 「皆さん、ありがとうございます。」


 そうこうしている内に時間が来て式典が始まった。


 「第〇〇回○○地区成人式を執り行います。まずは市長代理○○様のお祝いの言葉です。」


 「皆さん成人の日おめでとう。この喜ばしい日に皆さんの元気な姿を見れてとても嬉しく思います。・・・。・・・。以上〇〇市長代理〇〇。」


 パチパチパチ。 拍手が鳴り響く。


 「続きまして、来賓の方による祝辞を頂きます。では〇〇様お願い致します。」


 「え~、ご紹介に預かりました〇〇と申します。・・・。・・・。以上来賓代表〇〇。」


 パチパチパチ。


 「続きまして、新成人代表鏡原三花さん。よろしくお願いします。」

 僕は驚いた。まるで聞いていなかったからだ。会場内で拍手が沸き上がる。

そしてカメラマンも僕を録画している。仕方がないが壇上へと向かった。


 「新成人代表の鏡原三花です。

この度は皆さん、新成人おめでとうございます。

思い起こせば、色々な記憶が蘇ります。

幼稚園又は保育園。小学校、中学校、高校での諸先輩方からのご指導、ごべんたつ当時は何気ない一言として聞いていましたが今はそれらが生きるかてとなり、これからは各分野で後輩達を育成していきます。

 20歳を迎えましたが、人生はこれからです。ですが人の一生はとても短いです。

私達はこれからの人生を謳歌する為に今後も励んでいきたいと思う所存であります。

つたない挨拶ですが、これにて終わりにしたいと思います。

新成人代表、鏡原三花。」


 パチパチパチ!

会場から拍手が鳴りやまぬ勢いな程、盛大であった。

拍手に迎えられて僕は自分の席へと戻った。


 そして20周年の歩みと言う事でスライドショーが始まった。

僕らが産まれた1973年に起こった数々の出来事。

 

オイルショック、それに伴うトイレットペーパー騒動。四八豪雪等々が流れ、20年の軌跡を数分のスライドショーにまとめていた。


 続いてマジックショーが行われた。

 それらを僕は楽しく見ていた。

しばらくするとスタッフと思しき方が僕の所へ来てある依頼をしてきた。


 「事務所を通してありますか?」

 「既に了承済みです。」


 それから、

 「続きましてみかんちゃんの登場です。皆さん、拍手で迎えて下さい。」


 会場内がざわつく。僕が壇上に立ち、マイクを持つとみんなコールをしてきた。


 「「「「「みかんちゃ~ん」」」」」


 「は~い!」


 会場内に伴奏が流れた。

それは僕の幼稚園時代のデビュー曲、『氷のララバイ』だった。

続けて『恋する冬の岬』の2曲を歌唱した。

 声質、音域等の変化があり、幼稚園当時の声ではないだろうが、会場内全員が懐かしいと言う表情を浮かべて聞き入ってくれた。

 僕はとても嬉しかった。


 「みかんちゃん。いいえ、鏡原三花さん、ありがとうございました。」


 ぺこりとお辞儀してから壇上から降りた。


 そして成人式閉会のアナウンスがなり、解散した。

家に帰り、ニュースを見ていると全国での成人式の模様が流れていた。

そして唐突に僕が大写しに画面に広がり、新成人挨拶と僕が歌唱している一部始終が流された。


 後日、事務所の方に全国のファンからの問い合わせの電話等がかかっていた。

『本当にみかんちゃんなのか。』と。


 そしてしばらく経ち成人式の時の録画のダビングを頂いた。


 『いつ見ても三花ちゃんは可愛い。』

自分で自分を見て、自画自賛しながらビデオを家族と共に鑑賞した。


  

 


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