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146、お見合い 1993年以降 大学2年生以降

 『お父様とお母様が安心する為子孫を残す為に私、結婚します。』


 今朝の食事中に一大決心を表明した僕。


 それからしばらくして、お見合い話をお父様が持ってきて下さった。


 「この方は○○君と言って○○会社の役職の方のご子息だ。学業優秀でスポーツ万能だ。

三花も気に入ると思うがどうだろう?一度会ってみたらどうだい?」


 お父様はお見合い写真を僕に見せて来る。


 「わかりました。」


 お父様の立場も考慮して一度会う約束をした。

それからが早い。お見合い用の着物を用意する為に僕は採寸されもろもろの準備が出来、遂にその日が来た。


 「○○さん、こちらが鏡原三花さん。三花さん、こちらが○○さん。申し遅れました、私仲人の○○と申します。」

 「よろしくお願いします。」

 「○○さん、よろしくお願い致します。」

 仲人の方の僕とお相手の方の紹介が終わり僕達はしばらく話をした。


 「三花さん、いいえ『みかんちゃん』逢えてとても嬉しいよ。」

 「ありがとうございます。とても嬉しいですわ。」

 「みかんちゃん、僕は鼻高々だよ。みかんちゃんと結婚出来るなんて。僕の周りにはとても羨ましがっていたよ。いや~気分は最高だな~。」

 「そうでしたか・・・。」

 「みかんちゃんが僕のお嫁さんになる。いや~僕は周りに自慢しまくったね~。」

 「ふ~ん、そうでしたか・・・。」

 「そりゃそうさ、見合いの相手が何を隠そう売れっ子芸能人みかんちゃんだよ。初め『鏡原三花』と聞いた時は何でもないと思って気にしていなかったけど、みかんちゃんだと知った時は天にも昇る気分だったよ。結婚相手が有名人だからね。『天は僕に味方したんだ。』と思ったさ。

その後は今日まで周りにみかんちゃんが結婚相手になる、なる。と自慢しまくったね。どうだい?僕の気持ちのよさを君はわかるかい?」

 「ふ~、いいえ分かりかねますわ。」

 「つれないね~。君は僕の未来のお嫁さん。僕の物。いや~気分が高鳴るな~。君だってお相手が僕で嬉しいだろう?みかんちゃん、僕の事名前で呼んでくれただろう?」

 「お見合い相手の名前を呼ぶのは当然ですわ。」

 「いや~、噂にたがわぬとはこの事だね~。小さいながらもプロポーションが良いのは着物越しでもわかるよ~。ウェディングドレスを着せたらさぞかし立派なんだろうね~。出るとこ出て引き締まっている。

早く新婚旅行に行きたいよ~。」



 『なんだ?この方は。自分の事ばかり述べてくる。それに僕に話を一言もさせてくれない。どうしようか・・・。』

 僕は心の中でそう思う。


 ≪雄蔵さん、私この方の印象最悪よ。≫

 ≪三花ちゃんもそう思うかい?≫

 ≪ええ、この方と言うかこいつの方が有ってるかもしれないわ。≫

 ≪人の事を所有物扱いしてあまつさえ自慢話として公言してるみたいだね。もう成立したと勘違いしているからね。≫

 ≪私、こいつとなんか相手したくないよ。≫

 ≪人生、我慢も必要なんだよ・・・。≫

 ≪それは分かるけど、我慢の限界と言う物が有るわ。≫

 ≪そうなんだよね、僕もうんざりしているんだ。どの様にして断ろうか・・・。≫

 ≪がつんと言いなさいよ、がつんと。こういう人ははっきりと言わないと理解してもらえないと思うわ。≫

 ≪それはそうだけど、あまりおおごとにしたくは無いな・・・。≫

 ≪でも今言わないと増長する恐れが有るわよ。≫

 ≪それは分かってるよ。≫


 「みかんちゃん、みかんちゃん僕に見とれて大丈夫かい?ああ、なんて僕は罪作りなんだろう?」

 三花ちゃんと念話していた僕を見合い相手は何を思ったか自分に見とれていたと勘違いして愉悦にひたっていた。


 「あら、ごめんなさい。ちょっとぼっとしていたみたいね。」

 「いいんだよ。お嫁さんに見つめられる。しかもお相手はあのみかんちゃんだよ。僕は興奮しまくりさ。」


 『ああ、かなり暴走してる。早く断るなら断らないと後が怖いな。』

 その後も彼の一人語りは止まらず、僕はあいづちを打つだけで最低限の対応だけした。


 所定の時間が来て仲人さんが聞いてくる。

 「おふた方お互いの印象はいかがでしたか?」


 「いや~、素晴らしい時間だったよ~。僕の人生で最良の時だったさ。」

 お相手の方は言う。


 「三花さんはどうでしたか?」

 仲人の方が僕に聞いてくる。


 「ええ、楽しまさせて頂きました。今夜にでも今後の話をさせて頂きたいと思いますわ。」

 「みかんちゃん、それはOKと言う事?俺・・・いや僕嬉しいよ。」


 仲人さんに対しこの場での穏便な返答をする。

そうしたらお見合い相手は勝手に良い方向に想像した様だ。


 「では、お元気で。」

 「みかんちゃん、また会おうね~。俺達良い仲になれるさ。」


 ぺこりとお辞儀してその場からそそくさと後にした。


 ≪あいつ、自分本位で話しかけて来て本当に腹立たしく思ったわ。≫

 ≪三花ちゃんもそう思うかい?≫

 ≪ええ、本当にむかつくわ。ぷんぷん。≫

 ≪人生、腹立たしくても我慢する事も必要なんだよ。≫

 ≪それは分かるけど、当然この縁談断るわよね?≫

 ≪もちろんそのつもりさ。≫

 ≪でもお相手は乗り気の様だから、後が怖いわね。≫

 ≪なんとか穏便に済ませたいものだね。≫


 帰りのタクシーの中で僕と三花ちゃんと念話して家まで向かった。

 そして・・・。


 「お父様、お話があります。」

 「今日のお見合いでの事かね?」

 「はい、折角のお話でしたがお断りさせていただこうと思います。」

 「そうか、だろうな。」

 「理由はまず自分本位な事です。私との見合い話を自慢話として周りに吹聴している様でした。

それに会ったばかりなのにもう自分の物として考えていました。流石に看過出来ません。」

 「やはりそうか。」

 「と、おっしゃいます事は?」

 「いや、三花とのお見合い話が出た後の先方の態度の風評が聴こえて来てね。本決まりでもないのに三花と一緒になったと有頂天になっていて周りもいささか迷惑していたらしい。先方の親御さんからも謝罪が来ていた。」

 「ではなぜ私にも当日まで黙っていたのでしょうか?」

 「それは彼が心変わりするかと期待していたのが有るな・・・。」

 「でもそのまんまで、最悪の結果をもたらしたと。」

 「そうだね。三花の事をおもんばかる態度を取ってくれたなら好印象だったかもしれないが、仲人からも既に連絡が入っている。お見合い中彼は自分本位でまるで三花をもうめとった様な態度だったと聞く。よく三花は我慢したものだね。」

 「人間、我慢も大事ですからね。」

 「でも我慢ばかりが美徳ではないぞ?嫌なら嫌とはっきりと言わないといけないからね。」

 「はい、お父様や仲人さんの顔を潰したくありませんでしたから・・・。」

 「そうか、お前は優しい子だね。分かった。こちらから先方に断りの連絡を入れておく。」

 「でも相手は相当乗り気でしたから後が怖いのではありませんか?」

 「三花の懸念も分かるが安心して欲しい。それよりもよく我慢してくれたね。ありがとう。」

 「では、失礼させて頂きます。おやすみなさい、お父様。」

 「おやすみ、三花。」

 


 その後も何件もお見合い話やアプローチしてくる方々がいたが、いずれも僕のネームバリューや財産に付け込んで寄ってくる輩で、僕は辟易していた。


 こんなに可愛いのにお相手の話が出てこない。

そしてそれは芸能界の七不思議のひとつとして扱われた。


お父様やお母様には悪いけど、僕は生涯独身を貫いていった。


 







 

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