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143、コンサート全国ツアー最終日 1993年 大学2年生 

 「ご来場の皆様、観に来て下さりとてもありがとうございました。この日を忘れる事は無いでしょう。お忘れ物の無きようお気を付けて下さい。みかんより。」


思えば1983年小学4年生の時の初コンサートからの恒例行事として会場の観客へのメッセージとして送り続けて早10年が経過した。

初めのうちは観客の方々に気持ち良くコンサート会場を後にしてもらいたい為の発言で、

サービス精神でも有ってサプライズのつもりが好評だった為に毎回行う様にしてきた。

それがいつの間にか当たり前の事として行われている。

 

 『また来てね。』


 と、言う思いを込めて僕はアナウンスする事を今年も全国ツアーで毎回している。

 

 そして今日は最終日。東京ドームで開催された。

規格上でのコンサート開催時の収容人数は約55,000人との事だが、

2007年7月22日に某ユニットアイドルが記録した史上最多動員数67,000人には及ばない物のかなりの動員数を得た。

 1988年(昭和63年)3月18日に開場した日本初の屋根付き球場でコンサートをする場合、音がかなりこもる為にスピーカーの設置などには注意が要したが年を重ねるごとに残響音対策や周囲への騒音対策のノウハウが蓄積されていった。

 開場して約5年が経過してその間に多くのアーティストがコンサートしており、いつ頃からか1階席のみドーム内全体を黒いカーテンで覆う様にされている。

 ちなみに、コンサートで利用する場合消防法と警視庁からの指導や観客の転落防止の為に2階席と外野席の最前列(1列目)は緩衝地域となり、原則として客席としては利用できない様になっている。

それでも野球の試合時と違いグラウンドにも客席を設置出来る為により多くの観客数が見込めた。



 「いえ~い!みんな~元気~?」

 ドンッ! ドンッ! シュー


 空砲が鳴り、ドライアイスがたかれてまるで雲海の様になり、スポットライトが当てられ入場してくるのを観客の方々は今か今かと待ち望んだ。

 そして満を持して僕が登場する。すると観客のボルテージは上がり歓声が沸き起こった。


 「「「「「み・か・ん!み・か・ん!み・か・ん!」」」」」

 

 会場内が熱気にあふれ、僕の次の動作を見守られた。


 「みんな~、今日もよろしくね~!」

 「「「「「うぉぉぉぉ~!」」」」」

 「じゃあ~始めるよ~!」

 「「「「「おぉぉぉぉ~!」」」」」


  途中何度も瞬時に衣装交換したりしてステージ上を右へ左へと縦横無尽に動いて歌った。

その都度歓声が沸き起こり、僕も観客の方々皆が一体となり会場が盛り上がった。

 あっという間に時間が過ぎて行き最後の曲を歌い、


 「みんな~ありがと~。ではまたね~。」

 そう言い残してステージから僕は退場する。

そうしたらドーム内が暗転した。


 「「「「「アンコ~ル!アンコ~ル!アンコ~ル!」」」」」


 お約束と言うべきアンコールコールが鳴り、しばらくするとステージ上にライトアップされてまたもや衣装チェンジした僕が登場した。


 「みんな~アンコ~ル、ありがと~皆さんの期待に応えて歌いま~す!」

 「「「「「うぉぉぉぉ~!」」」」」


 そして2曲歌い僕は退場した。

また会場が暗転してしばらく、


 「「「「「アンコ~ル!アンコ~ル!アンコ~ル!」」」」」

 「「「「「アンコ~ル!アンコ~ル!アンコ~ル!」」」」」 

 「「「「「アンコ~ル!アンコ~ル!アンコ~ル!」」」」」

 

 嬉しい事に観客の方々のアンコールコールが鳴り止まない。

そして会場全体に照明が照らされ、スタッフからのアナウンスが流れた。

 

 「この度はご来場誠にありがとうございました。お忘れ物の無き様に注意して下さい。」

 無常な場内アナウンスが流れる。

そして観客の方々は各々帰り支度を始めた。

 でもなかなか帰ろうとはしない。それは期待していたからだ。


 しばらくすると待望のアナウンスが流れた。


 「ご来場の皆様、観に来て下さりとてもありがとうございました。この日を忘れる事は無いでしょう。お忘れ物の無きようお気を付けて下さい。みかんより。」


 「「「「「うぉぉぉぉ~!」」」」」

 「この最後のみかんちゃんの挨拶を聞きたくて待っていたんだ。」

 

 そうして、満足した観客の方々は帰宅の途についた。


 僕はシャワー室で汗を流して私服に着替えた。


 「皆さん、お疲れ様でした。今日もありがとうございました。」

 ぺこりとお辞儀をして後片付けをしているコンサートのスタッフの方々に会釈をして周った。


 「みかんちゃん、今回も成功だね。」

 「はい、皆様のおかげです。」

 僕はねぎらいの言葉をかけながらマネージャーと共に東京ドーム1階の関係者入口へと向かった。

 

 

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