表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

143/188

142、冷夏 1993年8月お盆以降 大学2年生

 翌日、僕を中心に親戚一同が庭の一角に集まり記念写真を撮った。


 「では良いですか?皆さんこちらに集中して。」

 知り合いのプロの写真家の方に頼んで写してもらった。


 「では、さん、に~、いち」

 パシャ! フラッシュが光る。


 「ではもう1枚行きますよ。さん、に~、いち。」

 パシャ!


 「皆さん、お疲れ様でした。後日焼き増し致しますね。」

 写真家の方が言う。


 「〇〇さん、お忙しいのにありがとうございました。」

 「いえいえ、みかんちゃんの頼みとあれば何枚でも。」

 「後で請求書をお願い致しますね。」

 「了解いたしました。」

 僕は写真家の方にお礼を言い、後日写真代を払う旨を伝えた。

 

 しばらくして集合写真が出来上がり親戚一同に郵送した。

額装した写真を記念として部屋に飾ってもらい大事にして欲しい。その様な願いを込めて簡単に親戚へのメッセージカードも同封して贈った。


 しばらくすると、ありがとうや大事にすると言う返事が返ってきた。


 そうして数日間の僕も含めて親戚一同のお盆休みも終わり社会人の方々はまた忙しい日常へと戻っていった。

 夏休み中の子供達はと言うと、絵日記等の宿題に生の僕とのふれあいを書いて夏休み終了後学校で自慢していた子もいたと聞く。


 僕は大学は夏休み中だが、芸能界活動が忙しく色々と仕事をこなして日々を過ごした。


 『それにしても今年は例年と違って涼しいな。そういえば梅雨明け宣言なかった様な気がするな。』

 ≪雄蔵さん、貴方の魂の記憶によると今年は確か冷夏と言われて米不足に陥るんじゃないかしら?≫

 ≪冷夏・・・。米不足・・・。思い出した。確か『平成の米騒動』と呼ばれ一時店頭での米不足に陥り、世界から米を輸入するんだったな。そして善意で送ってもらったとある国が日本人の舌に合わないのでひと悶着があったはず。しまったな。この事をお盆の時に親戚に話しておくべきだったな。≫

 ≪今更遅いかもしれないけど、今ならまだ間に合うと思うわ。≫

 ≪でもなあ~。要らぬ一言で騒動を起こしたくないんだよな~。≫

 ≪それもそうかもしれないわね。まずはお父様とお母様に話しましょう。≫

 ≪そうだね。≫


 その日僕は帰宅して両親に今年の冷夏の話とそれに伴う米不足による今後の騒動の懸念を伝えた。


 「三花、教えてくれてありがとう。確かに大いにあり得るな。今度今まで以上に米を購入しておこう。」

 「三花ちゃん、その話は本当かい?ではご近所にも伝えた方がいいのかい?」

 「お母様、それはやめといた方が良いと思います。いたずらに余計騒動になってしまいそうですから。」

 「それもそうね、そのとおりよね。」

 「三花、お前がテレビに出演している時にそれとなく今年の冷夏とそれに伴う米不足の危険性を伝えたら良いのではないかな?」

 「ですがお父様、危険ではありませんか?」

 「だが可能性が有るなら言わないで後悔するより言って後悔した方が良いのではないかい?」

 「それもそうですね。芸能事務所の社長と相談してみます。」


 翌日芸能事務所の社長と冷夏により米不足に陥るかもしれないと言う話を伝えて対処法を相談した。

 

 「三花ちゃんはそう思うかい?確かに今年は例年より気温が余り高くない。その事はニュースにもなっているだろうし、それに伴う米不足も考えられてると思う。」

 「そうかもしれませんね。」

 「いたずらに世間を騒がしたくないのが私の意見だ。」

 「では、どうすれば良いでしょうか?」

 「やはり三花ちゃんが最初に考えたのだから発表したら良いと思う。表立つのが嫌なら討論番組のゲストとして参加して専門家に聞いてみると言う形を取ると良いと思う。」

 「はい、そうですね。わかりました。その様に致します。」

 「では後は任したまえ。」

 「お願い致します。では私はこれで失礼致します。」


 そう言い合い僕は社長室から退出した。


 それから数日後、とある番組で僕は食料関連の専門家の方に質問した。


 「今年は今までにない低気温で冷夏とも言われています。備蓄米の残量は大丈夫でしょうか?」

 「それは米不足に陥ると言いたいのかね?」

 「はい、今年は全国的に冷夏で米の育成が思わしくないと思われます。それにより米の不作に陥ると思われます。」

 「そうかもしれないが、どうしろと言うのかね?」

 「はい、今までの様な大量生産して大量破棄すると言う『食品ロス』を無くしていく事を進言したします。」

 「みかんちゃん、『食品ロス』とは何だね?」

 「簡単に言うと廃棄されてしまった。もしくは食べられていない食品の事ですね。

細かく言うと製造過程で発生する規格外品、加工食品の売れ残り、家庭や飲食店で発生する食べ残し(残飯)、期限(賞味期限、消費期限、品質保持期限)切れの食品、食材の余りや調理くず等の事です。」

 「それは食品だけに限った話では無いよね?」

 「はい、そうなりますね。」

 「ではどうしろと言うのかね?」

 「はい、まず個人では冷蔵庫の中をこまめに確認して必要以上の買い物をしない。一度に食べきれる量を調理する。等ですね。

企業としては、やはり大量生産を止める事だと思います。そして飲食店では個人個人が食べきれる量を注文してどうしても残した場合は家に持ち帰る等したらよいと思います。でも食中毒が怖いですが・・・。」

 「ではバイキングやビュッフェを止めろと言うのかね?」

 「そうは言っていませんが、今後は客から注文を受けて注文を受けたメニューだけを出す方式、『オーダーバイキング』と言うのを進言致します。そうすれば余った料理を大量破棄すると言う事態が少なくなるでしょうから。」

 「で、話を戻すが食品ロスと米不足と何の関係が有ると言うのかね?」

 「はい、普段から食品の無駄を省く行いを今後していくべきだと思います。米に限った話ではありませんが、今年は冷夏と言われており不作の恐れがあると言われています。個人個人のそのような心構えが大事だと思います。それに日本は海外から食料を大量に輸入しています。

そしてそれらの大半が破棄されているという事も聞きます。

私はそう言った食品ロス削減への取り組みが大事だと思います。」

 「で、冒頭の米不足に陥ると言う懸念かね?」

 「はい。残念ながら冷夏により今年は米の不作により最悪米騒動に発展するかもしれません。」

 「そこまで言い切るかね?」

 「残念ながら・・・。」

 「わかった、ありがとう。貴重な意見参考にさせてもらうよ。」

 「ありがとうございます。」


 このやり取りがテレビで放映されると最初視聴者は半信半疑だったが、9月、10月の米の収穫シーズンに入り不作だとニュースに流れると我先へとお米の購入に走る人々が徐々に増えていった。


 そんな矢先、政府が海外より米の緊急輸入を実施して群衆パニックまでへの発展は未然に防がれ何とかなった。

 僕はひとまず後世における『平成の米騒動』が起こらずに済んだ事を喜んだ。



 


 


 

 


 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ