130、大学での講義 1992年 大学1年生
僕が講義室の最前列の中央の席に座ると、それまでガヤガヤしていた雰囲気がシーンとなった。
それは僕を中心として両側の席に自治会のメンバーが座ったからである。
視力が悪い訳ではなく、身長が130㎝しかない為僕は常に最前列に座り講義を受けている。
今でもたまにファンだと言って声をかけてくる学生はいるが、大学入学当時は大変な物だったと記憶している。
「みかんちゃんだよね。握手して下さい。」
「サイン頂戴。」
「みかんちゃんの隣は俺だ。」
「いいえ、私よ。」
等々、有名人にお近づきになりたいと言う欲望のまま接してくる人達が多かった。
「鏡原さんが迷惑しているだろう。みんな、落ち着きたまえ。」
当時の大学自治会長の声が発せられると僕の周りにたむろしていた人達は去っていった。
「自治会長、ありがとうございます。」
ぺこりと僕はお辞儀をして礼を言った。
「いや、気にしないでくれたまえ。」
自治会長は僕に言う。
「今年の新入生は鏡原君目当ての人も多く、偏差値の数値が高い人が集まってきた。
まさに入れ食い状態だったよ。」
「買いかぶりすぎですわ、会長。私には人を引き付ける能力はありませんもの。」
「謙遜しすぎも困った物だが、鏡原君は自分の魅力に気づいてないのかい?
それともそう言うフリをしてるのか・・・。まあ良い。君はこれからどんどんカリスマ性を養っていき、
学園の為に、ひいては君自身の力になる事だろうね。」
「ありがとうございます。そこまで評価して下さるなんて。」
「理事長も鏡原君を高く評価している。もちろん教授の皆さんもね。」
「そこまで言われるとお世辞でもとても嬉しく思います。」
「いや、本心で言っているんだ。」
自治会長の権限がすごいと言う事をこの時はまだよく僕は分かっていなかった。
しばらくして僕は学生自治会に勧誘されて晴れてメンバーとなった。
それからは僕の周りには周辺警護も含めて自治会メンバーと行動を共にする事となり、
講義、講義で僕と共にするメンバーが入れ替わっていた。
そして今日、僕含め自治会メンバーが講義室の最前列の中央に座り周りは他のメンバーが座り、勉学に励んだ。
さながら、親衛隊の様な物だなと感じた。
無事今日の出席する講義が終わり、僕は大学を後にして芸能界活動の仕事場へ向かった。
予定では今日はとある企業のCM撮影の予定であった。