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第1話 《異世界にようこそ!》

とある人物が呟いた。


この世界には…現実と二次元が混ざった世界が存在する…。


そしてその世界とは、数多くの人々からこう呼ばれた。


『ネムレス』と…。





一人の人影が薄暗い体育館のステージの上で手を振っている。


その表情は白幕に遮られてこそ見えないが、当てられているスポットライトの光が影の動きを鮮明に照らす。それはとても穏やかで、純粋に手を振っているように見えた。


ツンツンに跳ねたその髪の毛に、手が刺さったようなシルエットに見えたが、それとは別でその影は頭を掻いてる。


そして、しきりに頭を掻いたその影は、待っていたと言わんばかりに、腕を組みながら語り出した。


「やぁやぁ、待っていたよ。それはもう退屈だったね。終わりのない悠久の時を過ごしてしまったみたいに、今日は自分の話も悠久の時で終わりもなく語ろうと思う」


声質からして男の声…トーンは男性にしてはごく普通。どこかテンションの高い話し方であり、そのままの口調で言葉を続け出す。


「この世界には、リアルと二次元が混ざった世界が存在するんだよ。言ってしまえば興味のある生き物にとってはまさに夢の世界だ。行ってみたいって? でもそれはオススメしないんだよね。当然、リアルではあっても二次元の世界なんだよ。キミたちが今居る世界には魔法なんてものがあるかい? 魔物とか存在するかい? 怖い魔王とかいるかい? そう、いないんだよ。でもその世界は現実であっても、そういったのはいるんだ。ゲームみたいに死んでもリセット! なんてことにはならない。命はリアルでも二次元でも一つしかないんだからね。死んでしまったらそこまでだ」


そこまで言うと、少しの間を残して、再び言葉を続ける。


「その世界に名前はない。だからこそ“ネムレス”なんて呼ばれてる。誰が作ったのかもわからない。不思議だよね? そんな世界が現実の何処にあるのか。そしてどう行くのか。わからない。知る術なんてないし知ってる人間が居たとしても、その世界から出られたのか…はたまたそこで力尽きて屍になっているかのどちらかだね」


そして今度は、その長い影が人差し指を立て、首を傾けながら…。


「もしその世界に運良く入ってしまったなら、それは幸せだよ。宝クジの一等が当たったと思って喜んでもいい。だからこそ自分は待つよ…静かに、ね…」


それだけ残して、静かに影は光と共に消えて行った。





甲高い音が聞こえる。それはある程度大きな音で、聞く者からしたら騒音に聞こえる音だ。


鉄と鉄が高速で何度もぶつかり合う音。その正体は目覚まし時計の音である。


その騒音の存在を見もせずに、一人の少女が手探りでそれを探す。探してはようやくそれが手に触れ、ボタンを叩いて騒音を止めて、重たそうに身体の上半身を起こした。


「ふわぁ…あふぅ…」


まだ完全に開かない重い瞼を擦りながら、その少女はベットから立ち上がり、カーテンを開ける。


すると、部屋には太陽の光が差し込み、同時にそれは朝を迎えた事を意味した。だが、それは彼女の一日がスタートするのも同じだった。


そう、彼女…朝霞未來あさかみらいの一日が…。


彼女のケータイ電話の一部分が青色く点滅する。


「あっ…ライトさん…」


画面を開き、そのまま指でメール機能を開く。どうやらメールのやり取りをしていたらそのまま眠ってしまったらしい。


メールの内容に書かれていた文字は…


《それじゃあそのゲームやってみて! きっと楽しいと思うよ! 俺もやってみる! パソコンのメーラーにURL送っとく!》


「そうだった…新しいネットゲームを始めるって話だったんだよね…」


それからメールの返信。


《うんっ! じゃあ朝の内にダウンロードだけでもしちゃうね?》


と、送信してからケータイを布団の上に置き、パソコンの前に座る。何せ今日は日曜日と言う休日なのだから、学校も休みで思い切り遊べる。


ピンク色のパソコンに電源ボタンを押し、起動する。立ち上がりはそこまで遅くはなく、流石は新しく買ったパソコンとでも言うべきか。


色も彼女の好きな色であるピンクを自分で選んだのだ。なにせこのヌイグルミだらけで如何にも女の子の部屋! と主張するような部屋にパソコンだけ黒色だと目立ってしまうと判断した結果だ。


鼻歌を歌いながらパソコンでURLをコピーし、貼り付けて検索…出て来た。今回やるネットゲームとはこの“ネムレス”と言うゲームだ。


公式ページは至って何処にでもあるネットゲームのそれと変わった部分はない。そしてダウンロードボタンを押す。のだが、そこで不思議なウィンドウが開いた。


「?? 本当にダウンロードしますか? えっ、は、はい…」


ダウンロードする時に、パソコン本来の設定を変更していなければ画面にダウンロードするか否かを聞かれるウィンドウは出てくる。


しかし、未來が今見たものはそれとは別で違ったウィンドウ…何処かダウンロードをオススメしないと言った警告のようなものだった。


彼女はパソコンについて詳しい方ではない。強いて言うならば一昨日に買ったパソコンだ。それをSNSで二年間知り合った友達…ライトと呼ばれる人物に教え、今ダウンロードした“ネムレス”と言うゲームを始めると言う話になった。


と言うくらいで、ゲームをやるのは今回が初めてのパソコンもゲームも全くの初心者である。


そして、ケータイが鳴る。布団に置いたケータイを取りに行き、再びパソコンの前に座る。


「…えっ?」


ライトと呼ばれる人物からのメール…書かれていた内容は…。


《もうダウンロードした!? 本当に異世界に飛べたか? だとしたらこの噂マジだったんだな…頑張れよノア!笑》


だからこそなのか…この瞬間になって、それを押してしまったことに彼女は後悔してしまった。


「えっ!? どういう…ッ!?」


刹那、パソコンのモニターから発する光が強くなり、次第にその光は部屋全体を白に埋め尽くす程の輝きを放った。


そして、そこから未來はモニターに吸い込まれるようにして消えた。それでも一人でに動いているパソコンのモニターはブルースクリーンになり、文字が表示されていた。


《ようこそ! 二次元と現実が混ざった世界! “ネムレス”へ》


彼女、未來は後悔した…騙された…男なんて信用するんじゃなかった、と…。



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