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セカンダリ・ロール  作者: アイオイ アクト
第二十一話 卑屈少年と熱血不良教師
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卑屈少年と熱血不良教師-5

 あれ? スマブラやってないのかよ。

 リビングの液晶テレビはキャラ選択で止まっていた。


 三人が真面目な顔で何かを話し合っていたが、陽太郎は立ち上がって玄関へと逃げようとしていた。


「別に怒ってねえよ」


 いやまぁ怒ってるけど、それほど怒ってる訳じゃない。

 何かを求めるには必ず対価が必要だとフルメタルな錬金術で学んでいる。

 思った以上にでかい犠牲だったけど。


「お前ら何の話してんだよ?」

「杜太に交流会の話してたんだよ。で、先生はなんて? てか、なんで先生と話してたの?」


 陽太郎の癖に大雑把な質問しやがって。

 それは嗣乃の専売特許だろ。


「んー……いや、ちょっと用事があって」


 やばい。

 だから『んー』は駄目だってのに。


「そっか。なんだか仕事漬けだね俺達」


 お、流してくれた。


「はぁ、そうね」


 嗣乃が陽太郎に応じる。


「でも今あたしすっごく楽しいけどね。やればやるほど喜ばれることってそうそうないし!」


 それには俺も同意する。

 ゲームやら漫画やらアニメに没頭するのは何か満たされない気分の裏返しなのかもしれない。


「お、俺も楽しいよー!」


 そうだな、杜太は本当に変わった。


「どうしたのあんた? やっぱ委員長はきついとか思ってる?」

「いや、今までと同じでいいって言うならそんなにきつくはないけど」


 キツくはない。

 これからが心配なだけだ。

 こんな俺が一年を統括する。場合によっては他学年も統括する委員長閣下とは。


「あ、そうだ、依ちゃんに聴いた? 一段落したからメンバー再編するって」

「聞いたよ」


 嗣乃の表情は少しだけ曇っていた。

 肩の荷が下りたはずなのに、どうしてそんな顔をするんだ。


「あの、俺達、つっきがいっぱい仕事してんのは分かってるんだけど、校外組結構きつくて。少し休ませてもらうよ。さすがに身が持たないよ」

「おぉ、休め休め。デートでも何でもして来い。委員長閣下が許す」

「あ! そ、そうだよー! 二人共最近元気無いしねー」


 交流会は会議自体ではなく、下準備がとにかく大変だ。

 陽太郎も嗣乃も休みという休みがまるでなかった。

 だというのに、俺は二人が帰ってくるなり仕事の話をしまくっていた。


 陽太郎と嗣乃がお互いの視線を交差させるのが分かった。

 そうだよ、そうやって二人だけの秘密をたくさん作ってくれ。


 嗣乃の視線は、陽太郎から俺へと移った。


「あー、あーのさ……そのことと関係あるっていうかなんていうか……ちょっとお願いがさ」

「お願い? なんだよ?」

「お、俺分かっちゃったー! お金でしょー!」


 はぁ? 金だと? 


「んな訳ねーだろ」

「だ、だって、交流会は電車とバス使って行くんだぉ? 自転車の距離じゃないところも多いしぃ」


 杜太もなかなか鋭いな、そういうことか。


「ごめん、正にその通りなんだけど……交通費出たら返すから、お金……借りていい?」

「いくらだ? とりあえず一人二万ずつくらいあれば足りるか?」


 どうせ使わずに残ったコミケ予算だ。

 こいつらのデート代になればその方がずっと良い。


「ちょ、そんなにいらないって!」


 要るだろ。

 だってあれよ、映画見るだけでも学生二枚で三千円飛ぶんだぞ? それでたった二時間程度しか消費されないんだぞ。


「とにかく受け取れ! 昔お前らに寸借詐欺しまくったのの返済だよ」

「はぁ? 駄菓子が二万になるワケないでしょ!」

「使わなかった分は返せ!」


 やばい、なんで俺は興奮しているんだろう。

 でも、嬉しくてたまらない。


「委員長閣下からの施しだ。大事に使えよ」

「な、何よそれ?」

「おデートして来なさいって言ってるんだよ。この金で」

「え? う……うん」

 

 なぁーんてな。

 こいつら、何かを隠していやがる。

 しかもあまり良いことじゃない。


 でもまぁ、これで良いんだ。

 委員長なんて仰せつかってしまったが、陽太郎と嗣乃が俺に隠れてやましい行動を取り始めている。

 二人が次の段階へ進める願ってもない事態だ。

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