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セカンダリ・ロール  作者: アイオイ アクト
第十二話 少年、自分が投げかける言葉の重さを知らず
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少年、自分が投げかける言葉の重さを知らず-2

『むむむ無理ぃー! ほんとに無理だからー!』

「何が無理なんだよ? 物理的に可能なこと否定すんなし」

『お、おーぼーな-!』


 はぁ。杜太の説得は骨が折れる。

 東京で開催されるオンラインゲームのイベントに行って来いと言っているだけなのに。多江と二人で。


 俺はうっかり忘れて別の予定を入れてしまっていたという体でな。

 本当はすごく行きたいけど。


 多江は始発で行く気満々だ。

 そうでなくては企業ブースで公式グッズの残り物を掴まされるだけだ。


 東京までは三時間以上かかる。

 どう頑張っても到着時間は開場二時間前くらいになってしまう。

 なので大した物は買えないんだが、二人きりの時間はとても長くなる。


「ただでさえお前は一緒にチャリ通できねーわゲームしてても早く寝るわで時間が少ねーんだ。この辺で多江と仲良くしとけ!」

『うえぇー! でも、無理ぃー!』


 普段は俺の変な説得でも受け入れてしまうくせになかなか折れないな。

 しかし、杜太を一概にヘタレと断じてしまうのは正しくない。


 杜太に俺みたいになんとかなるだろうなんていう淡い考えはない。

 遠い距離を詰めるという至難の業を成し遂げようと、思い悩んでいるのだ。


 酒匂多江の隣は埋まっていないが、本人には隣を埋めたい相手がいる。そこに『よこれんぼー』を入れるんだからな。


 杜太に勝機があるとすれば、多江の陽太郎に対する想いの強さだ。

 端から見ていても、あまり感じられなかった。


 ごちゃごちゃ言い続ける杜太を無視して携帯を取り出し、パスワード保護している例の黒板の画像を表示させた。

 桐花がどういうつもりでこの写真を撮ったか分からないが、端から見ていて思うところがあるんだろう。

 俺達が仲良くしていることこそ、桐花にとっては一番良いのかもしれない。


 あの黒板が海だとしたら。

 皆あらゆる潮の流れに逆らって一様に目的へと向かってもがくように泳ぐ中、隅っこの『あ』こと俺はひとかきもせずにちゃぷちゃぷ浮かんでいただけだ。


 気付けば俺はずいぶん外れた場所まで流されていて、もがいた時にはもう遅かった。


 一体、俺は誰の味方なんだろう。

 白馬の味方をして、杜太の味方をして。結局、多江の味方までしてしまった。


 そうなると、俺が裏切っている相手は一番裏切りたくない嗣乃だ。

 陽太郎の向いている方向が俺の思った通り嗣乃なんだとしたら、陽太郎も裏切っている。


 今更だが、正さないと。

 皆にとって良い結果にならなくたって仕方ない。

 俺は桐花が同意してくれた通りにしたいから、そうするだけだ。


 とはいえ、俺ごときが人の心を動かせる訳がない。

 それも、分かりきっていることなんだけど。

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