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セカンダリ・ロール  作者: アイオイ アクト
第十話 コミュ障少年とネクラ少女、味方になる
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コミュ障少年とネクラ少女、味方になる-4

「いたいた! 教室名教えてって言ったのに!」

「あん? ああ、ほんとだ」


 陽太郎のチャットは見ていたが、時間稼ぎのために返していなかった。

 よく部活校舎にいたと分かったな。


「ん? どうしたの向井? なんか楽しそうだけど」

「そ、そんなこと、ない。は、運ぶの面白い、から?」

「え? 体育会系だねぇ」

「う……うん」


 桐花は嘘がものすごく下手だな。

 まぁ、陽太郎は気づいていなさそうだから良いけど。


 それにしても、陽太郎とはちゃんとした会話をするんだな。

 俺とは単語を並べるだけなのに。


「テメー何して何入れ知恵した!? 桐花の雰囲気全然変わってんじゃねーか!」

「な、何もしてねぇよ!」


 桐花の表情が変わったってことか? 一目で分かるほど?


「いーやなんかしただろキモい何か!」


『キモい何か』ってどういうこと?

 キモヲタは褒め言葉だけどヲタ無くしたら侮蔑でしかないんですけど。


「な、何もされてない!」


 あら、桐花に擁護してもらえた。


「へー。仁那も随分うちの弟買いかぶってくれてんね。こいつにそんな甲斐性あるわけないしぃ」


 ぐぬぬ。

 嗣乃に言われるとすんごく腹立つ。

 勝手に俺を弟認定しやがって。


「あーそっかー。そうだよなー。なんせつぐの弟だもんなー!」


 うわぁ、瀬野川さん焚き付けてらっしゃる。

 でもライバルを煽ってどうすんだろう。


「ほぉーう何が言いたいんじゃ瀬野川の?」

「言うたまんまのことじゃワレェ」

「あぁーん?」

「あぁーん?」

「二人とも仕事してよ!」

「「はーい」」


 白馬さんパネェ。

 この二人を一言で黙らせるとか。


「うえぇー! 他の教室にもいっぱいあるよぉ? これ全部降ろすのぉ?」

「はいはい愚痴はいいからやりまっしょい」


 杜太と多江も来たってことは一年生全員回されたのか。

 これだけの人数がいても、数回は往復しなきゃならないだろう。


 体はきつかったが、気分は良かった。

 やはり、人と相談するのは良いことなんだな。


 桐花から、「さんせい」と一言、漢字変換されていないチャットが届いていた。人目を盗んで入力したんだろう。

 その後送られてきたのは黒板の写真だった。

 身勝手な妄想に賛同してくれる味方を得た気分だった。


 皆揃いもそろって揃って陽太郎を好きになりやがって。

 でも、はっきりと批判はできなかった。


 あいつらが陽太郎を好きになるのはとても自然なことだと思う。

 陽太郎はボケてはいるが、不思議な包容力と優しさを持った奴だ。

 見た目以上に中身の良さが際立つ。


 だけど、瀬野川にはできればもっと視界を広げてもらいたかった。

 白馬は見た目に男性的要素は少ないけれど、俺達の中では一番芯のある男だ。


 多江だってそうだ。

 今はまだ、杜太に好かれているなんて気づいてすらいないだろうけど。


 一番の問題は陽太郎自身だ。

 暴走機関車みたいな嗣乃をコントロールできるのは陽太郎だけだし、残りの人生も賭けてそうしていてくれないと俺が困る。

 嗣乃の良さは陽太郎にしか理解できない。


 思考を整理しつつ、パイプ椅子を左右に二つずつ抱えて階段を降りていく。

 だが、踊り場ごとに休まないと動けなかった。


「だ、大丈夫?」


 パイプ椅子を左右の手に三脚ずつ抱えた桐花が駆け降りてきた。


「あ、ああ、大丈夫。また太ももの裏吊りそうになっただけだから」


 無言で俺が持っていたたった四脚のパイプ椅子を奪おうとする。


「いや、これくらい運ぶから!」


 情けない。

 パイプ椅子六脚持った桐花にエスコートされながら、たった四脚をふらふら運ぶハメになるとは。


 これが俺自身の現状だ。

 安佐手月人は今日も恥が服を着て歩いているような奴だった。

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