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セカンダリ・ロール  作者: アイオイ アクト
第二十三話 ヘソ曲がりとカップル未満と翻弄される少年と
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ヘソ曲がりとカップル未満と翻弄される少年と-1

 夏ってこんなに長かったっけ。

 中学は片道徒歩二十分、だらだら歩いて三十分。

 小学校も同じようなものだった。


 一方高校は自転車で五十分程。

 毎日六十分程多くの時間を外で過ごしている程度なのだが、それだけで季節を実感してしまうとは。


 認め難いが、外に出ることは大切だ。特に朝外に出るのは大切だ。

 夜更かししてしまった日でも、体内時計を保てば翌日に響きにくいということだけは分かった。


 寝不足だろうがなんだろうが、高校へと続く坂道にも随分慣れたもんだ。

 今日は俺一人早く行く必要があるので、新鮮な孤独感だけは感じた。


 疲れはするが、毎日嫌だと感じる時期は過ぎた。

 ただただ心を無にして登っている自分に気付いていた。

 今日も休日なのにちゃんと学校へと行く。ぼくちん偉い。


 いつも以上に疲れる時は体調が悪い時だから注意しろと桐花に言われている。

 今日は調子が良いと判断して良いだろう。


 本日の交流会は、嗣乃の発案で我が高校の会議室を使うことになったらしい。

 時間が限られる公民館の貸し多目的室よりも、いつまでも使っていられる場所として校内の大会議室を使うという決断をしたそうだ。


 さらに、ドキュメントのクラウド共有を紹介したいと言い出した。

 それくらいどこでも使っていると思っていたが、そうでもないらしい。

 会議している時しか意見を出せないなんて時間の無駄だ。

 ネット上で常に議題に対する意見が出せるようにすればもっと意見が集まるし、集計しやすいと踏んだらしい。

 我が兄弟のアイディアは素晴らしいではないか。


 俺は俺で考えなくちゃならないことが多かった。

 まずはダンス部だ。

 あの笹井本部長氏は条辺先輩に対する行動に些かの問題はある。

 でも、学園祭の戦力になってくれるらしいので無碍にもできない。


 学園祭の貸出物の提出はもうすぐ期限を迎え、部室を持っている部は貸出物の引き取りを始めた。

 装飾に使う塗料の選定は美術部に任せて発注するだけで良いのだが、危険物扱いになる工具やら調理器具やらの管理は自治会の領分だ。


 しかし、どいつもこいつも「委員長!」「委員長!」「委員長!」と俺をパシりにパシりやがって。

 ちょっと、気分が良いじゃねぇか。


「あら……?」


 自治会室のドア開いていた。

 ここまで色々とぐちゃぐちゃと練っていた今日一日の計画は、すぐ崩壊してしまった。


「おはよう。早いね」


 爽やかオーラを食らって体が溶けてしまいそう。

 丸々とした旗沼先輩の人懐っこい笑顔は、夏休みを終えて少し精悍になっていた。ダイエットでも始めたんだろうか。


「お、おはようございます。何時からいたんですか?」

「バスから安佐手君が走ってる姿は見ていたよ」


 うわぁ、今来たことを爽やかに伝えられた。


「実は安佐手君に謝りたかったんだよ。条辺さんのこと」

「え、いや、本人に謝ってもらったんで」


 俺の中では済んだことにカテゴライズされているけど、旗沼先輩自身が納得できないなら仕方ない。


「条辺さんの代わりに弁解したいんだけど、聞いてもらえないかな?」

「は、はい」


 二つ返事でOKしてしまったが、そもそもそんな話を俺にして良いんだろうか。

 でも、意図があってしているんだろうから、聞くしかないだろう。

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