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贈り物

「はぁ、はぁ……ま、間に合った」


 本鈴が鳴り終えたあたりで、俺はなんとか新しい自分のクラスの教室へと到着することが出来た。心の小学校からこの場所までは、ひたすら長い坂が続いている。自転車で通学する者にとって、帰りは楽ではあるが行きが重労働以外のなにものでもない。

 駐輪場に自転車を停めた時点で時計に目をやると、時刻は八時二十分を示していた。今日から二年生ということもあり、教室の場所も何も分らないので、一旦校門前に設置されている掲示板の場所までひたすら走った。

 この学校、敷地面積が一般高校の約三倍ほどあるのでここでのタイムロスは命取りになる。幸い、二年の校舎は今いる正門の場所から近くにあったのでなんとか間に合いそうではあるが、


 キーンコーン、カーンコーンッ


「!? やっばい」


 予鈴が鳴っているのに気づき、慌てて校舎へと走っていった。


「よっ、久しぶりだね春人」


「あぁ、夏海か。ん、久しぶり」


「朝からマラソンとは、スポーツマンだね」


「うっせぇ」


 この子の名前は日向夏海(ひなたなつみ)。中学からの、いわゆる幼馴染という奴だ。セミロングの髪を後ろでくくっていて、水泳を小さい頃からやっている為か若干髪の毛も栗色だ。明るく人当たりの良い性格は密かに男子の人気を集めていて、俺が気兼ねなく話せる数少ない異性の一人でもある。


「っていうか春人、何でこんな遅かったの?」


「ちょっと家でゆっくりし過ぎちゃってな。後、心送ってたってのもあるし」


「ふーん、そっかぁ。そういえば心ちゃん、もう六年生なんだよねぇ。早いなぁ、時間が経つのって」


「なんかババくさい台詞だなそれ」


「フン、あんたみたいにジジくさい奴に言われたくなんかないわよ」


「へいへい、悪ぅございましたー」


「全っ然思ってないくせに!なによ、こっちは探すの大変だろうなと思ってわざわざ教室の場所もメールしたってのにさ」


「は?メール?」


「そうよ……って、あんたまさか見てないの」


「悪ぃ夏海、見てないわ」


「はぁー……あんったは、どうして昔からそんな」


「あ、あははは」


 頭を抱えて座り込む夏海に、少々申し訳ない気持ちが出てくる。基本面倒見が良い奴だし、心にもよくしてくれる。ちょっと言い過ぎたかなと反省しつつ自分の携帯を取り出しメールをチェックしてみる。


(あれ?メールなんて着てないぞ?)


『おいマスター、こいつの携帯、メール届いてないみたいだぜ』


「え、そうなのレン?」


『なんかエラーメッセージが出たからな。停まってんじゃねぇか?そのガラパゴス』


「相変わらずクソ生意気なチビだな」


『誰がクソ生意気だ!? ガラパゴス原人め!』


「ちょっとレン、やめなよ。春人も、大人気ないよ」


「『フンッ』」


 この金髪碧目のちびっこいクソガキが夏海のAR(アプリロイド)、名前を「レン」という。見た目も性格もクソガキなやかましいAR(アプリロイド)だ。


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