ゆかりちゃんが病気になっちゃった 2
真坂は陽菜ちゃんに叱責されて肩をすくめて恐縮しながらも、ちゃっかりプリンをキープしていた。真坂をあまり見ていても仕方ないし、陽菜は寝床にいるゆかりに自然体で布団をかけてあげていた。
「ゆかりちゃん、いろいろあるんだろうけど徹夜とかあんまり無理しないでね。体に響いちゃうから」
「ついね……」
常識人陽菜ちゃんの優しさが心にしみる。弱っているとほんとうに心配してくれている人の心配りがわかるというものだ。
(ふふ。風邪ひくとみんな優しくしてくれるしたまにはいいかもね~)
そんなゆかりがふと横を向くと――
「ん~~、プリン美味しいね~ゆかりちゃーん」
先にプリンを食べて満面の笑みを浮かべている真坂の姿を目にする。
「変わんないわねアンタはー」
ある意味真坂がいつも通りすぎて、ゆかりは変な安心感のようなものを覚えるのであった。
「陽菜ちゃんは何でもテキパキこなすけど無理とかしてないの?」
真坂に質問された陽菜はおっとり型の成績優秀者である。プリンを口に含んでいたのでそれを飲み込んでから答える。
「私は出来ないことは出来ないっていうよ。徹夜できる体力ないから可能なこと計画で、出来ることを増やしていくの」
「へ~~」
真坂が自分にはできそうにもないことなので感嘆していた。
「陽菜ちゃん、か~っこいい~ね!!」
真坂はとにかく思ったままのことで褒める。
「残業しないけど、人の助力を上手く引き出すデキるキャリアウーマンになるかもしれないわよ」
ゆかりも一つの例を持ちだして、陽菜に良い面を伝えてあげている。
「そうだね。私は無理して効率落としたくないから、体調には気をつけているかも」
すごいということを真坂やゆかりが歓声のようにまだ伝え続けている。褒められて悪い気のしない陽菜は少し恥ずかしそうにしながらも嬉しそうにしていた。
お見舞いを終わらせる頃合いを見計らってか陽菜が席を立つ。
「じゃあ、私はこの辺でね」
「あっ、うん。ありがとうわざわざ」
お見舞いに来てくれたのでゆかりは感謝の言葉を陽菜に伝える。
「気にしないで、お大事に」
「陽菜ちゃん、また明日~!」
真坂が元気よく陽菜のことを見送っていた。
「気をつけてね」
陽菜がドアを開けたところでゆかりも見送りの声をかける。
「……あれ、真坂は帰らないの?」
これからは私の番だとばかりに真坂がはりきった表情をしていた。
「任せて! 今日は私が手とり足とり? 看病するから」
(陽菜――!! 帰ってきて~~!!)
ゆかりの嫌な予感が的中して、真坂が妙に張りきっていた。真坂の張りきり具合に嫌な予感しかしない。
「いやいやダイジョウブダヨ――!!帰りが遅いと家の人もシンパイスルヨー?」
ゆかりがドアの方へ押し出そうとしているが、真坂はそうされる理由がわかっていない。これ以上気苦労をかけてほしくないのだが。
「あはは、何言ってんの! ゆかりちゃんの両親は仕事で帰ってこれないんでしょ? 家も近所だし」
真坂の両親に会ったことあるけど、親友の看病なら泊まりこんで看病してあげなさいとか言いかねない『友達を大事にするよう』言い聞かせている人達だったなと思う。