インターネットを駆使して
はっきり言って、こんな授業は糞食らえだ。つまらなすぎて欠伸が出る。こんな課題なら調べなくたって自分が知っている情報だけで事足りる。
ただ、パソコン教室を解放した事は良かった。丁度調べたい事があったからな。
最近寝るたびに夢を見る。夢は見る度に違うシーンなのに自分として存在しているその人が全く変わらない。まるで連続した記憶を一つ一つ辿ってるみたいに。その原因が全く分からない。
俺自身に何か問題があるのか、それとも寝方に関係があるのか。改善策はあるのか否か。調べたいのはその辺だ。病院に行ってもしょうがないしな。
検索ついでに周りの様子も伺う。
インターネットより本を選んだ奴がかなり多かったのは予想外だったが、これはこれで好都合だ。
「あら?貴方は英雄について調べるんじゃなかったの〜?」
チッ、邪魔が入ったか。
「何を調べようと勝手だろ。」
「それはそうだけど〜、私は静くんの調べる事に興味があるのよ。だから聞いてるのっ。」
興味?はっ、笑わせる。
聞いて何になるんだよ。何の特にもならねぇっての。全く、無駄に話しかけてくる奴だな。
「邪魔すんな。」
「あらぁ?いいの~?私と仲良くしておいて損はないわよ?」
「・・・何の得があるって?」
損が仮にないとしても、得はあるのか?まぁ、得があったところでそこに魅力を感じなければ全く意味のない話だけどな。見たところ、興味を持つような内容はないと感じる。
俺に恩を売ったところで返しやしないのにな。馬鹿な奴。
「例えば~・・・そうねぇ。」
な、なんだよそんなにじろじろ見て・・・気色悪い。
嘗め回すような目つきとか、変態かよ。益々意味が分かんねぇ。うわ、鳥肌が立ってきた。
僅かに震えまで出てきやがった。
これは俺が俺に発している緊急シグナルか!?嫌な予感がするぞ。
ここまで酷いレベルなのはアレ以来だな。要警戒だ。
「貴方の恋路を応援しちゃうわよ?」
「・・・は?」
お前が俺の何を知っているって?何も知らないだろうが。
想い人が俺にいるとでも?非リア代表とも言える俺が?普段ゲームばっかしてる俺が?
もし二次元に恋してるなんて言ったらどうする気なんだよ。
しかも応援ってなんだよ。具体的に何をしてくれるってんだ。
静くんがんばれーとでも言うって?そんなのどうでもいいだろ!
俺がそう考えている間、目の前にいる女はずっとニコニコと気持ちの悪い笑みを浮かべていた。
「俺が、誰を好きだと?」
「ノエルちゃん。」
「・・・っ、はぁ!?」
即答かよ!しかもあの猫耳娘!!?
ま、まぁクラスメイトの中では確かに好みの方だしむしろ――いやいや流されるな!
これは罠か?なんかの罰ゲームか?新手の苛めか!?
疑っても疑っても相手に冗談だという様子は全くない。
「静くんって自分の気持ちに鈍感なのね。でもそこがまたそそるわぁ~っ♪」
「攻略対象ってことかよ。」
「ん、何か言った~?」
こいつが俺と同じオタ属性なのは知っていたし、シリキっていうキャラクターにぞっこんなのも知ってた。だからこそ対峙した時にそれを使って戦闘意欲をなくすよう仕向けたけどよ、それがまさかこんな事になるとはな・・・親密度が勝手に上がってんのか?
「俺はシリキじゃねぇぞ。」
「そりゃそうよ~。でもあの姿、似合ってたわよ?同じレイヤーとして仲良くしたいのよっ。どぉかしら~?」
あ、そういう事か。理解した。
俺があの時シリキの衣装を着たことに問題があったのか。それで俺に変な仲間意識を持ったと。
これはどうするべきか。あまり関わりたくねぇな。
でも味方は多いほうがいいか?俺に協力的な奴って今のところいねぇし、味方作るの苦手だしな。
一人くらい友達らしき人がいるのもアリか。確かこいつ璢夷の姉だったし、人材としては優秀な方だしな・・・。
そんな損得勘定をして、俺は結局表面上こいつと仲良くする選択をした。
後々変なフラグもたたないだろ、こいつなら。
ただ女装させられそうになったら速攻縁を切ろう。そうしよう。
あ、なら先に契約内容としてその件には関わらないとすればいいのか。
「さっきから何を考えてるの?」
「仲良くなるべきか否か迷ってる。」
「随分と正直ね~。まぁ、好きなだけ考えて頂戴~。私はいくらでも待つわよ。」
「そういや、俺が調べる内容に興味を持ったって言ってたよな。璢娘サン。」
「璢娘でいいわよっ。」
そんな事を言いながら頷く。
更には近くから椅子を持ってきて、俺のパソコンと机の近くに座った。
「そうそう。興味がね。ほら、勇者の鎧とかみたいにその人を象徴する服とかってあるじゃない?何かいい話知ってないかなって思って。」
「特徴的な服か。生憎そういった情報はないな。」
そう伝えるとあからさまにがっかりした反応をされた。
一体俺に何を期待してたって言うんだよ。まず洋服なんかそこまで気にしねぇよ。
聞く相手絶対間違ってんだろ。気づけよ。
「あ、服といえばこんな話があるぜ。大魔法発動前後の時代に、女装・男装してた奴がいたらしい。身分を隠すためとか性別を偽る為にな。」
今度はパッと表情が明るくなり、目を輝かせて口をパクパクしている。
何か言いたそうな様子だが言葉が見つからないらしく黙ったままだ。・・・と思えば、いきなり抱き付いてきた。
「おいおい何だよいきなり。ビビるだろうが。」
「あぁあああもう!静ちゃん大好き!!!ほんっとうに私の好みを分かってるんだからっ。」
「はぁ・・・。」
最悪だ、変に仲間意識を植え付けてしまったらしい。
誤解を生みそうだから本当にやめてほしいんだが。まず俺はお前に興味はないし。
「それで!?どの国にいたかは知ってるの?」
「そりゃ、色んな国にいたんだろうさ。詳しい文献は今んとこねぇな。まずそこまで調べこんでない。」
「昔から男の娘や男装女子がいたのね・・・素敵。」
「いやいやいや、お前おかしいだろ。」
「そんな事ないわよぉ。」
こいつまさか腐ってるのか?やっぱり関わるのはやめた方が無難か――?
「静ちゃん。これからも宜しく頼むわよ~?私も協力は惜しまないからっ。ね?」
「ほー。そりゃあ心強いことで。じゃあ今後宿題でも出たらノート見せてくれよ。あ、いやいっそのことやってもらった方が楽か?」
「そんなのお安い御用よ!後・・・ちょっとしたお願いが。」
「女装は勘弁な。」
「そ、それは残念。じゃ、じゃあシリキ様は・・・!」
・・・・これじゃまるで犬だな。
「仕方ねぇな。それくらいならやってやるよ。」
いいパシリをゲットし、大人しくしたところで作業に戻る。
“夢 見る 原因”と検索をかけると、レム睡眠・ノンレム睡眠やら熟睡枕の紹介やらなんやらがヒットした。他には夢占いなんてのもある。
「夢?夢が気になっているの?」
会話が終わった後も何故か居座っている璢娘がそう尋ねてくる。
適当に返事を返すと、こんなことを話し出した。
「夢ねぇ~。そういえば私も最近気になってる事があるのよね。毎日毎日夢を見るのよ~。熟睡できてないのかしらね。起きたとき、何となくぼんやりとしている事が多くて困っちゃうわ。」
「!!!」
お前もなのか!?という言葉は上手く喉元を通ってこず、声にならない叫びだけになってしまう。
夢を見続けているのは、俺だけじゃなかったっていうのか?
「その夢って連続してないか?次の日には前日の続きがさ。」
「そうそう。何で知っているの?まさか、静ちゃんも?」
「俺も夢を見ている。毎日毎日。」
璢娘とやりとりをしつつ、関係のありそうなサイトを開いたり閉じたりする。しっくりくる内容は今のところない。
「夢の中では私、生きていなかったの。ちゃんと璢夷も璢胡も・・・もいたのに。」
「ん?璢夷と璢胡の他にも――」
「沙灑くんや美麩ちゃんにそっくりな子もいたのよ。絶対おかしいわ。」
「普段近くにいるから夢に出てくるのかもな。」
何件かアクセスブロックされイライラが募る。未だにいいサイトが見つからない。
インターネットで引っかからないなら、本で探すにはもっと時間がかかるはずだ。こんなに見つからないってことは、情報がないってことなのか?
「静ちゃんはどんな夢を?誰が出てきたの?」
「確か、心向らが出てきた・・・気がする。」
「政宗ちゃんや真希くんが?」
「・・・こ、これは。」
誰かの日記に、俺らと同じ症状が出ているといった内容があった。
日記は何日も続いており、内容やそれを直す為に行ってきた事などが記載されていた。
あまりにも不気味で病院にいったが何の異常も見つからず、薬も効かなかったとのこと。カウンセリングを受けても効果はなかったらしい。
その人も毎日同じ人の目線で夢を見ておりその内容はいつも違って、尚且つ続いていた。
後日夢で見た内容を歴史と照らし合わせていくと、セミリア・ファルの大魔法発動の50年前くらいからの歴史が近く、風景や人物もそうだという事が判明したらしい。
この日記を書いた主はこう結論づけている。
“これは予知夢の反対の現象で、昔に起きた出来事がそのまま夢として表れている”と。
「・・・どう思う?」
その日記を読んだ後に璢娘に意見を求めてみる。璢娘は真剣な眼差しでこの日記を読み、そして唸っていたが、やがてこう口にした。
「その通りなんじゃないかしら。つまり、私はその時代には生きていなかったのね~。その時代は空想の世界に生きていた、と。」
「どういう事だよ?空想の世界がどうとかって。」
「簡単に言うとね、私・・・夢の中では死神だったの。」
璢娘の発した「死神」という単語。その単語に俺の体は異常な反応を示した。
急に胸が圧迫され、息が吸えなくなる。息もヒューヒューという変な音になり吐き出せない。
汗が流れ出て、急激に熱が下がっていくのを感じた。
意識が段々と遠くなり、目の前がどんどん霞んでいく。
まるで“こちらの世界が夢だったよう”に。
「ちょっ、静ちゃん!?どうしたのっ!!!?」
夢の中の俺は、どうしようもない奴で他人から嫌われて遠ざけられていた。
自身にあった奇怪なソレが俺を化け物に仕立て上げていたからだ。
どうして他の奴にはソレが存在しない?何故俺の色はこんなにも――――汚いんだ。
ソレさえなければ、化け物なんて言われなかったのに。普通の人でいられたのに。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしt――――――――――
「どどどどうしよう!静ちゃんが!静ちゃんが死んじゃう!!!嫌、そんなの嫌よぉおぉおおおっ‼」
俺、ここで死ぬのか?ははっ、こりゃ傑作だ。
最初の友達は死神だってさ。笑えるだろ。地獄にいったら他の奴に話してやろう。
「静さん、聞こえる!?」
「気をしっかりもって・・・!川は渡っちゃダメ・・・・っ!」
「こうなったらもう、しょうがないわね!思いっきりいくわよっ!!」
突如頬に強烈な痛みが襲う。
それをきっかけに景色がぐんと近くそして遠ざかっていき、視界がクリアになっていく。
「ってぇ・・・っ!!」
ゆっくりと目を開けると学校の天井と電気が見えた。それと、何人かの顔。
なんだか少しほっとしてしまって、またゆっくりと目を閉じる。
なんだ・・・俺、助かったんだ。てっきり死んじゃったのかと。
「よ、良かった。意識が戻って・・・。」
「政宗ちゃん、真希くん、ノエルちゃん有難うっ。私、私~~~~っ、うわぁあああんっ!」
「心拍数が低下してたから焦ったよ~。・・・頬の傷、平気?」
あの痛みは本物だったのか。目を閉じたまま腕を動かして頬に触れると何かが手に付いた。いや、それが何かなんて事はとうに分かってる。でも敢えて考えない。
触れた瞬間に激痛が走る。この傷痕からすると・・・。
「わ、悪かったわね。でもこれで助かったならプラスマイナス0よね?」
「傷が残るからマイナスだな。」
「なっ・・・」
ノエルに引掻かれたに一票。見事正解ってところか。
「でもびっくりしたよ。まさかこれで目覚めるなんて。相当痛かったんだよね・・・。傷の手当するから、ちょっと待っててね。」
「電気ショック並ってこと・・・?」
「あーもう、やめてよ!私が悪者みたいじゃないっ。あれはその――――」
「気にすんな。助かったのは事実だし、傷なんてすぐ治る。」
「わーお、静くん男前。」
「静ちゃぁぁああああん!!ごめんなさいいぃぃぃっ」
目を閉じてると余計に心配させるか?
ぼんやりと考え、目を開けた。
目の前には泣きじゃくる璢娘と、救急セットを持った真希、心配そうに頬を見る政宗、腕組をしてどこか不機嫌そうなノエルが俺を囲んでいた。
俺が倒れたせいか、皆しゃがんだり床に座っていたりしている。
璢娘は泣きながら俺を起こし、そしてまた抱き付いてきた。一体これで何度目だ。
「えっ、二人ってそんな関係だったの?」
「違うと思うよ。」
「わだじがあんなごどいっだがら~~~~~っ」
「気にしなくていいから離れろ。鬱陶しい。」
「傷・・・思ったより深くなっちゃったわね・・・。」
ノエルが手を伸ばして傷のある頬に触れる。
ひんやりとした手がするりと傷口を撫でた。真希に手当を受けたので直接傷口に触れた訳ではないが、それでもそれなりの痛みは走る。
「ってぇ。」
それよりも、さっきの璢娘との会話のせいで変に意識してしまっているのをどうにかしたい。
視線を軽く逸らしただけでは全く対策にはならない。
「それにしても、急に一体何があったの?」
「死神って言葉に体が過剰反応を示した。それだけ。」
「禁句の中の禁句ってことかしら。気を付けないと。」
「その前には、毎日みる夢の話をしていたの。」
「夢・・・私も、見てる・・・。」
「僕も見るんだよ。政ちゃんと僕だけかと思ってた!」
「わ、私も見てるわ。てっきり自分がおかしいのかと思ってたけれど、違うのね。なんだか安心したわ。でもこれだけ同じ症状が出ているのっておかしいわよね。」
さっき二人で見ていたページを三人に見せる。三人は頷いたりして共感の意を示した。
どうやらここにいる五名は皆、同じ症状が出ているらしい。
だとすれば、クラスメイト全員に当てはまる症状なんだろう。原因はこの学校なのかそれともこの地域なのかそれとも・・・この学校にいる以外の人に聞きようがないので何とも言えない。
「原因は断定できそうにないな。」
「予知夢の反対なら、過去に因縁があるって事じゃないかな?」
「過去の私達が発している警告かもしれない・・・。」
「境遇が今と似ているからそうなのかもしれないわね。同じ事を繰り返さないようにってとこかしら。」
「それはいいとして、お前ら悠長に喋ってるけど課題は出来てんのか?」
すっかり授業の事が抜け落ちてしまっていると思い、そんなことを口にする。
するとノエルは慌てて元いた場所に戻っていった。課題が終わってなかったんだろう。
「僕は大丈夫。後ちょっとで終わりだから。それよりも、傷が心配だよ。」
「浄化はしたから傷が膿んだりすることはないと思う・・・。」
お節介な二人はそのまま話を続けるらしい。
「静ちゃんがまた倒れないよう一緒にいるわ。心配だもの!」
「あれは異常事態。そんな何度もならないって。」
「禁句を言われても?」
「多分。」
「過去に死にまつわる出来事があったのかもね。それこそ、今武器を持ってる理由みたいなさ。」
「かもな。心当たりはねぇけど。」
「私は・・・夢にちょっと心当たりがある・・・気がする。」
夢で見た出来事を覚えていて、なおかつ前世の記憶として少しでも残っているっていうのか?
それじゃあ、前世=夢の主で間違いないって証明になるかもしれないな。
俺の前世はあんなだったのか。そりゃ現世で捻くれる訳だな。
何か自分の性格に納得がいった気がする。
「その夢、詳しく聞かせろよ。」
今回は静視点でお送りしました〜。
それにしてもアレですね、月華といい静といい急にぶっ倒れるキャラ多すぎですね。すみません。
次回は政宗視点でお送りしますー。
それでは!




