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blanket  作者: 璢音
再び戦いへ
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本の虫が囁くその名前

時を同じくして・・・重要人物達の目の前で、自分が何をしていたのか。何を調べていたのかというと。

殆どの時間をミステリアの事を調べる事に使っていた。


緋威翔が積み上げていた本はいくつか手に取り軽く斜め読みはしてあるし、セミリア・ファルの情報は大体頭の中に入っている。これといって追加で調べる事はないはずだ。


対してミステリアはというと、セミリア・ファルのように詳しい内容や情勢を書き記した本が中々見つからないという事件が発生している。この国とは交流もあったはずだし、仲もよかったはず。現地の情報に勝る事はないと思うが、それなりに情報はあってもおかしくないはずだ。なのに見つからない。


やはり隣国・・・現地で調べたほうがいいのだろうか。

いやでもこの学校に編入してしまっているし、クラスメイトの事をもう少し調べる必要がある。

監視も含めるとして、あまり遠くへ行ったりこのメンバー達から離れる事はあまり良くない。

どうしたものか。その言葉が適切な状況だった。


授業で発言したガルデオンの情報も同時に調べていた際に、興味深い資料を見つけた。

内容はガルデオン(ミステリアの隣国)の衰退した理由。


その本にはミステリアに戦争を挑んだことが原因だと記されていた。


ガルデオンは剣などの武器を使用して戦う、キルシャと同じような国だった。

対してミステリアは科学が進歩した国で、今の便利な機械とかも元を辿ればミステリアで発明されたものが多いとか。魔法使いとは少し違うけれど、それに近い性質をもっていたらしい。


最初はガルデオンが優勢、途中からはミステリアが優勢に。

ガルデオンの実力者がミステリア城内に侵入しており王様と女王様を殺害しようと企んでいたが、それを知った王子はとてつもなく強い魔力の持ち主だったために魔法で刺客を撃退。


そこだけ聞けば両者互角の勝負に聞こえるけれど、王子が魔法を使ったことで状況が一変。

この国の人たちは魔法が使えない人が多かったみたいで、魔法を信じてはいなかった。

魔法を信じていたのは、魔法が存在していたセミリア・ファルに訪れた事のある人や、魔法が使える王様達の親衛隊や上層部の人たちだけ。

一般の人たちは魔法が存在していることを知らなかった。

それを好機とみたガルデオンの人たちがこの国の王子は「悪魔」だって言いふらして、国民を煽った。

元々王子に対して冷たいイメージを持っていた国民は、それを鵜呑みにしてしまって反乱が起こってしまった。

王様は悪魔に国を売った罰だと、女王様は悪魔と契約をして悪魔の子を生んだ魔女だと罵られ処刑されて・・・そんな闇歴史があったとはね。


歴史によれば、王家はここで全滅したとされている。ただ、王子だけ原因が不明。

反乱の原因となっているところを考えると、暴徒に殺されたと考えるのが一般的。

自殺などの推測もされていると記載されていた。


ミステリア国民を味方につけたガルデオンの猛攻は凄まじく、王子派の人々も次々と捕虜になったり殺されたりした。けれどその後にイア様の魔法が発動してガルデオンはほぼ無力化、それに気づいた王子派のミステリア軍が武器を使わずに魔法で対抗して(直接的に魔法で攻撃はしないで、間接的に使ったのでその際は自然災害という扱いになった)結果はミステリアの勝利に終わった。


たった一回の敗戦と、武器や兵器が無効化されたことによる国民の気持ちの揺らぎが国を廃らせた理由。

国土や民は戦勝国であるミステリアに吸収された。


戦争が終わった後、魔法に関する情報が一般公開され国民も魔法の存在を知ることとなった。

暴徒と化していた人たちは鎮圧され、煽られた国民達も冷静さを取り戻す。

そうしてこの国の王と女王の話は悲劇化され、王子派の中で信頼が最も厚く、人気のあった者がその後国を治めた。


この最後の部分、戦後に国の統治をした人物については触れられていないのは何故だろう。

信頼されていたという事しか分からない。外見も、功績も、性別でさえも。

国王とも女王とも書かれていないので、判断がつかない。


トップが決まる前に記されたものだからだろうか?



・・・とまぁ、こんな感じで一時間を過ごしていた。


それ以外に時々緋威翔と月華という人の事を観察していた。

どうにもこの二人はお互いを友達以上の何かと考えているらしい。

月華という人が緋威翔に気があるのは間違いないと見ていいと思う。


後は緋威翔が彼女の事をどう思っているのかというところ。


こんな事を気にするなんて自分からしたらおかしな話だと思うけれど、自分にないからこそ気になるのかもしれない。


羨ましいだとかそういう事ではなくて、単に興味があるというか。

そう思ったところで言い訳くさくなってしまうのは・・・気にしないでおこう。


そうだ、自分は恋愛小説を書いていたじゃないか。きっとそれの影響だ。違いない。

まぁあれは事実をもとにして書いているだけで趣味ではないけど。


《リスィちゃーん、あたし暇だよー。構ってよぉ。》


栞に身を潜めているアルテミスがこうして話掛けてくることもあった。

適当に脳内で返事をしておく。そうしないと延々と話しかけてくるから。


《そんな文章読まなくても、あたしが教えてあげるのにぃ。》


情報は自分で得るタイプなんだって。どうも話を聞くのは好きじゃないし。


《だってリスィちゃんの知りたい情報、あたしたちはみーんな知ってるよ?》


気にはなるけど聞いたら負けだし。


そこまで言うと諦めたのか、つまんないと一言溢して静かになった。

これで集中して作業ができる。


6時限目は何を調べようか・・・。

課題提出に関してはミステリアの件で大丈夫だと思うし、自分の気になる事を調べても大丈夫なはず。

とりあえず用紙に書いてから決めようかな。


5時限目のチャイムが鳴り、緋威翔は本を何冊か戻しに席を立った。

月華という少女は緋威翔と少し話してから仮眠をとる事に決めたようだ。

この短時間を仮眠に使えば、6時限目はすっきりとした状態で臨めると思う。


静かに睡眠をとる姿を見ていて、少し羨ましく感じる。

睡眠をとると自分は必ず夢を見る。しかも高確率でその夢は悪夢だった。

シーンは変わるものの、毎回同じ人と関わっていて、悪夢の際はどうあがいてもその人を救うことができないで終わる。

ある時は殺され、ある時は自害し、またある時は失踪した。

毎回その人の事を考え涙し、その涙で起床する・・・といった具合に。

たまに見る幸せな夢がさらに胸を締め付けてくるから厄介だ。

夢の中で自分は、その人の隣にさえいられれば――と、どこかの純愛漫画にありそうな思考をしていた。


「私のせいで・・・。」


ん?


「私のせいで・・・っ。」


誰が発しているのかと思えば、机に伏せている彼女から聞こえてくる。

悪夢でも見ているのだろうか。


「・・・全く、こういう時に限って。」


騎士ひいとはいないんだね。

彼女が助けを求めている時に縋れる人がいない状況は、辛いのに。


それにきっと。


“君のせいなんかじゃないよ”


目を閉じて深層心理に語り掛けるように脳内で呟いた。

きっと届いてはないだろうけど、それでも言うよ。


「イア姫・・・。」

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