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blanket  作者: 璢音
再び戦いへ
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夢で見たお姫様

彼女はセミリア・ファルの王様カミュと女王ミラの間に生まれる。

幼少期は城から少し離れた森の中の家でメイド達と過ごし、中々母親や父親に会う事は出来なかった。

当時は他国の戦争が多発しており、いくら平和を謳ったこの国もいつ戦争に巻き込まれるかがわからなかったからだ。


姫が10歳を過ぎると、ようやく城へ行き母親や父親と一緒に住むことが許された。

それまでに必要な知識や礼儀はメイドから教わっていた。

彼女は器量が良く、知識をすぐに吸収していたため10歳にして既に大人と同じような振る舞いをすることができたという。


それからは母親の元で次期女王としてのあれこれを教わることとなる。

母親であるミラが行った対策により、この国の治安や平和は守られていた。

その為に行ってきた事や元老院のことを知ることになる。


ゆっくりとする間はなく次々と知識を蓄える一方、母親の手伝いと称して国民の声を聴きに足を運んだり、会議に出席するなどして日々を過ごす。


しかしある日、母親であるミラが亡くなったという知らせが届く。

その時に彼女は隣国へ足を運んでいたため、知るのが遅くなってしまった。

彼女は悲しむ間もなく女王に即位する。


その日から大きな権限が与えられた彼女は、母が日々口にしていた“平和を保つには”を思い出し、そして対策を練る。当時15歳だった彼女にはどうすればいいのかなど分かるはずもなく、権力は元老院に傾いたものとなった。


そんな時、イア姫の元に一通の手紙が届く。それは隣国の戦争を知らせるものだった。

ガルデオンとミステリアの戦争が勃発しているというのだ。

今までキルシャやもっと遠くの国で起きている事は知っていたが、まさか戦争を好まない国が始めてしまうとは彼女も思わず、不安を掻き立てることとなった。


焦った彼女は元老院に掛け合い、強力な魔法の使用許可を得る。

それが今後の世界を大きく揺るがすことになる“武器消滅魔法”である。





―――思っていたのと違う姫の姿に、私は驚く。


世界一平和な、幸せな国で生まれ育ったお姫様。

そんな彼女が過ごした日々は決して楽なものではなく。


勿論、誰にだって辛い出来事などはある。一生を幸せだけで過ごせる人なんていない。

でもこれは・・・光で照らされることのない暗闇の部分だとでもいうの?

国民はこれを知らなかったとすれば、この著者も何者なんだろう。


慌てて本の著者を確認する。

著者不明、翻訳・杉原 康と書いてあった。


まさか不明だなんて。じゃあこれはもっと古い言葉で書かれていたのかもしれない。

それなら翻訳してくれた人に感謝しなきゃ。


さてと・・・これはどうやってまとめていこうかな。

彼女の事をまとめるにあたって、他に調べる事は。まず容姿だよね。

それからお城の事、元老院っていう人たちの事も調べなきゃかな。


一通りメモをして、次の本を探した。


どれがいいのかな?

手にとっては捲って次の本に触れる。これでもない、あれでもないと。


すると目の前にスッと差し出される一冊の本。差し出してきたのは向かいに座っていた人物・・・栞さんだった。

私がそれを受け取らずに驚いていると、ぐいぐいとまた差し出してくる。


「あ、あの?」


これを読めって事ですか?とは言えなかった。


「これ、参考になると思う。時間あまりないし急いだほうがいいんじゃないかな?」

「そ、そうですね。」


ありがとうございますと小声で言って本を受け取り、内容を確認する。

どうやらセミリア・ファルの政治の仕方が書かれたものらしい。

読み進めていくと、元老院の事が細かく書いてあった。


元老院は12人から成り立っていて、それぞれが高い位を持ち平等の権利、権力を持つ。

12の星座を宛がわれており、各星座の人々から選ばれた人がこの地位についているらしい。

元老院の他に意見を言える者も例外としていると書いてある。

その例外が、アンタレス、リゲル、シリウスの三人。この三人は王様や女王のお気に入りで、それなりの権力を約束されていた。なので会議中の発言権を持っていたという。

普段は執事やメイド等側近として働いていたらしい。


ここで私は以前出くわした、シリウスという人物を思い出した。

そういえば、イア姫がそう呼んでいたといっていた気がする。

シリウスっていう人は実在していたんだ。だとするなら、前世というのは?

もしかして本当なの?いやでも元々その人物の事を知っていて、騙っている可能性も・・・。


考えれば考える程に分からなくなっていくのは理解しているけど、でも。


その時、私の思考を遮るように5時限目終了のベルが鳴った。


「ふぅ、ずっと文を読んでいると疲れますね。月華さんも休んだ方がいいですよ。」

「はい。私もちょっと疲れちゃいました。少し・・・休憩します。」


知恵熱でも出ているんだろうか、何だかボーっとする。

この休憩時間の間だけでも目を閉じて少しでも落ち着いた方がいいかもしれない。


机に腕を置き、クッションのようにして顔を埋める。

すぐに意識が遠くなり、私は夢の世界に落ちた。


なんだかとてもふわふわする。


そうだよ、夢って普通はこういう訳の分からないもやもやしたものじゃない。

あの夢はやっぱり過去の記憶なんだ――――。

どうして信じられなかったんだろう。もしかして信じたくなかった?

私は私だと信じていたかったから?彼女の存在があまりにも自分と遠いから?

あまりにも知っている人に似た人たちがいたから?


でもあれは間違いなく―――現実。

目を背けても無駄。逃げても無駄。立ち向かわなければ何も変わらない。あの時彼女が決心したように・・・。


じゃなきゃ、二の舞になる。大切なものを失う。

そうなっても構わないの?それは嫌だよ。


突然無意識に始まる自問自答に戸惑いが隠せない。


大切なものを守る為には、殻にこもるだけじゃダメなんだよ。

時には大きく殻を破っていかなきゃいけないんだよ。

だって、盾が壊れてしまったら、何が貴方を守ってくれるの?

(たいせつななにか)が壊れてしまったとき、貴方は貴方でいられるの?


大切なものが壊れてしまったら・・・大切な人がいなくなってしまったら。

私は私でいられるのだろうか。そんなの、分からないよ。

でも、悲しくて悲しくてそれ以外、何も考えられなくなっちゃうよ。


ほら、そうでしょう?

だから、そうならない為にも・・・戦うの。

私みたいに逃げないで。私みたいな思いをしないでいいように。

負の感情に支配されたら駄目なの。過剰防衛をしてしまうから。

このままだと大変な事になってしまう、私のせいで―――――‼‼


私の・・・せいで?

どういう事なの?もしかして今私と問答していたのは―――


「月華さん。チャイムが鳴りましたよ。」

「――――っ!?」


ガバっと勢いよく起きた私は、直ぐに夢の事を思い出そうとする。


朧げな記憶を辿ると、誰か・・・ううん、イア姫との意見交換があった事を徐々に思い出す事が出来た。


ううん、それだけじゃない。


私が冷と意思の疎通をし始めた頃から見ていた夢の事も思い出してきた。

夢の中では私はお姫様で、色んな人に囲まれていて。小さい子が夢見た世界そのものだなって、起きてから苦笑いしてたっけ。


思えばあの夢も、この夢も一緒なんだ。どちらも夢の中の私はイア姫だったんだ。

こんな偶然はあり得ない。きっと何かがあるんだ。


栞さんが渡してくれた本には、セミリア・ファルを代表するお城の内部や位の高い人達の肖像画も載っていた。


どれも夢の中で見たもので、頭がパンクしそうになる。


私はごく普通の家庭に生まれ、ごく普通に過し――もっとも武器が出来るまでは、だけどとても王家と関係があるような人じゃないのに。私の身に一体何が起こっているというの?


「うぉっこいつ何か俺に似てる気がする!」

「図書室では静かにと――」

「んな事は分かってるって、カイン!それよりもっ。何々?ふむふむ。ほぉー?」

「でも言われてみれば確かに似ていますね。」


丁度開いた元老院の人達の紹介があるページを見ると、確かに似ている人がいる。

でもそれよりも私が気になったのは。


「それを言うなら、イア姫は・・・月華さんに瓜二つだと思うのですが。」


セミリア・ファル王国を統べる二代目女王、イア姫が私と似ているという事だった。





私が社会人になってから、一年が経ちました。

イア姫と違い要領の悪い私は知識を吸収する事があまり出来ず、失敗をして怒られたりしながら過ごしています。


諦めず、真面目に取り組んでいけば報われると信じて。


作中の彼女達は一年で多くの事を学ぶでしょう。

それを生かすも殺すも自分次第。是非彼女達には自身の力・皆の協力を得て幸せな未来を掴んでほしいものです。

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