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blanket  作者: 璢音
再び戦いへ
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課題提出に向けて

お昼休みはそれぞれ好きな場所でお弁当を食べる。教室で食べる人、噴水広場で食べる人、屋上で食べる人…うーん、私はどこにいこうかな?


支度を終えて教室を出て行く人が出てきた。

辺りを見回せば、食事の支度を始めている人もいる。


は、早く決めなきゃ一人になっちゃうかもしれない。それは流石に寂しいし嫌だ。


「月華ちゃーん?一緒にご飯食べない?」

「ぜ、是非っ!」


璢娘さんに誘われた私はすぐに飛びついた。慌ててノートなどを抱えて向かう。

璢娘さんの周りには璢胡ちゃんと氷椏さんがいる。


…今は自分から動けないけど、もう少ししたら自分から行動していくようにしないと。


「どこで食べましょうか?」

「何処でも大丈夫です。」

「じゃあ、お外で食べましょうよ!今日はいい天気よ〜?」


外に出ると暖かな光が差し込む。あまりの眩しさに私は目を細めた。光の熱はじんわりと肌に伝わる。これは絶好のお昼寝日和だぁ…。


「噴水広場にしませんか?」

「私はいいわよ!二人は?」


全会一致で噴水広場に決定した。


放たれた水は太陽の光を受けてキラキラと輝いている。

辺りの植物も太陽の恵みを受けているからか色鮮やかに見えた。


・・・どうやら先客はいないみたい。

私たちは近くのベンチに四人で座り、膝の上にお弁当を広げた。


今日の私のお弁当は、おにぎりが二つとから揚げとミニトマトと卵焼き。

おにぎりは一個が鮭でもう一個がおかか。なんとも女子力の低いお弁当だ。


皆のお弁当は・・・と軽く見てみる。

璢娘さんのは三食の彩が綺麗なお弁当。鮭フレークでご飯の中央にハートが描かれていて、その周りに卵とインゲン。見事なバランスと女性らしいデザインで・・・あぁ、とっても美味しそう。

璢胡さんのお弁当はレタスとハムや卵の挟まれたサンドイッチ。一口大でロール状になっているそのサンドイッチには、かわいらしい串が刺さっている。デザートとして用意されたりんごはウサギの形をしていた。

氷椏さんのお弁当は・・・?


「す、凄いっ!!!」


蓋をあけて出てきたのは可愛らしい猫のおにぎり。耳の一部だけ色が違う三毛ちゃんや、黒ゴマを混ぜた灰色の猫ちゃんがいる。ウインナーは端の部分を斜め切りにして端同士をくっつけてハート型にしてあった。他にもおさかなの見た目をしたおかずなどがある。


「氷椏ちゃんのお弁当はキャラ弁なのね!」

「器用なんですね、羨ましいです。」


皆のお弁当が女子力が高すぎてついていけない。どどど、どうしよう。


「手の込んだおかずが作れないので、見た目だけでも…という試みの結果です。時間は凄く掛かりますけれど、中々楽しいですよ。」


そう冷静に受け答えしつつ、いただきますと手を合わせ、おにぎりを持つ氷椏さん。

……今度作り方を教えてもらおうかな。


その後は四人でわいわいとおかずを交換したり雑談をしたりしながら過ごした。


「あら、もうこんな時間。戻らなくちゃね。」


名残惜しいけれど規則だから仕方ない。

各自お弁当箱をしまい、教室に向かう。


教室につくと、自然と黒板に目が向かった。

でかでかと書かれた自習の文字と、その下に小さく書かれた自習内容が対照的だ。

内容は4時限目が終わる際に話していたレポートで、各自自由に書いて6時限目終了後提出との事。


お題は「国」について。


「どの国にしようかしら〜。国が関わっていれば内容がちょっと変わっていても大丈夫よね。」

「姉さんは勿論、洋服の事でしょう?」

「そりゃそうよ〜。そういう璢胡は楽器…音楽ね?」

「はい、勿論です。」


二人とも武器に関係がある事を調べるんだ。

どっちのレポートも面白いものになりそう。

紙にイラストとかも描くみたいだし、見た目も綺麗なものになるんだろうなぁ。


「その話からすると、どの国を選ぶのかでかなり内容が変わりそうですが。」


氷椏さんが眼鏡をいじりながら問う。


「そうねぇ。どの国も興味深いのだけれど、やっぱりセミリア・ファルかしらね。あぁでもミステリアも捨てがたいわ。」


恍惚の表情で浮かべるのはきっと、豪華絢爛な舞踏会に出席する貴婦人達だろう。

ドレープを何段にも重ねた服がちらちらと頭の隅に浮かんだ。色とりどりの輝きを放つドレス。それに璢娘さんが食いつくのは必然だ。


「私は敢えてキルシャを調べてみようと思います。戦に使われた無骨な楽器…興味があります。」

「月華ちゃんや氷椏ちゃんは、何を調べるの?」


私はすかさずセミリア・ファルを調べると伝えた。

三人はそんな私の回答をある程度予想していたようで、うんうんと頷いている。


「月華ちゃんはそうよねぇ~。」

「私はミステリアについて調べてみようと思います。あの国は王様でなく王子が統治していた事で有名ですから。もしかしたらその一環で、セミリア・ファルの事にも触れるかもしれません。その時は情報提供をお願いしますね。」


どうやら氷椏さんはミステリアの歴史や文化といった総合的なことを調べるみたい。

璢娘さんや璢胡さんとは違ってテーマはないのかな。

それとも王子様がテーマ?


そうなると私はお姫さまがテーマってことになるのかな。

先生はその国のトップについては触れてほしいって話をしていたし、それはそれでありなのかも。


「ほかの人はどんなテーマにするかしらね~。」

「静さんはキルシャあたりで武器についてとか調べていそうじゃないですか?」


そうかも!なんて璢胡ちゃんに便乗する。そうした後で本人がこの教室内にいるかもしれないという事を思い出して慌てて教室を見回した。

・・・図書室に行っているのか、パソコンルームに行っているのかはわからないけれど、教室に彼はいないみたいだった。もし彼が聞いていたらどんなことを言われていたかを想像するとちょっと怖い。


「静ならパソコンルームに行ったよ。英雄がなんちゃらとか言ってた気がするし、案外そうだったりしてね。」


近くで会話を聞いていたらしい紫綺さんがそう話してくれた。

一方紫綺さんはというと、図書室で借りてきたらしき分厚い本を抱えて自身の席へ戻っていく。

タイトルは・・・何々?《作品一覧》?何の作品なんだろう?


「紫綺さん、その作品っていうのはどういう・・・。」


本を広げて目線を落としていた紫綺さんが、近づいた私に気が付いて顔を上げる。

上目づかいのようになっている彼の表情は、きょとんとしたものだった。

聞かれている事が何なのか一瞬理解できなかったのか、少し間をおいて本の背表紙を確認する。


「あぁ、これね。そのまんま。芸術作品とか、この時代に生まれた物語・・・小説とかの一覧。」

「となると・・・トリスティアですか?」

「そうなるだろうね。イア女王の魔法が発動してから何年か経った後くらいの歴史になるかな。」


へぇ・・・。芸術かぁ。芸術って言われると絵画とか彫刻とかを想像するんだけど、紫綺さんはきっと本の方に興味があるんだろうな。だって開いてるページに一切挿絵とかがないもん。

絵画とかの方を調べるなら、どんな見た目かっていうところは必ず確認すると思うんだ。

教科書でも、絵の説明の際は必ず1作品くらいは例として載っている。

つまり。彼が興味があるのは絵ではなく文!

紫綺さんらしいといえばそうかも。


「月華ちゃーん。図書室とパソコン室、どっちに行く~?」

「私は図書室に、姉さんはパソコン室に、氷椏さんは第7教室に行くそうですよ。」


選択肢に含まれなかった第7教室の件が気になり、すぐに質問で返す。


「第7教室もフリーってわけではないでしょう?何かあるんですか?」

「第7教室にはパソコンが一台あります。それに電話に出る人がいないと・・相談出来る人がいないと、あの教室に電話が置いてある意味がないですからね。」


困ったように笑いながらも、どうやら嫌ではないみたい。

生徒っていうより、事務員さんみたいだなぁなんて思った。

生徒にここまで任せるなんて、先生はよっぽど忙しいのかな。

人から話を聞くくらいならと丸投げしてしまっている感がある。


私にも手伝えることがあるといいのだけれど・・・。


「氷椏さん、私も第7教室にいましょうか?電話の応対ばかりでは、作業も進まないでしょう?」


私がそう伝えると、彼女は困ったように首を横に振った。同時に両手も左右に振っている。


「いいえいいえそんな。申し訳ないですよ!それに、そこまで頻繁に電話は鳴りませんので大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」


そこまで言われては追撃は出来ない。


じゃあどっちに行こうかな?

お互いにそれぞれ利点があると思うんだけど・・・。


探すのは大変だけどその分正確な歴史書か。探すのは楽だけど正確かは全く分からないインターネットか。究極の二択かも?


「まず楽器を知らないとですからね。」


どっちにするか考えあぐねていると、横で璢胡ちゃんと璢娘さんが話始める。

私はそれを何となく聞きながら、二つの利点と欠点を考えて頭を抱えた。


・・・結果、私は図書室に向かうことに決めた。


「私、図書室に行きます。」

「じゃあ一緒に行きましょう。紙は持ちましたか?」


璢胡ちゃんの一声を聞いて、すぐに紙を持つ。メモをとれるように筆記用具も持って、彼女の後についていった。


「じゃあ、二人とも頑張ってね。多分、提出後発表か飾られるかするだろうから、気合入れて書きなさいよ~?」


はーいと明るく返事をして二人と別れる。


図書室の扉を開けば、シンと張りつめた空気が自分を包み込む。

皆真剣に調べているのが良く分かる。


「じゃあ音楽関連の棚は向うなので、また後ほど。」

「・・・あっ、うん。」


空気に押され返事が遅れる。


そうして璢胡ちゃんともわかれた私は、セミリア・ファルの事を調べる為に歴史書がおさめられている棚へ向かった。


棚を発見したのはいいものの、どれを参考にしていいのかの判断に迷う。

歴史書はどれも分厚いものばかりで、読むのに時間がかかってしまいそうなものばかり。

ところどころにスペースが空いているところを見るあたり、内容が分かりやすそうなものはすでに他の人が読み進めていたりするんだろう。

何冊か手に取って眺めてみたものの、中々自分の求める情報にたどり着かない。


「うーん。難しいなぁ。」


そう言ってまた手に取った本を閉じる。

図書室に来てから時間が経っているというのに、分かったのは簡単な情報ばかり。

これなら教科書にも載っている。そんな内容。


「そうだよな。欲しい情報が全然出てこないぜ。」

「そうですよね~・・・って、え?」


いきなり降ってきた声に顔を上げると、そこには困り顔のケインさんがいた。

彼はどうやらこの棚に本を戻しに来たらしい。

よっと軽い動きでかなり高い部分に本を戻すと、腕を組んでため息をつく。


「ケインさんは何を調べているんですか?」

「セミリア・ファルにいた、とあるお嬢様の事でちょっとな。」

「お嬢様?」

「そう。やっぱこういう本じゃ難しいのかね。家にあった本には載ってたんだけどなぁ。ここに持ってくることも出来ないし何とも。こりゃ困った。違う事を調べるしかねぇかな。」

「そうなんですか・・・私もセミリア・ファルの事を調べているんですが、中々いい資料が見つからなくて。」


頭を掻いてそう溢すケインさんにそう伝えると彼は笑顔でこうアドバイスしてくれた。


「本に強いのは緋威翔だとか、栞さん・・・だっけか。あの二人らへんじゃないか?璢夷はもう調べ終わって記入する作業に入ってるみたいだしな。そういや二人のとこにたくさん本があったはずだぜ。」

「そうなんですか!ありがとうございます。」

「二人は違う国を調べてるみたいでさ、二人と同じ国を調べてる人たちもその辺りに固まってるみたいだぜ。早くしねぇと、ほかの人に使われちまうかもな。」


頑張れよ、と背中を押してくれる。私はもう一度お礼を言ってから二人を探し始めた。


二人は同じテーブルの向かいに座っていて、人も何人か集まっていたのですぐに見つけることができた。

二人とも凄い集中をしていて、とてつもなく早く斜め読みをしているみたいだった。

でも大事な部分は見落としていないようで、時々メモをとる仕草を見せている。


近づいて二人がどの国を調べているのかを探ると、緋威翔さんの机にはセミリア・ファルの資料が固まっており、栞さんの方にはミステリアの資料が固まっている。


「栞さん、ミステリアの王様や女王様の事を知りたいのですがお勧めの資料はありますか?」


本の山を探っていた真里亜さんがそう問うと、栞さんは目線を本から動かさずに答える。


「上から6番目の295ページ、8行目からを読むといいよ。あと、401から403ページもいいかも。」


それを聞いた真里亜さんが半信半疑といった様子で言われたとおりに本を探し開く。

真里亜さんの斜め後ろから本の内容を確認すると、確かにさっき伝えた通りの内容が記されていた。


「あ、ありがとうございます!まさかこんなに細かく教えてくださるなんて。」

「あぁうん。覚えてる範囲なら答えるよ。」


まさか本の内容をすべて覚えているというの?あの速さで読んでいるのに?

そんな超人みたいなこと・・・。


「流石ですね、凄い記憶力だ。」


本から視線を上げて、栞さんにそう話かける緋威翔さん。

だけど、栞さんは相変わらず本から目を離さずに、そんな事はないと答える。


「同じ事ができる人に言われてもね。」

「いえ、僕には出来ませんよ。せいぜいどんな内容が載っていたかを覚える程度です。ページや行を覚えるなんて真似、僕には。」

「さぁどうだろうね、君は取り繕うのが得意だからなぁ。」


フッと軽く笑う栞さんに、少しだけピクリと反応を示す緋威翔さん。

あまり二人が話しているのを見たことがないけれど、これって仲がいいって言えるのかな?

どちらかといえば、栞さんが緋威翔さんを遠ざけているような気がする。

遠ざける理由は何なんだろう。でも、遠ざけたいのなら、なんでこんなに近くにいるんだろう。

テーブルは他にもあるのに。


二人はそんな会話を交わした後、すぐに元の作業に戻った。

栞さんは普段と変わりなく黙々と作業をしているけれど・・・。


「緋威翔さん、どうしたんですか?少し顔色が悪いような。休まれたほうがいいんじゃないですか?」


心配になって彼にそう話しかけてみたものの、彼は大丈夫ですと笑って返す。

無理をしているのかとも思ったけれど、さっきの顔色が嘘のように消えていた。

栞さんのさっきの言葉が引っかかって抜けなかったけれど、彼がそう言っているんだからと言い聞かせる。


「お気遣いありがとうございます。そういえば、月華さんは何を調べているんですか?先ほどは歴史書の棚の近くにいましたよね。」

「セミリア・ファルについてを調べているんです。緋威翔さんももしかして?」

「はい。興味がある事がありまして。それにしても申し訳ない事をしてしまいました。ここにある歴史書が必要だったんですよね。」

「あっ、でもこうしてまとめてあったほうが探しやすいですし。それに取り組むのが遅かった私が悪いんです。・・・お隣の席、お借りしてもいいですか?」

「どうぞどうぞ。僕で良ければ手伝いますよ。栞さんほど詳しくは伝えられないですが。」


彼の隣に座り、一番上に積んであった本を手に取る。


パラリとページを捲ると、色鮮やかな挿絵が出てきた。

セミリア・ファル王国は平和な国だと伝えられていたというのは知っているけれど、どんな地形だとか、どんな建物があったとか、どんな人がいただとかそういう事は全くと言ってもいいほど知らない。

イア姫の視界を通してみた景色しか分からない。

いや、そもそもあれが本当とは限らない。夢の世界なんてなんでもありなのだから。

ひょっとしたら、あれも全部私の妄想なのかもしれない。


・・・なのに。そんな状態で見たこの挿絵は何故かとても懐かしく感じた。

挿絵のタイトルには、セミリア・ファル式庭園と書いてある。

咲き乱れるバラ園を模したその絵には、建物も人物も描かれてはいない。


いけないいけない。綺麗な絵だからと見入ってしまった。

私が調べなければいけないのはこれではない。気になるならまた今度調べればいい。


私はまたページを捲る。


ゆっくりと内容を確認しつつ数ページ進んでいくと、途中でイア姫の事を記載しているページがあった。

漠然とセミリア・ファルの事を調べるとしか考えていなかったけれど、彼女の事を調べるのが一番いいかもしれない。

夢に出てきた景色も、人も・・・気にはなるけれど、先に彼女の事を知らなくちゃ。

作者でさえもこんがらがってきた模様。

本格的に資料を作らないとアレですかね。


掲載当初はこんなに続くとは思ってませんでした。

完結すると思っていたではなく、体力といいますか・・・ね。

何はともあれ、次回も頑張りますー。

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