キルシャという国、その他隣国
矛盾点がないか不安です。あったらご指摘ください(←無能)
「あの女の子の武器はナイフとフォーク、男の人の武器はお皿……。見た目はーーっと。」
カタカタと軽い音が聞こえたかと思えば画面いっぱいに映される沢山の文字。
これらは後々武器所持者の資料となる。
資料倉庫となっている第七教室の管理を任されている彼女には資料を作成するという仕事があった。
それは彼女が戦闘向けではない能力の持ち主であり、情報収取能力が高いことに目をつけた先生が決めた事だった。
ついこの前、第七教室に置いていた資料が盗まれるという事案が発生した事で彼女は焦っている。
あの資料には、この学校の生徒の武器や能力・性格や思考のタイプといった情報が事細かに記入されていた。もし、それが敵対勢力に渡っていたらーーーそう考えた彼女は恐れのあまり震えを抑えることが出来ない。
今もその事を思い出しては静かに震えている。
今日は資料に加えるべき情報がとれた。彼女にとって喜ばしい事だ。素直に喜べないのは残念ではあるが。
「名前…なんて登録をしよう。」
名前を知らない彼女は、悩ましげにキーボードを打ってはマウスを使い一括で消すという工程を繰り返している。
なかなか合う名前が浮かばないのだ。
暴食少女では悪口になってしまう。かといって少女とだけ記入するのでは特徴が無さ過ぎる。
さてどうしたものかと彼女は頭を抱えた。
《Mailが届きました》
彼女の操作していたパソコンのディスプレイにそんな文字が表示された。
メールを誰かとやりとりしている記憶はないが、だからといって迷惑メールと決めつけるのは良くない。彼女はそのような結論を出し確認のボタンをマウスでクリックした。
画面がメールのそれに切り替わる。
《件名:少し話がしたい》
見るからに怪しそうな件名に思わずマウスで画面右上に表示されたバツ印を押しそうになる。
いやいや、差出人と内容を確認しなければ。
差出人のアドレスの頭はFksntbs。適当にアルファベットを並べただけのように見える。
して、内容は?
何の話をしたいというのだろう。
《本文:いきなりメールをした事は謝る。メールアドレスを知らないはずの人からのメールで困っただろう。
だけど今はそれを置いておいてほしい。
さて、本題に入ろうか。
この前、第七教室から資料が盗まれたと聞いた。あの資料は一度先生の許可を取って見たことがあるから内容は知っているーー》
名前は分からないが、内容的にクラスメイトの誰かかららしい。
全文を読んで分かったのは文章中の話し方からして男性だろうということ、クラスメイトであること、そして武器に詳しい人物であることの三点だ。
話し方的に璢夷或いは聖夜が送ってきたのでは?と彼女は推測する。
本文の最後には、返信が欲しいと書かれている。
彼女は与えられた情報で、あらゆる可能性を模索し始めたーー結果、返信を送る事を決意した。
《件名:どなたか存じ上げませんが》
タイピング速度が徐々に上がっていく。
話の内容が彼女にとって、とても興味深いものだったからだ。
向こうが多く話してくれるのであれば、こちらは聞くだけでいい。知識は蓄える事が可能だからだ。
意見を求められたらその時に考えればいい。話す価値は充分にある。そう彼女の脳内では答えがはっきりと出ていた。
一通のメールを送り暫くすると、さらに返信が返ってきた。
すぐに返事を打ち込み送信する。
高速の文通は明日へ持ち越しになってしまう程に、白熱したものとなった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「あーん、もう、やんなっちゃう!!」
50分の座学を終えて、ノエルさんが伸びをしつつ言った。
昨日の事でこってりお説教をされ、実践授業が中止になり、一時限目からずっと座学座学座学。
私はそうでもなかったけれど、身体を動かす事の方が好きな人にとっては退屈以外の何物でもないみたい。
授業中、聖夜さんは顔に教科書を被せて椅子に寄りかかり寝ていたし、静さんは真面目にノートをとっているかと思えば陰でゲームをやっているし、璢娘さんは多分(聖夜さんとは違う意味で)夢にトリップしてる。千佳ちゃんは紫綺さんの隣で質問をしてるみたいだけど、聞こえるのは授業に関係のないものばかり。
霧雨さんは何かぼーっとして授業に集中していないし、幟杏ちゃんは静さんのゲームを覗き込んでいるし、真琴さんはここぞとばかりにセイラさんに猛アタックしてる。
…結果は惨敗みたい。
授業に集中出来てない人達に意見を求めると、非日常が重なりすぎて普通の授業に面白味を感じられないとか。
そんな中私は、頭の中に残った靄を解消すべく、授業に取り組んでいた。
「この時間は、隣国について…1カ国に絞るか。何処がいいか決めてくれ。多数決な。」
隣国と言えばトリスティアとキルシャとミステリアだったっけ。
どの国がどんな国だったのか分からないや。
「私はキルシャ王国がいいのですが、皆さんはどうでしょう?」
セイラさんが積極的に意見を求める。
大半の人は異論がないみたい。
「キルシャで構わないが、選んだ理由を聞きたい。」
「璢夷さん…貴方は他の国に興味があるように思えますけれど、いいんですの?」
「構わん。続けてくれ。」
「そうですね、理由は…‘‘最初’’の武器を一番使ってますし、非武装の武器を最初に作った国ではないかと思ったからですわ。」
最初のっていうのは魔法が掛かる前に使われていた、非武装って言われていない方のって事だよね?
使っていたからこそ、無くなった事によるショックは大きかった。だから、非武装の武器も生まれたんじゃないかって事かなぁ。
流石セイラさん。色々考えてるんだなぁ。
「そういうことか。成る程。」
「討論か、いいねぇ〜。あれこれ考察したり討論した方が学べる事が多いぞ?じゃんじゃんやってくれたまえ!」
先生が二人に感心しつつ教壇近くにある椅子に勢い良く座る。
ガタン!という大きな音をたてたせいか、聖夜さんが驚いて起きた。
「よし、じゃあ先生も輪にいれてもらうとするか。星本!今回はキルシャでいくので決定するが、基本情報は知ってるか?」
さっき椅子に座ったばかりなのに立ち上がり、黒板に大きくキルシャと書いてまた座る。
手に持った教科書というか、資料を持って開いたページを軽く人差し指の背で…まるでドアをノックするように二回叩いた。
この本に書いてあるぞ、って遠回しに教えてくれてるのかな。
「セミリア・ファル王国の隣国であり、昔は戦争ばかりしていました。戦争で国土を広げていた国で、魔法が発動した後にトリスティアがキルシャから独立しました。」
「その通り。セミリア・ファルの・・・おおまかに言うと南に位置する。国は広いほうだな。セミリア・ファルより広い。」
王様が独裁者かつ戦略家で、国は大きくなっていく一方・・・ゆくゆくはこの世界を支配するのではないかといわれていたって教科書には書いてある。
今はこの国はなくなっていて、セミリア・ファルの一部になってるみたい。
こんなにも強い国がセミリア・ファルの一部になったのは、やっぱり武器の精製が出来なくなったからなのかな?
さっきの情報が載っていたページを捲ると、次のページにはこんな事が書かれていた。
キルシャがセミリア・ファルの一部になったのは、三代目国王が権利を譲渡した事がきっかけだった。
キルシャの第一国王は血の気が盛んで戦争を度々仕掛け、国土を広げていたが急病に倒れる。
第一国王の側近だった人が第二国王となった事で国の方向が変わった。
そして第二国王の子である第三国王が職務から解放される為に土地や権利をセミリア・ファルに譲渡。こうしてキルシャはセミリア・ファルの一部になったみたい。
そう考えると、最初のイメージはどっかに飛んで行っちゃう。
「職務放棄って。なんちゅう王様やコイツ。」
「まぁまぁ。王様ってのはいつ殺されるか分からないデンジャラスかつ面倒な役職だからな。」
「すぐ陰口言われるだろうしね~。」
顔をしかめるアルバートさんに先生が笑いながらいった。聖夜さんも追撃する。
王様って国の顔だから、見た目とか性格とかとにかくカリスマ性を持っていて、できる人じゃないと支持されない・・・信用を失ったら一揆とか革命とかで国民に殺されかねないし、戦争とかで国を広げるような人なら、戦中にやられちゃうかもしれないし・・・そう考えると怖い職かも。
「そんなのテキトーに金で動くやつらと信用できる超つえー側近がいれば大体なんとかなんだろ。」
「それどっちかに裏切られるパターンだって。」
「それにそういう人って女の人に弱いわよね。面白いくらいに。」
「エロ爺のイメージしか浮かばねぇ・・・。」
なんとなく言ってることはわからなくもないけれど、それはダメな国王の典型というかなんというか。
「結局、国の中で一番実権を持つ人って、頭のいい女の人か、強い軍人さんだったりしますよね。」
「そりゃあ自分たちに優しい人か、ついて行きたいって思わせるような人じゃなきゃ無理だろうな。」
「おーい、ちょっと話がズレてきたぞ?お題はキルシャな?」
理想の王様についての話し合いになりそうなところを先生がストップさせる。
この話はまた今度しようと言って、話をもとに戻した。
「キルシャと言えば、豪快な料理で有名だったわね。肉料理とか。」
「お肉に齧り付いてそう。しかもレアの肉汁滴るやつを。」
「そうだな、充分にありうるぞ!」
「キルシャの伝統服ってどんな感じなのかしら~?」
「獣の皮とかかぶってそうだよな。」
「加工はするだろ、この時代的に。」
「頭とかはそのまま使うかもよ?」
「宗教は何だったんだろう・・・?」
「ロザリオとかあったのかなー?どっちかっていうと、実在してる将軍さんとかを軍神扱いしてそうだよね。」
それぞれがそれぞれの気になることを羅列して、周りが連鎖して反応していく。
私が気になることは・・・
「他の国との関係性ってどうだったんでしょうか?」
ほんの軽い質問のはずだった。なのに、この話題は先生の望んでいたものみたいで。
「いい質問だな鏡!!!」
すごい勢いで食いつかれてしまった。
「確かセミリア・ファルと仲が悪かったな。大事な商売道具を使えなくさせたからと。恨んでいる人も多かっただろう。」
「私が気になって調べたところ、ミステリアとは交流があったみたいですね。魔法が使えない国同士だったからでしょうか?」
「トリスティアとはーーー微妙?だって独立するときに戦争とかしてなかったし。むしろ仲がいいほうだったんじゃないかな。」
皆ちゃんと勉強してるんだなぁ・・・というか、いつそんなことを調べていたんだろう。
私勉強不足なのかな、なんて心配してしまう。
「ガルデオンとは。」
知らない単語がいきなり後方から飛び出してきた。
発言者は・・・栞さん?
「ガルデオンとは最初仲が良かったみたいだよ。ま、ある日を境にガルデオンは消滅しちゃったんだけどね。」
ガルデオンって何だろう?話を聞く限り、地名みたいだけど。
「おお、良く知ってるな。まさかその名前が出てくるとは。ガルデオンはなミステリアよりも更に北にある国の名前でな、キルシャと同じく実力主義で独裁社会化していた国なんだ。キルシャの強化版って言えば分かりやすいな。」
「同じ見解だったから一時は仲が良かったというか、気が合ったってことだね。」
「そういう国同士って潰しあいそう。」
「そんなことはなかったぞ?キルシャと戦った記録はない。そんなこの国はキルシャと違ってミステリアに反感を抱いていたらしいな、それ以外はあまりわからん。なんせ滅びちまったから資料があまり残ってないんだ。」
滅びて資料がなくなったってことは戦争とかで負けて滅ぼされた、とか?
普通そういう資料ってほかの国で保管されていそうだけど、見てはいけない内容だったから・・・例えば、禁忌とか。人体錬成みたいなね。
「ミステリアと交戦して負けて、資料は燃やされたってさ。」
「お前、やけに詳しいな。知り合いに学者でもいるのか?」
「歴史に詳しい・・・ものがいますね。」
「興味深い。」
先生と璢夷さんが興味をそそられているみたい。
「ミステリアって科学が進歩したっていってましたね、先生?」
「そうだぞ。」
亜里亞さんが先生に確認をとる。何か質問したいことがある様子で、教科書に書かれた何かを同時に確認してから先生に言った。
「キルシャと同じような国なら、武力系ですよね?戦争があったのはいつですか?」
「あの魔法が発動する少し前だな。」
「だとすれば、魔法発動後は丸腰に近い。だからミステリアに負けたんですね。」
先生の答えに納得した様子の亜里亞さん。真里亜さんも頷いている。
武器がなくなることを知らなかったなら、相当パニックになるに違いないし、ミステリアは剣とかは使用しない。それだけなら有利に思えなくもないけど、魔法は武器扱いにならないのかな?あれ?でもミステリアには魔法使いは少ないはずで・・・一体どうやって勝ったんだろう?
そう考えたところでチャイムがなった。
この後は昼食で、次の授業も座学。確か次は武器の扱いについてのレクチャーだったはず。
「よーし、今回はここまでだな。中途半端になっちまったから、宿題をだすぞ!」
数人からブーイングが飛んだけれど、先生は見事にスルーした。
「各自気になる国の事をこの一枚の紙にまとめろ。パソコン室と図書館は解放してやるから、時間内に完成させて提出すること、いいな?」
そういって先生が大きなスケッチブックくらいの大きさの紙を持ってきて配った。
ちょっと厚みがあるタイプで、マジックとかのインクペンで書いても裏移りはしなさそう。
一か国選ぶのかぁ。だったらやっぱりセミリア・ファルのことかな。
イア姫の夢の件もあるし、いろいろ知っておきたいから。うん。決定。
「五時限目の授業は変更という事ですか?」
「そうだな。なんだ孤中、不満か?」
「いえ、特には。確認しただけです。この紙は六時限目の時点で回収ですか?」
「六時限目終了後に集める。」
「わかりました。」
「一か国決めたらその国の情報とどうして選んだのかと代表者の事には触れるように。自身がその国の代表者だったらどうするかを書くのもいいかもな。よし、解散!お昼だお昼~。」
そう言い残し、教室を後にする先生はなんだか嬉しそうだった。
あ。もしかして前に話していた女性の作ったお弁当とか?ありうるかも。
そういえば、皆はどこの国を選ぶのかな?お昼休みにちょっと聞いてみよっと。




